第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(後編2)
前書き
愛を知るんだ
第22話 輝石を採掘したら奇跡をもたらして(後編2)
大分温かくなってきた。吹雪が止んだのが大きい。これなら夜も探検する体力はありそうだ。
想里愛「真樹さん、この鶏肉いつもより美味しい♪」
真樹「あぁ、このお肉は夏の森の木陰にいた野鳥を射止めたんだよ。」
咲桜里「お兄ちゃんすごい!よく当たったね、どこかで練習してるの?」
真樹「あぁ、最近ふもとの街の弓術道場で練習し始めてね・・・」
翠「ボク達が寝てる間に頑張ってるんだね、頼もしい♪」
里乃愛「まさに飛ぶ鳥落とす勢いだね、さすが真樹くん♪」
真樹「ふふ、僕に任せて!」
そう!夕食の際に火を起こしたので翌朝の食糧の調理も欠かさない。無事に冒険を乗り切るよう全力を尽くすぞ!
真樹「この果実も美味しいよ♪」
想里愛「陽射しの実だあ♪朝しか採れないけど甘味がぎゅっと詰まってて美味しいんですよね!」
そう言うと想里愛が一口分の実を僕の口許へ運ぶ。もちろん美味しく頂く。お返しに僕も想里愛の口許へ陽射しの実を運ぶ。
温かさの代償に渇いた喉が潤されていく。
鍋で煮込んだ豚汁を皆で啜る。お陰で身体が温まった。
この世界の豚に近い動物を狩って調理するのも楽しそうだ。
また道場で腕を磨かなければならないだろう。
咲桜里「ふぁ~~♪美味しかったあ!」
想里愛「真樹さんの料理美味しかったです♪ごちそうさま♪」
翠「まだ眠たくないし帰るには早いねえ」
里乃愛「転移でいつでも帰れるしもう少し冒険したいな♪」
真樹「そうだね!もしかしたら近くに魔銀があるかもしれないし…」
充分に温まったので薪を足すのを止める。次第に火は緩やかになり儚く揺らめく。火が消えたのを確認し燃え残りは転移を利用して地上の土へ還した。次からは家の暖炉にくべようかな。
…山道になっているせいで吹雪に関係なく見通しは悪い。これだけ広いと次の階層への手掛かりは見付けられないだろう。無駄に疲労を重ねるのは下策だ…もう帰るべきか…。
想里愛「あ!先が見えましたよ!ここで行き止まりなのかな?」
咲桜里「ふう!なにも見つからなかったけど、やりきった感じは出てきたよ~」
翠「よっこいしょうがつ」
翠が座り氷の壁に絵を置いてしばらく休んでいると、地響きと共に背後の氷塊が蠢き先へ続く道が姿を現す。
想里愛「あ…!絵が壁に埋まっちゃう!」
里乃愛「真樹くん!」
真樹「まかせて!」
僕の拳に熱が籠り右足と右手を前に出し…手をしならせて一閃する。
咲桜里「フリッカージャブ!小僧め…本来覚えていないオリジナルを繰り出しおった!」
翠「さおりちゃん、いつの間に帽子と杖を用意したの?」
真樹「よし、絵は回収したぞ!」
想里愛「きゃあ!氷塊が!」
翠「真樹!」
真樹「あいよお!」
さらに左の拳に強い力が宿る・・・これなら氷塊も怖くない!
僕は全体重を左の拳に込めて氷塊へ向けて打ち下ろす!
咲桜里「左の打ち下ろし(チョッピングレフト)!また、この老いぼれを楽しませてくれるとは…土壇場で必殺のコンボを生み出しおったわ!」
里乃愛「さおりちゃん、完全にボクシングのセコンドの顔になってる!」
翠「帽子と杖を創造した潜在能力は主人公補正のそれを上回る・・・味方ながら恐ろしい才能だよ」
想里愛「・・・・・・・・・(皆がネタに走ってる隙に真樹さんに甘えようっと♪)」
想里愛「えへへ♪また真樹さんに助けてもらえた♪」
真樹「ふふ、これで一安心だね♪」
想里愛が甘えながらこちらにやってきて僕の表情は緩んでいく。
咲桜里「させるかあ!」
セコンドの精錬された右ストレートが想里愛の顔へ向けて放たれる。タイミング、踏み込み、角度共に申し分無い!しかしその拳は僅かに軌道が逸れて空を切る。そして交差した腕がセコンドの顔面へ迫る!あ!あれは・・・クロスカウンター!?
真樹「いやあ、いきなりでビックリしたよ」
翠「まさかさおりちゃんの右ストレートの軌道をジャブで逸らして、さらに想里愛ちゃんのカウンターまで止めちゃうなんてね、こっちがビックリしたよ」
里乃愛「もう、二人ともここはダンジョンなんだから、ふざけちゃ危ないよっ!」
想里愛「そうよさおり、ふざけるのはゲームセンターの時の顔ぐらいにしておきなさい?」
咲桜里「お兄ちゃんのおかげで怪我せずに済んだよ♪」
真樹「まぁ、緊張しっぱなしじゃ体に悪いし良いリフレッシュになったんじゃないかな♪」
そしてさっそく道の先を進んでいく。緩やかな下り坂がしばらく続くが道はだんだん狭くなり僕を先頭に、翠、咲桜里、想里愛、里乃愛の順に一列になり降りていく。お、どうやら下り終えて次の階層へ入ったようだ。岩肌が所々に現れる・・・この岩、焦げてないか・・・?
想里愛「真樹さん・・・♪」
ふぁ!?服を着崩した妖艶な表情と恰好をした想里愛が壁の窪みに座っている。寒そうだし温めに行かないと!
咲桜里「お兄ちゃん、壁に向かって顔を赤くしてどうしたの?」
あれ?おかしいな確かに想里愛が居たのに・・・目をこすってもう一度見るがただの壁だ。振り向くと確かに後ろを想里愛が歩いている。
気持ちを切り替え道を進む。道の分岐が少ないので探索が捗って有難い。
ふと翠の動きが止まる。後ろを振り向けば咲桜里が座って幸せそうな顔をしている。
咲桜里「お兄ちゃん、もうさおり食べられないよぉ~♪」
里乃愛「さっきの真樹くんみたいになってる・・・!」
想里愛「ちょっと、どうしたのよさおり!まさか…パンチドランカーの症状?」
翠「ここ…魔力の残り香がある…おそらく…幻惑をかけられたんだ」
そんな素敵な…厄介な魔法を使う敵がいるのか!これは油断がならないぞ。
真樹「さっきから壁の向こうというか…遠くから笑い声が聞こえるような…」
想里愛「あたしも…ずっと気になっていました」
咲桜里「さおりにも聴こえるよ、今度は本当だよ!」
おや、分岐が出たな…今度はどっちに行こうかな?
想里愛「右に行って見ましょう♪」
道を進むと奥の方から何かが見えたと思えばあっという間に距離を詰めてくる!
妖精の魔物「クスクス…」
翠「まずい、5人まとめて仕掛ける気だよ!」
やばいぞ、全員がさっきの僕みたいになったら全滅だ!かと言って弓を構えてから幻惑をかけられたら逆に皆を危なくする…膠着するが、予想に反してしばらく経っても何も起きない。
妖精の魔物「嘘…」
妖精が驚いた様子だ。
里乃愛「翠ちゃんが皆の魔法への抵抗力を上げてくれて、あたしも居るからね…そもそも何をした所で通じないんだよ」
そうか、種族で見れば里乃愛は妖精の上位格だ。何か仕掛けられた所で痛くも痒くもない。互いの表情が全てを物語っている。あ…反転して逃げて行った。
咲桜里「あの妖精さん奥の壁をすり抜けて行ったよ?」
里乃愛「最初はいたずらで仕掛けてただけだったけど、住み家に近づいたから警戒して出てきたんだろうね。」
翠「今回は魔銀の採掘が目的だから、こちらから仕掛ける必要は無いね。」
右の道も探索し尽くして分岐の左へ進む。奥の行き止まりに採掘した形跡が見られる。
想里愛「ここを採掘すれば魔銀が出たりして♪」
真樹「掘るだけなら無料だからね♪早速掘ろう♪」
皆につるはしを渡し少し間を空けて掘り始める。水分が多少染み込んでいるためか少しやわらかい地盤な気がする。掘り進めるが当たり障りのない岩しか出てこない。
翠「あ、これ魔銀だよ!」
咲桜里「こっちも出てきたよお♪」
え!想里愛や里乃愛も魔銀が出始めたようだ。なんでここだけ何も出ないんだ?必死に掘り進めるが一向に何も出ないぞ。
里乃愛「これで全員分の装備作りに使えるね♪」
想里愛「しかも思い切り掘って魔銀に当てちゃっても魔力で守られてるからか、傷一つ付かなくてあたしでも気兼ね無く掘れます♪」
真樹「おお、皆順調に採れてるね♪こっちは出ないけど、なんか掘りやすいというか…岩が脆くなってきたな」
大きい岩の塊が出たので僕は振りかぶって崩しにかかる。ガコンと音がすると壁の向こうに穴が開いて岩がガラガラと崩れる。穴を広げると下層へ続く道が現れた。
想里愛「あっ!真樹さん次の階層まで見つけるなんてすごい♪」
翠「さすが真樹!転んでもただじゃ起きないねっ」
咲桜里「さすがお兄ちゃん♪咲桜里もだいぶ魔銀を集めたよお♪」
里乃愛「あたしも順調に採掘できたよ♪」
4人とも十分な量の魔銀を採れている。この素材を元に装備を作れば下層の冒険もぐっと楽になるだろう。
真樹「皆のおかげで材料は採掘できたし、今度鍛冶屋へ行って装備作りの勉強をしよう♪」
想里愛「ふふ、楽しみにしてますね♪」
里乃愛「無事目的を達成したし、帰ろっか!」
荷物をまとめ里乃愛の近くへ集合し・・・家に着いた。
後書き
やりたいことやったもん勝ち
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