第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(中編)

前書き


半年ぶりに沸く男です




第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(中編)


家に着き想里愛達の家へ転移してから食卓を囲み炊き込みご飯で昼食を摂る。


海鮮の具や野菜の味が出ていて美味しい。


食後のホットティーを味わいつつ話は午後の予定へと移る。


午後は里乃愛ちゃんの勧めで、もう一度冬の道の洞穴に足を運ぶ事になる。


今回はすぐに奥へは進まず手前に待ち伏せているはずの蟲型の魔物を迎え撃つ必要がある。


壁面の隙間に入り込んでいるのか魔物固有の業なのかはわからないが壁の内に潜んでいる可能性が高い。


もしくは仲間を呼ぶ信号を外へ送ったのかもしれない・・・とにかく油断ができない。


想里愛「魔銀を手に入れてより安全に冒険もしたいですね!」


真樹「そうだね!できることは全部やってこの世界の見識を広げていきたいからね」


咲桜里「いっぱい魔銀があるといいね!」


話の内容的に緊張は高まる。僕は用意した夕食用の弁当と果実を鞄に詰める。これは常に欠かしてはならない。そして前回の無力さを挽回する為の武器を手に取る。弓術指導で販売されていた弓矢のセットを購入しておいたのだ。矢筒と胸当ても付属していて完璧だ。これであの蠱に対抗できると良いのだが。みんなの用意ができると翠が意を決したように立ち上がりカレンダーをめくる。


翠「無事に魔銀をとって帰って美味しい夕食を食べよう!」


円陣を組み気合いの掛け声で士気をあげる。


そして里乃愛が魔方陣に手をかざす。


里乃愛「それじゃあ…行くよ!」


精霊の人形よりも目映い光に包まれ冬の道の洞穴の入口へ転移する。


周囲を見渡すと一つの線のように圧雪された雪道がある。


まるで何かが這って洞窟から出て行ったように見える。


もしかしたら逆で外から中に大移動をした可能性もあり得る。


そしてここで一つ確認したいことができる。


真樹「翠にこの圧雪の先の様子を見て欲しいんだ。」


翠「これが洞窟に入り込んでいたら大変だからね。まずは外側から見てみるよ」


翠が魔法を展開し冬の険しい上り坂を追う。


道の先を見ると小さい黒い塊が遠くに映る。


どうやらあの百足達が穴を掘ろうとしているらしい。


また穴がダンジョンへと変貌したら危険だ。これは阻止しなければならない。


咲桜里「魔銀を先に取りに行かないの?」


想里愛「まずは脅威を排除するって事ですね!」


里乃愛「あたしの出番が来たみたいだね♪」


里乃愛「加減が難しいなあ・・・また山ごと切ったら直すの大変・・・このぐらいかな、えい!」


彼女の振るう刀の切っ先からは精霊の込めた魔力が放たれる。


白い山肌を競り上がる。百足達が気付き山道を登り逃げようとする。


里乃愛が下から上に剣を薙ぐと強力な風が立ちはだかり彼等を逃がさない。


そして次々と黒い粉に成り果てる。この時期には似合わない姿が映る。全滅したようだ。


真樹「さすが里乃愛だね、これで後顧の憂いは晴れたよ」


翠「さぁ、魔銀を取りに・・・冒険だ!」


洞窟に入る前に中を確認したが百足の魔物はいないようだ。さっ・・・冒険だ!


前回と同じ位置まで進むが敵に囲まれる気配は無い。外に居た魔物で全てだったのか?


想里愛「あれ、行き止まりましたね?」


咲桜里「ほんとだぁ、ここで終わりなのかな?」


僕は壁に耳を当てると、わずかに水の滴る音と風の音が聞こえる。まだ先が続いているかもしれない。


翠「この壁の窪み・・・なんだろう?」


見ると長方形状の凹凸のある窪みだ、どこかで見たような・・・


里乃愛「もしかして・・・」


入口から小さな里乃愛ちゃんがやってきて、手には何かを持っている。あの百足の鱗だ。


壁の窪みに嵌めると・・・壁が開いて広い空間が姿を現す。


真樹「広い・・・」


自然の坑道になっているだけかと思ったが明らかに百足が掘っただけの広さでは無い。


山の内部なのに雪が積もっている・・・


里乃愛「きっと冬の精霊が作った所だよ」


うっすらと雪が舞い散り上を向けば日常ではお目にかかれない大きさの荘厳な氷柱が水滴を滴らせている。


咲桜里「採りにきた魔銀はあるかな?」


翠「壁周りを一周したら採掘できる箇所があるかも!」


全員でぐるりと一周するが新たに続く空間も目当てにしていた魔銀も見当たらない。


今回は収穫無しか。気が緩んだのか僕は何かに躓く。地面を見ると地面に窪みがある。


さっきと同じ要領で何かを嵌める必要があるようだ。窪みに嵌める範囲は相当広い。まるで円錐状の槍のような形状だ。おや、またどこかで見たような・・・


想里愛「中央から垂れ下がってるあの巨大な氷柱じゃないですか?」


おお、間違いない。さすが想里愛は頼りになる名探偵だ。しかし破壊せずに根本を切断するのは難しそうだ。


咲桜里「お兄ちゃんの弓矢で根本を狙うのはどうかな?」


真樹「おお、それは良いね!しかしあの硬さを打ち抜くのは厳しいかな・・・」


翠「ふふ、ボクに任せてよ♪」


翠が手を包むとこの距離でもわかる程の熱が矢じりに籠っていく。よし、後は氷柱に当てるだけだ。


地面の雪の厚みもあるしあの氷柱なら落ちても折れないだろう。


真樹「危ないから離れててね」


弓を引きしならせて弧を描く。狙いを定め射ると轟々と焔を纏い激しく燃え盛る矢が中央の氷柱を捉える。熱源が根本を溶かし雪のクッションへ落下する。よし、予想通り折れてないぞ。あとは溶けて変形してしまう前に窪みに嵌めるだけだ。しかしこれだけ大きいとどうやって窪みまで運べば良いかな・・・。


里乃愛「真樹くん♪あたしに任せて!」


里乃愛が壁の窪みへ歩いて行くと、それに追随するように氷柱が宙をふわりと浮遊し彼女へ付き従う。


静かに窪みに氷柱が重なると地面が轟き正方形状の下へ続く階段が出現する。冒険が始まる予感に胸が高まる。


想里愛「いよいよ冒険って感じがしてきました♪」


咲桜里「くんくん、鉱石の匂いがする!」


翠「さおりちゃんすごい、いつのまにそんなスキルを!?」


里乃愛「魔銀があるなら装備を整えて安全に冒険できるね♪」


確かに気になったが細かい事を気にするのは無粋というものだろう。


元が坑道の様な道から来たせいか先は薄暗いが心をくすぐる好奇心が僕達を魅了する。


さぁ、冒険だ!




後書き


お得意の中編

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