第19話 山尾庸三3 山尾と桂と伊藤と
○山尾と桂小五郎
山尾が斎藤道場に転がり込んだ時、塾長の桂は相模国(神奈川県)三浦半島の三崎にいた。ペリー来航以降、幕府は江戸近辺の湾岸地域の警衛を諸藩に命じ、長州藩はこの地を担当させられたのだ。
斎藤道場に戻って来た桂は、山尾と意気投合し、
「自分には妹はいるが、弟はいない。今、一人の弟を得たような思いだ」
と言い、山尾を弟のように可愛がったという。
後輩に優しいのは、桂の美点である。この間の交友は、『史実参照・木戸松菊公逸事』(妻木忠太・昭和十)に詳しい。二人で銭湯に行き、帰り道の蕎麦屋で一杯飲むのが、何よりの楽しみだったと山尾は回顧している。
桂のもう一人の弟分伊藤春輔が、桂に会ったのは安政六年(一八五九)の事だから、山尾の方が数年先輩という事になる。この時期から少し後の万延元年(一八六〇)頃の山尾の伊藤観が記録されている。(『伊藤公実録』中原邦平・明治四三)
「私が桂を訪ねて往くと、いつも伊藤公は次ぎの間で机を出し、書物を読んで居るか、又は法帖を出して、手習をして居るかであったが、その法帖は何の法帖であったか、一向気が向かなかった。しかし手習はよほど熱心であった様に見受けた」
伊藤が、努力の人であった事が伺える逸話である。
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