第8話 疑問
「では、説明をさせていただこう」
私たちがあのようなことをしている間、誰か、あの玉座といる者をと話していらしく、話はいつの間にか説明に移っていた。
玉座に座るふてぶてしい人物は、淡々と説明をし始める。
「今日、君たちを呼び出したのはこの世界を救ってくれ」
「世界を?」
玉座に座る人物が、そう言うとクラスメイト達はざわめき始める。
だがそんな言葉に私自身、首を傾げた。
救う? 何をだ?
とクラスメイト達は何人かは喜んでいたり混乱しているようだったが、私にはなぜそうなったのかよく分からなかった。
詳しい説明も無しに急な目的な話、確実に人を混乱させような内容だった。
「?」
「混乱しているところ申し訳ない。異世界の少年少女たちよ。けれどもこの世界はそれほど危ない状況になっているのだ」
「えっ?」
私がそう言う前に誰かがそんな驚いた声を上げる。
玉座に座る人物はそのような声を聞いても話を続ける。
「この世界には今、とある者によって危機に瀕しているのだ。それがこの国、アルダトにも来ているのだ。だから、君たちにはこの世界の勇者になって欲しい」
「………………」
玉座に座る人物はそう言いながら頭を下げてくる。
だが私自身、その言葉に疑問と疑惑を抱いてしまった。
危機に瀕している、と言われてもそれが一体何なのか? この国は一体、何に襲われているのか? なぜ、この国が世界の危機に参加しようとしているのか?
私には、考えれば湧き水のように出てくるその疑問に、首を傾げた。
「そのような、ことだから是非頼みたい!」
悲しそうか又は悔しそうな、人の情に訴えそうなその顔で、私やクラスメイト達に小さな涙を流しながら、頭を下げる。
だがどれほど、そうしようが、私自身、胸の中にある疑問は拭えない。
「すみません」
「!! な、なんだね?」
そう思っていると、私はつい手を上げ、質問してしまう。
質問が来るとは思っていなかったのか、玉座に座っていた人物はなぜか驚きながら私の方を見てくる。
「危機、とありますが、詳細的に一体、どのようなものでしょうか?」
「む、それは………」
「それに、その危機とこの国が一体何なのかも………」
「む………」
私がそう言って、丁寧に言うと玉座の人物はなぜか戸惑うように周囲を見る。
「それについては、私が答えましょう」
「貴方は?」
すると、私が玉座に座っている人物の答えを待っていると、急に玉座の隣に眼鏡をかけた成人男性が立ち、私に向かって話しかけてくる。
私は、急に現れた男性に戸惑うような形で首を傾げると、男性は丁寧な口調で胸に手を当て、答えてくる。
「そうですね。まずは、自己紹介から行きましょうか。私はアルダト王国宰相をしております。名前は、エルバート・カナルティンと申します。そして先程、貴方々に説明していたのはこの国、アルダト王国現国王 第六十八代目国王、ナバル・アント・エンシュリテン=ルーブ国王陛下にございます。是非、お見知りおきを」
「はい」
成人男性、いや、エルバートと言う男性は、私に沿う自己紹介すると、小さく礼をする。
うむ、これはイギリスやアメリカでも、丁寧な挨拶として使われていたことを思い出す。まぁ、このようなことをするものには好感を持てるが、今から交渉が行われると言う経験故か体が勝手に半ば強張ってしまう。
「では、先程の危機、とはこの世界には『魔族』と言うものが存在しており、魔力や力も我々、人間より更に上の存在です。そのような者たちが今現在、この世界であらゆる所で、侵略行為をしておりまして、それが今、この国にも牙を剥いている状況なのです」
「ふむ」
魔族、魔力、私には聞きなれない単語の数々だが、今理解できるのはその『魔族』はかつての私の国と同じようなことをしている、とだけは分かった。
でも、なぜ、そのようなことを………?
「でも、それが私たちを呼び出したのでしょうか?」
「それは、我が国に伝わる伝説が理由なのです」
「伝説ですか………」
「はい、その伝説には『異なる世界の者を、この世界に迷い込んだ時、世界に包まれていた悪意を消え去ると』」
「ふむ」
確かにそのような、伝説があるのなら、信用には値するが、伝説にしてみれば何か大雑把なような気がする。それには詳しい内容が書かれていないのだろうか?
「ですから、我らもこの国の最大限の魔力を使い、貴方々を呼び出したということなのです」
「ふむふむ」
「ご理解いただけたでしょうか?」
「ふむ、お断りします」
「え」
私がそう、きっぱり断ると、辺りにいる人たちもザワザワと騒ぎ立てる。
私は、なぜ、このような事を言ったかと言うと、彼らが本当にそれが正義と言うただの正当防衛と言うには、情報量が少なかったからだ。
それほどの情報量の少なさやまるで言いがかりのような言い方は、私のいたあの大日本帝国と同じようなきな臭い『
「あっ、別に安心してください。これは個人的な主張です。私たち総意の主張ではありません」
「そ、そうですか………そ、それにしてもなぜ、お断りに………?」
「そうですね。理由は幾つもありますが、一番は、情報量の少なさです」
「情報量の………?」
「えぇ、我々を呼び出した、と言うのであれば帰すことも可能だと考えられますし、本当に敵がその『魔族』? とやらだけだと考えられにくいですから」
「………………そ、そうですか」
私のその発言にエルバート宰相は、プルプルとどこか震えているように見える。
それに、これらは全て、私の経験談だ。武器商人をやっていく中で、情報量の少なさは問題点で、これがほんの少しでも少ないと他会社に簡単に顧客がとられてしまう。
社会情勢に各国の動き、顧客組織のほんの少しの動きも重要なものだ。
「そ、それについては、今の状況から私共から言えません。申し訳ございません」
「………………」
嘘だ。
私は、エルバート宰相がそう言うと、直感的にそう感じた。
「では、次に貴方々のステータスを見せていただきたいです」
「ステータス?」
エルバート宰相はそう言って仕切り直すと、また再び私には分からない言葉が入ってくる。
私の記憶にある、ステータスは社会的地位などの事なのだろうが、これがなぜ、今と関係あるのだろうか?
「では順番に呼ばれていくので、呼ばれた方は、一人ずつ前に出てこの水晶に手を触れてください」
「………………」
エルバート宰相はそう言いながら、小さな机の上に置いてある水晶に手を向ける。
周囲からは、おお! と言った歓声が上がるが、正直言うと私の疑問に答えてくれなかった彼等に対して私は不信感しか感じなかった。
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