第2話 昭和20年
かつて、私 リンイチロウ=ヤシロは武器商人だった。
昭和と呼ばれる戦火舞う時代の中、戦争を糧に私は、私腹を満たしていた外道の一人だ。
他人の命を貪り、喰らい、笑って捨てたような外道の衆の一人である。
武器商人の性とはいえ、多くの人を殺す兵器を、多くの敵を効率的に始末を武器を作り売る。それが私の役目だった。
「いやぁ、今日もありがとございました。林一郎殿」
「えぇ、今後も御贔屓に、田綱中将殿」
そして、今日もまた人を殺す道具を売り込むために、軍事施設がある場所に入り、彼らに商談交渉をし終えた頃だった。
「ご苦労様です。社長」
「あぁ、お疲れ。今日も十分に疲れたよ」
部下の斎藤と共に、この軍事施設から出るために、出口に向かっていた。
「玄関にて、お迎えを準備させておりますので、そこで十分にお休みください」
「あぁ、そうだな。ここでは十分に軽口も出せない」
窓の硝子の向こうから映る、青年たちが一生懸命に木刀や木の銃剣を振っている。
「あぁ、本当に悲しいよ」
私はそう言いながら、心の中でとてつもないほどの憂鬱感が私のことを支配する。
長年、使い続けた眼鏡をクイッ、と上げ切磋琢磨に訓練する青年達を見る。
本来、あのような青年達はこのような所で武器を振るわず、勉学を嗜み学友たちと遊んで子供らしい生活をしているはずなのに、彼等にはその暇も与えてくれない。
その理由は明確であったいつの日か出された『国家総動員法』が原因でまだ遊びだかりの子供たちは、このように戦争の道具にするためにあのように訓練をさせる。
「社長?」
部下の斎藤に心配そうに見られるが、私は「大丈夫」と言うが、私は本当は十分に大丈夫では無かった。
それにあの赤い紙も、更に私の憂鬱感と悲壮感を高めさせる。
まだ若い命を駆り出させる。
私が作った武器を持って死にに行く。私が作った子供たちと共に、若い命が戦場に駆り出し失いに行く。
「………あぁ、私は本当に悲しいよ」
私はその現実から逃げるかのように、その場を歩き出し、部下の斎藤に連れられ軍事施設の出口となる玄関に向かって歩いた。
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