エピローグ⑤ アメリアとコレットとジェシナとムネヒト④

 アメリアは悶え鳴くコレットと、彼女に覆い被さり乳肌を貪るムネヒトを見つめていた。


(……レティったら、あんなにはしたない声を出して……ムネヒトも、あんなに美味しそうにレティのおっ……胸を……本で読んだけど、男の人って本当に女の人の胸が好きなのね)


 彼女の最も新しい友人が男に組み敷かれ、激しく喘いでいる姿を見ているだけで自分も不思議な興奮に打たれた。

 青年の獣のような愛撫もアメリアの興奮を誘い、身体に残るムネヒトの気配を一層強く思う。


(わ、私も、あんな風になっていたのかしら……)


 おっぱいを喰われながら喜悦に溺れるコレットの姿が、少し前の自分だったのかと思うと顔に血が昇る。

 いやいや自分はもっと優しくして貰ったし。レティとは違って手加減して貰ったから、自分の痴態は彼女よりおしとやかだったと思う。


 ――手加減はそれはそれで嫉妬するけれども、自分はもっと上品に感じていた筈だ。上品に感じるってなんだ。


「アメリア様」


「えっ、あぁっ!?」


 悶々と妄想に耽っていたアメリアは、後ろから抱きついてきたジェシナに全く気が付かなかった。

 中性的な美貌を誇る秘書はアメリアの華奢な肉体に絡み付き、首筋に優しくも淫靡な口付けをした。


「あっ――」


 ムネヒトとジェシナのせいで敏感に敏感になっていた女体は、甘く痺れを覚える。

 シーツの下で未だにジンジンと疼いていた胸先が、二人の愛撫を思い出して再度尖り始めた。


 またムネヒトに触って欲しい。

 レティのように今度はもっと激しく、貪るように乳房を愛して欲しい。素直になれないアメリアの代わりに、彼女の可憐な乳首は声の無いおねだりをしているかのようだった。


 それを知ってか知らずか、ジェシナの指がアメリアの脇の下から這い寄り、右の乳房を優しく揉んだ。


「あぁっ――」


 先ほどより大きな喘ぎが喉を通過する。コレットやジェシナに比べればささやかな胸の膨らみには、いっぱいに性悦が充填されていた。

 それがジェシナの手でくにゅんくにゅんと揉み解され、出口を求めて流動する。行き場の無い快感は乳房の中で渋滞し、先端で行き止まってしまった。


 ――くりっ。


「かハァァッン」


 快感を溜め込んだ乳首がジェシナの細い中指と人指し指で挟撃されたとき、アメリアは悲鳴を上げていた。


「まだこんなにカチカチなんですね。そんなに旦那様に愛されたのが気持ち良かったのですか?」


「じぇ、ジェシナぁ……そんなコト……まだ、敏感なの……いじっちゃダメよ……」


「では、私のせいですか?」


「んんぅっ」


 左の先端を奇襲され、アメリアは肩を震わせた。耳元で、ジェシナの微笑む息づかいが聞こえる。


「こんなになってくれて、嬉しゅう御座います」


「だ、だからそれはぁ」


「それとも、コレット様と旦那様が愛し合うのを見て興奮されましたか?」


 図星を突かれ、アメリアは顔のみでなく全身を熱くした。ムネヒトとジェシナに触れられた余韻が残っているのは間違いなかったが。それを維持し更に次を願っていたのは、他ならぬアメリアだった。


「イヤらしいアメリア様――」


 にゅちゅりと、耳の中に生暖かくて湿ったものが侵入してくる。それがジェシナの舌だと理解したとき、ゾクゾクとした快感が背骨を走った。


「あっ、あっ、くぁっ、ふッゥ! ――んんっ!」


 左胸を優しく揉まれながら耳が愛撫される。にゅちにゅちという音を立てて、彼女の舌端は彼女の聴覚神経をも淫らに乱す。

 ジェシナは耳たぶを弱い力で噛むと、ツツツと舌でアメリアの汗ばんだ肌を舐め下っていく。

 そのうち左腕を持ち上げられ、ジェシナの顔が脇の下に潜り込んだ。

 恥ずかしいほど汗ばみ、むわっと薫るアメリアの脇腹へジェシナは唇を這わせた。


「あ、そ、そこは……きたないからっ……」


 汗を掻くという機能すら満足に備わっていなかったアメリアにとって、肌に浮く自身の汗が何か汚いモノに思えてならなかった。

 だがジェシナは、犬のように主人の肌を啜る。


「いいえ、まったく。フレッシュフレバーグッドスメル」


「何が!? わたしがっ! 私が恥ずかしいの!」


「申し訳ありません。私、アメリア様の脇をナメナメするのが人生の以下略」


「言えば許される免罪符じゃないのだけれど!」


 肉体の芯に溜まっていく熱は、温度を増すばかりだ。

 アメリアの産まれたばかりの性感は、今夜飛躍的な成長を果たした。

 愛しい男と大切な姉妹役の手により、花弁に蜜が一杯に溜まっていく。今にも溢れそうだった。


「おや、アメリア様?」


 ジェシナの腕がアメリアの肌を下り、シーツの中へ侵入した。隠されていた腹部で指が浅く躍り、更に下へ。


「きゃっ! じぇ、ジェシナ、そこはぁ――っ!?」


 彼女に指はショーツの中にまで侵入していた。ジェシナの細い指が、上からアメリアの○○○を撫でた。


「――――っっ」


 下腹部から痺れが背骨を突き上がり、両の胸先へ枝分かれし、脳天へ到達する。

 震えて飛んで行きそうだった体は、ジェシナがしっかりと抱いていた。

 愛しそうに自分を抱いたまま、アメリアの雌の部分を責めたてる。


「お背中を流した時はしかと見る事が出来ませんでしたが、やはり薄いのですね。これから生えてくるのでしょうか?」


「だから何が!? あっ、ダメ、いやぁ――んっ!」


 ムネヒトが担当していた右胸の先を指でクリクリを摘ままれ、左脇にキスを浴びせられ、残った手は股の間。

 最後の秘所をジェシナの小指が撫でていく。意図せず、アメリアは秘書の指をぐずぐずに汚してしまった。自分のせいで、ジェシナの指を濡らしていたのだ。


「いつでしたか、粗相をしたことが無いのが数少ない自慢と仰っていましたが――」


「あっ、あっ、くぅんっ」


「――これは、粗相とは別のようですね?」


 突然、ジェシナの腕がアメリアの下半身を隠していたシーツを取り払った。翼もかくやという勢いで、白い布が宙を泳ぐ。

 寝巻きは膝下まで下ろされ、ショーツのみの下半身が露になる。同時に漂うアメリアの濃い匂い。


「――ゃ、あぁっ!?」


 最大級の羞恥に見舞われたアメリアは、内股を擦り付けて股間を隠した。ジェシナの手が太腿に挟まれ、下着の中に残ったままなのも構わず、アメリアはむしろ自分の視線から逃すように○○を隠した。

 自分で分かっていても、どうにも出来ない肉体の変化

 ショーツはジェシナの指が透けてしまうほど湿っている。

 あまりの恥ずかしさに、アメリアは涙すら滲ませた。


「恥ずかしがらないで下さい。旦那様にアレほど愛されたのですから、むしろ当然の変化です」


 己でも怖くて触ったことの無い○○を、美貌の麗人が優しく愛撫する。

 恐怖はあったが、ジェシナの指使いの巧み――巧みかどうかを見分けるほどの経験はアメリアには無いが――さと、抱擁されている安心感から自分でも驚くくらい身を委ねることが出来た。

 花弁の境を指が上下する。溢れた○液がジェシナの指を更に湿らせていくのが分かった。


 ――くぷ。


「はぁん!」


 小指が○○を割って奥へ。

 アメリアのソコは、第一関節の半分も侵させないほど狭い。

 だがジェシナは、指先を潜らせたままセンチ単位で指を動かす。ほんの少し動かされる度、全身が痺れてしまう。中を擦られるごとに一人でに肉体が跳ねた。

 知らず知らずの内にアメリアの○○は、彼女の指を咥え込み絞め上げていた。


これは、アレじゃありません」


 からかうように微笑むジェシナの声が耳たぶを揺らす。

 くちゅくちゅという淫音が自分の身体から産まれたものだと思うと、恥ずかしくて堪らなかった。

 全身が快悦どうにかなりそうだった。二週間前に生まれた身体に、こんな機能が備わっていたのかと愕然とする。

 ジェシナの愛撫は、どこまでも甘く優しい。

 擦過傷一つ許さないほどの思慕に溢れており、一挙一動から自分を想う彼女の心が伝わってくるようだった。


「しかし狭いですね……ちゃんと挿入はいるか少々不安です」


「は、はいる……はいるって、何が……?」


 蕩けた頭ではもう良く考えられない。

 秘書は答える代わりに、顎と視線とでアメリアの意識を導く。向けられた先にはムネヒトとコレットがいた。


 コレットは仰向けに押し倒され、依然として豊満な乳房を貪られている。ちょうど今はムネヒトの両手でが脇の辺りから彼女の乳房を支えていおり、十本の指で揉まれていた。

 喜悦に打ち震え発せられるコレットの喘ぎは、誰彼憚ることを知らず部屋中に響いていた。

 涙と涎でどろどろになった友人の顔は、青年の愛撫に蕩けきっていた。喜びと性悦以外の感情が見つけられない。


 ムネヒトは真ん中で擦り付けた彼女の乳首へ同時にむしゃぶりつき、獣のように蹂躙している。

 見ているだけのアメリアにも分かるほど柔らかい乳房を、彼は本当に幸せそうに愛していた。


「あ――……」


 そして、その彼の股間が大きく膨らんでいるのが見えた。

 寝巻きの柔らかい布地とはいえ、ハッキリと押し上げる怒張。雄の象徴だ。

 時折、ムネヒトの一部がピクピクと震えている。次の瞬間には、コレットに突き立てられてしまうのじゃないかと思うほど、暴発の前触れを感じた。

 心臓が震えジェシナに愛撫されている○○が疼く。未知への恐怖、緊張、期待、そして興奮。


「見えますかアメリア様」


 秘書の囁きにアメリアは小さく頷いた。


「――あれです。あれが今夜、アメリア様のへ突き立てられるのです。分かりますか?」


 ジェシナの指が押し広げ、○○をくすぐる。


「怖いわジェシナ……あんな、もの、男の、人のものが、私の、此処に入るなんて、信じられないの……」


「どうか勇気を出してください。ご安心を、私もコレット様も居ります。だからどうか、覚悟をお持ちください」


 世の中の全ての女が、愛する男にだけ抱かれるなんて事はありえない。

 それこそ今日産まれた女の子も、十何年後かには望まぬ残酷を与えられてしまう。

 肉体を弄ばれ、純潔を奪われ、尊厳を踏みにじられる命は未来永劫現れ続ける。信じがたい残酷な事実だ。

 残念ながら、友人であるコレットもそうだった。

 だからこそ、愛しい相手と肌を合わせるのというのは途方もない奇跡に違いない。

 アメリアとコレットに与えられた幸運を捕まえなければならないと、ジェシナは言っていた。


「でも、私――やっぱり……」


「私もお供いたします」


「え――」


「私も今宵、旦那様に抱いて頂きますから――一緒に女になりましょう、アメリア様」


 ジェシナの表情には一切の憂いがない。この部屋を訪れる前に、とうに決めていたことらしい。

 彼女の文字通りの献身はアメリアの胸をついたが、同時に思わずには居られない。ジェシナは自分を勇気づけるために、望まぬ破瓜を自らに強いているのではないかと。


「い、いいの――? 貴女、ムネヒトと逢ったのは今日が初めてでしょう?」


「構いません。むしろ旦那様で良かったと感じております。不甲斐ない私の代わりに、アメリア様の為に戦って下さったのですから、彼への好感度は自分でも驚くほど高いのです」


「でも……!」


「本音を言えば、こういう初体験もアリかとちょっと興奮しております」


 ジェシナはアメリアにだけ分かるレベルで微笑み、頬を赤く染めた。


「……貴女、実はむっつりなの?」


「アメリア様とお揃いです」


 どちらともなく笑い、アメリアは深呼吸をした。

 未だ恐怖も緊張も消えないが、期待と興奮に胸が熱くなっていく。

 綺麗になってくれたばかりの身体に、こんな出来事が起こりうるとは。人生は本当に分からない。


「どうやらコレット様も限界そろそろみたいです。順番を決めないといけませんね」


 言われて、アメリアはもう一度二人の方を見た。

 天井方向に吸い伸ばされ双子の瓜形になっていた乳房が、ちゅぽんとムネヒトの口から解放された。

 肺の空気を嬌声に変換しきったらしいコレットはベッドに沈み、焦点の合わない瞳で虚空を見ている。

 彼女の下半身がガクガクと震えている。腰が絶えず蛇のようにくねり、何かを待ち望んでいた。

 コレットの虚ろな瞳も、涙の潤みに反比例して乾きを孕んでいる。情欲に濡れきった目は、ムネヒトの次を待っていた。


 準備が整ったのだ。

 自分は――いや自分達は今夜、彼の女になってしまう。


 青年はコレットの身体から起き上がり、充実感に満ちた息を吐いた。彼の瞳はうっとりとコレットの乳房を、そしてアメリアの乳房を見た。

 ぞくりと、予感に乳房が跳ねる。

 また気持ち良くしてくれるんだと、アメリア自身よりバストが期待に燃えたのだ。


(抱かれる……犯される……ムネヒトに、愛されちゃう……)


 心臓が爆発しそうだった。呼吸も早くなり、瞳が潤んでいく。乳首と○○が切なく疼き、ムネヒトという雄を呼んでいた。

 はち切れそうな情欲を抱えたアメリアに向かい、黒髪の青年は口を開いた。


「じゃあ皆、お風呂入ってきなよ。そろそろ休もう」


「は?」


「は?」


「は?」


「え?」


「何を仰ってるのですか旦那様。は? あ? はぁ?」


 見たこともないほどジェシナの瞳が怖い。コレットも、そして恐らく自分も。

 ムネヒトも自分達の怒気に刺され狼狽していた。


「え、いや……あ、そうか! 皆がお風呂に入ってる間にシーツの替えとか俺がしとくから! 今夜はこのベッドで休みなよ。このサイズならでも余裕――」


「は?」


「は?」


「は?」


「え?」


 ムネヒトは全く分かっていなかった。

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