第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(後編1)
前書き
ヤバイ 後編2でも終わらなそう
第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(後編1)
地下へ続く型のダンジョンのようだ。冬の妖精が作ったのだろうか・・・白い冷気が僕等の足元へ伝わる。壁も雪が圧縮されているようだ。土で無いなら鉱石が埋まっている可能性は低いのかもしれない・・・。しかし進まなければそれはわからない。
想里愛「厚着してきて良かった~」
咲桜里「お兄ちゃん、寒くなったらさおりが温めてあげるね♪」
真樹「あ、ありがとう♪」
確かにこの寒さは大敵だ。魔法を使えば魔力を消費し、物を燃やせば資材の消費、さらに内部の酸素の消費と状況が悪くなる一方だ。厳しい旅を覚悟しなければならない。
翠「長い階段だね」
里乃愛「螺旋状に入り組んでいるね」
階段を降りると険しい山の豪雪地帯に居るような空間が姿を現す。地下であるにも関わらず吹雪で視界が狭く遠くが何も見えない。それに所々に鋭く尖り空いた穴は一体・・・穴の中を掘ってみると何か硬いものに当たる。
真樹「これも・・・氷柱?うーん・・・上も見えないな・・・」
想里愛「あたしも掘ったのですが、こちらは握りこぶし大の氷塊です。」
翠「こんなのが降ってきたら大変だね、魔力を温存している余裕はないよ。」
進む先を翠の魔法の熱源で溶かしながら移動するが周りの雪が崩れることもあり、移動するだけで一苦労だ。無暗に進むのも吹雪のせいで遭難する危険がある。
里乃愛「これじゃジリ貧だね・・・この吹雪は自然に降ってるものじゃない、精霊が魔力を込めた装置を止めれば止むはず。」
真樹「解決の糸口が見えたね!問題はどこにあるのかだけど・・・」
咲桜里「さおりだったら届かない天井に隠す!」
想里愛「でもこの吹雪で天井まで行くのは・・・」
翠「あの窪みが怪しいなあ…」
里乃愛「行ってみよっか♪」
ふわりと全員が宙に浮く。羽も無いのに自由に動ける。よし、すごく高いけどみんな天井まで着いた。
里乃愛「うーん、ここからは魔力を感じないなあ。」
咲桜里「あっちも見てみよ!」
行ってみるとこの部分はかなり雪で膨らんでいて内部に何かありそうだ。当たりかもしれない。
翠「雪の中、見てみるね」
ゆっくり雪壁を溶かしていくと穴が開き顔を覗かせれば小さな小部屋程の空間がある。みんなで慎重に入っていく。
真樹「うーん、これは・・・?」
想里愛「冬の道の外観が綺麗に描かれてますね♪誰が書いたんだろう?」
咲桜里「ここの担当の精霊さんじゃない?良い趣味だね♪」
翠「本物を持っていくのは悪いから複製魔法で絵を家に飾るね♪」
里乃愛「ここがあの子の休憩室だったのかな・・・今どこに居るんだろう」
真樹「さて、少し休んだしまた装置を探そうかな・・・うわっ!」
派手に滑り真っ逆さまに落ちていく。あれ、みんなも釣られて落ちてる?
翠「危ない!」
翠が祝詞の料紙を落下地点へ投げると緩衝材の役割を果たし怪我をせずに済んだ。
想里愛「ありがとう翠ちゃん!危なかったあ」
里乃愛「穴を開けたから床がもろくなってたね…」
咲桜里「あれ、何かあるよ?」
落ちた窪みの側面に丸いものがある。内部が透けていて中の液体が円を描くような軌道で巡っている。
里乃愛「これが吹雪を発生させている魔導具だよ!さおりちゃんお手柄だね♪」
咲桜里「えへへ♪お兄ちゃんがここに落ちたおかげだよ」
そう言うと咲桜里が可愛くウインクする。相手を立てる気遣いは想里愛譲りなのだろうか。良い娘に成長していて嬉しい気持ちだ。
真樹「危なかったけど、皆が居たから見つけられたんだよ♪吹雪が止むのは大きな前進だよ!」
翠「まさか床が崩れるなんて…気が緩んでたよ。それにしても、こんなに洗練されてて濃く濃縮された魔力を見るのは初めてだよ。」
里乃愛が側面の雪の層を見てからまた魔導具を見る。その顔には驚きと畏怖が混じっている。
里乃愛「この側面の雪の厚さ、硬く厚い雪の層、上層にも影響を与える魔量、異常な程の天井の厚みと上層以上の氷柱…長い時間を費やしたのに…この魔導具には魔力が減ってる様子が無いよ…」
皆が固唾を飲む。冬の精霊の形成する自然は、その研ぎ澄ました白牙を僕らへ向け続けている。このダンジョンで精霊の魔導具が見つかった以上、無尽蔵の力で襲いかかって来られる事を覚悟しなければならない。
翠「恐ろしいまでの力の反面、あの絵には自然を愛する温かい優しさがあった。ここまでしてダンジョンを形成した理由が、下層へ行けばわかるのかもしれないね…」
想里愛「下層へ行きましょう!と言いたいけど、吹雪が止んで気が抜けたらお腹が空いちゃいました…♪」
咲桜里「お兄ちゃん、さおりのお腹がもう夜だって行ってるよ!」
真樹「そうだね!ここで休憩して夕食を摂ろうか♪」
椅子を用意し、よく乾燥させた薪を組み10の冷えた手を火に当てる。弁当を広げ皆で安息の時を得る。冒険の中での穏やかで温かい時を過ごす。この先の未知へ抗う力を蓄えるのであった。
後書き
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