ムネヒトvs.三日月の女神達(下)

※これから数話、頭の悪いお話が続きます。エロそうでエロくない、でもちょっとエロいストーリー展開になります。

それでも良ければ、どうぞ御高覧下さい。



かんぱーいおっぱーい!』


 やがて夜がやって来た。例によって気の抜ける音頭と共にグラスが掲げられ、カチンカチンと音を立てていく。

 場所は『クレセント・アルテミス』の館の最上階、ギルドマスターディミトラーシャのエリアだ。

 一階酒場スペースとは違い、客を入れる事はほとんど無い……というより、おっぱいギルド創設以来皆無だ。

 昨日のあれやこれやを思い出し、また男が俺だけという事実もあり、何となく肩身が狭い。

 おっぱいギルド初日を思い出すが、あの時より更におっぱい密度が高かった。いくらワンフロアといえ、80名近い女の子が一同に集計すると圧巻だ。

 誰もがセクシーなドレスを着て酒や果物と共に会話を楽しんでいる。眼福ではあるが、目のやり場に困る。


「おーっす、ちゃんオリー! 飲んでるー?」


「いま乾杯したばかりだろ、まだ一杯目だ」


 シンシアのドレスも露出過多だ。お気に入りなのか、例のウサミミ型ヌーブラバニードレスを着ていた。ほとんど裸でDカップおっぱいの形状がまる見えだ。

 服のデザイナー出てこい、チップを弾んでやる。


「遠慮しないで飲んで飲んで! 今日はあーしらの奢り……つーかギルド経費だから気にせずヤっちゃいなYO!」


「……ホントに奢りか? 後で請求したり時給カットとかしない?」


 すっかり疑心暗鬼になってしまい、持っている酒の原価は幾らだったかな何て考えてしまう。

 訊くとシンシアは不平に口を尖らせた。


「んもう! 今日はちゃんオリを労うって言ったっしょ? そんなセコい真似するかっつーの! 遠慮するなら勝手に持ってくるかんね! 何飲む? ワイン? カクテル? ブランデー? おっぱい?」


「じゃあ麦酒を……最後はどうする気だったんだ」


 部屋の中央に巨大なコの字ソファが置かれ、その中央に俺は座っている。両脇をシンシアとグレイス(ストローの君)を挟まれ、更に後ろにも前にも冒険嬢達が密集している。トイレに行くにも難儀な混雑具合だ。


「そういえば、コレットは?」


 その中に、巨乳家庭教師系お姉さんの姿が無かった。いつも俺の事を何かと気に掛けてくれているので気になっていた。


「あー……コレットはちょっと都合が悪いらしくてさ? 今日はパーティに出ないらしいし」


「ふーん……」


 コレットは俺をからかって来ない安パイな女性だったので、居ないとなんとなく不安だ。


「居ないなら居ないでしゃーないじゃん! ほらほら、シンミョーな顔しないで飲んで飲んで! ちゃんオリが愉しまないとコレットにも悪いっしょ?」


「そう言うなら……」


「欲しい果物とか無い? 取って来てあげるわよ?」


「あの、グレイス? ほら、テーブルにも沢山載ってるし、わざわざ取りに行かなくても……」


 シンシアが空いた俺のグラスにお代わりを注ぐと、むぎゅう、と身体を俺に押し付けてくる。反対側のグレイスも上半身を斜めにして、おっぱいを腕に押し付けてきた。

 二人とも明らかに故意だ。自然を装うなんて知らないとばかりに、自慢のバストをアピールしているらしい。

 DとGに挟み撃ちされてしまい、酒の味を愉しむ余裕が揮発してしまいそう。


「くふふ。両手に花でありんすねぇ、オリオン」


「――! ディミトラーシャ……」


 シドロモドロの俺の元へディミトラーシャが姿を見せる。

 黒いセクシーなドレスを纏い、細いシャンパングラスを片手にした彼女は余りにもサマになっていた。

 場慣れしているどころか、ディミトラーシャこそが場の雰囲気を作り出しているように思えた。


 彼女とは昨日のアレ以来話しをしていない。

 向こうがどう思っていかは知らないけど、見た目上は普段通りに見える。俺の方は何となく気まずいが、雇い主と何時までもこんな状態じゃ仕事にも障る。

 意を決して謝る事にした。


「あー……昨日は悪かった……反省してる……」


 俺の謝罪に、彼女は形の良い眉毛を片方だけ持ち上げた。


「ほう? 何が悪かったと思っているんでありんす?」


「何って……そりゃあ――」


 明らかにマッサージから逸脱してしまったことだ。おっぱい触ってごめんなさいと言おうとしたが、何故か口が動かない。

 喉に餅でも詰まったでもあるまいに、ディミトラーシャの微笑を見ていると言葉が出ない。


「あー……えっと……」


「…………くふふ、もう良いでありんすよ。ぬしの考えはでありんすから」


 ……良くわかんないけど、助かったのか? もしかしたら、余り怒ってないのかもしれない。懐の大きさに感服だ。


「話は変わりんすが、オリオン――」


「ん?」


「――このまま『クレセント・アルテミス』に居てくれんせんか?」


 俺の前に中腰なり、アメジスト色の瞳俺の目に投げ込むようにして言ってきた。今ばかりは、自然に強調されたおっぱいに意識を向けられなかった。

 まだ酒も浅い。聞き間違えるほどの内容でもなかった。


「……牧場の仕事もあるし、騎士団にだって正式に入ったばかりだ。非常勤だけどアカデミーで教師もやってる」


「関係ありんせんよ、そんな事。それを全部ぜぇんぶ投げ出して、わっちらの所に来てくれと言っているんでありんす」


「……――」


「大切なのは、ぬしがどうしたいかでありんす。正直に考えて、正直に答えてほしいでありんす。義理も友情も責務も、何もかも棄ててくんなんし。そうしたら、この場にいる女は、わっちも含めて、全てぬしが好きにしなんし」


 ふと周りを見れば、皆は手を止めて俺とディミトラーシャへ視線を向けていた。僅かな衣擦れの音がするだけで、誰も一言も発しなかった。

 シンシアとグレイスが更に強く身体を押して付けてきた。膨らみの柔らかさと、谷間の奥に在る熱を強く感じる。


 ――冗談みたいに、天国のような職場だ。


 王国一おっぱいが集う場所なんて、俺からすれば桃源郷だ。あらゆるおっぱいに幸福をもたらしたいという俺の宿願とも外れてはいないだろう。

 だが――。


「……ごめん。男冥利に尽きるお誘いだけど、断るよ。雰囲気悪くして申し訳ない……」


 空気が揺れた。どんな感情が渦巻いているかは、俺には分からない。

 何を賭しても――と思えるものが、俺にはもうある。それも、ありがたい事に結構沢山。それを棄てて来いなんて言われたら、断るしかない。


「――――――」


「でもほら? 同じ王国に居るんだし、借金返した後でも時々やってくるから……月に一回とか、週に一回とか……そこで、マッサージとか手伝いとか何かして……」


 沈黙が怖くなって代替案というか妥協案を提示する。俺だって、このおっぱいギルドの事を軽んじる訳じゃない。せっかくのご縁、良い物で有って欲しい。

 彼女達が俺を欲する理由がおっぱいスキルにあるなら、落とし所としては悪くないだろう。

 単純な労働力として働く事も、激務で痛んだ身体を癒す事も冒険嬢にとってもプラスになる筈。


「……ああ、やっぱりでありんすか……結局ぬしは、わっちらを、そういう風に思っているんでありんすか」


「……え?」


 凍えるような声だった。鼓膜と一緒に全身の毛まで震えるような、そんなディミトラーシャの声。



「え、何を……わ!?」


 隣に居たシンシアとグレイスがいきなり俺の腕を取り、きつく抱きしめてきた。当然、腕が計四つの膨らみに挟まれてしまう。

 瞬間、腹の下から湧き上がるある種類の欲求。最近、より限界を近くに感じるおっぱい欲だ。

 両方から大きさも柔らかさも異なるが、女肌をより深く味わおうと皮膚に神経が集まる。


「あ、あの……腕を離してくれないか……?」


 薄いドレス一枚の下にあるおっぱい。そんなのに抱かれて俺が平気なワケも無い。ぶっちゃけ、色々ヤバイ。


「なんで?」


 だがシンシアはきょとんと、むしろ俺の方が変みたいな目で見てきた。となりのグレイスも同様だ。腕に乳肉を擦りつけたまま離そうとしない。


「なんでって……」


「左胸を触って、冷静になりたいから?」


「――!」


 気付かれている!? そんな馬鹿な、一体いつバレた!?


「左胸に手を添えて発動する『ルーティン』なんでしょ? それで茹った頭と下半身を落ち着かせる、と。ツまんない真似しないでよ、男が女で熱くなってナニが悪いのさ」


冒険嬢オンナノコナメすぎ♡ あーしらの前で動作モーションを見せ過ぎだし」


(ソコまで見抜かれていただと……!? じゃあまさか、他の皆も気付いて――)


 弾かれたようにグレイスとシンシアと、そして皆の顔を見る。爛々と光る彼女達の瞳は、レーザーポインターのように俺の全身をくまなくロックオンしている。

 顔へ、目へ、腕へ、足へ、胸へ、腹へ、そして……。


「くっ……!」


「させねーっての! フォーメーション、紅葉合わせメープル・サンド!」


 シンシアの号令に、更に複数の冒険嬢が俺へ飛び掛って来た。

 後頭部を左右からIカップとHカップに、右脚左脚をFカップとEカップに囚われた。俺の何もかもが谷間に挟まれた。


「こ、これは……!?」


 どっちを向いてもおっぱいだった。何処まで行ってもおっぱいだった。柔肌の暴力による五体を蹂躙。蟻に齧られる砂糖の様に、理性がゴリゴリ減っていく。

 力を込めればを脱出は容易だろう。いくらこの人数であっても、俺の筋力にとっては落ち葉と大差ない。だが、おっぱいに対して力を振るうなんて俺には出来ないかった。


「どういうつもりだ……! 俺を労うパーティって言ってむぎゅ!?」


 最後にシンシアが膝の上に飛び乗った。しかも彼女が離れて一瞬自由になった右腕は、凄まじいコンビネーションですぐ別のおっぱいに挟まれる。

 身長差はあれど、膝に座ればシンシアの頭が俺より高い位置へ行く。自然、ほとんど剥き出しのバストが顔に押し付けられた。

 柔らかい肌色が影に染まり、シンシアの甘い体臭が鼻の粘液を溶かしていく。遂に視界や嗅覚までも奪われてしまった。


「んっ……とーぜん、ちゃんオリを労う事は変わってねーし? だから、ちゃんオリがだーい好きなおっぱいで、たっぷり労って上・げ・る」


「ん、ぷはぁっ! 労うってお前! これは労うの意味が――」


「ほぉら♡」


 話をまったく聞く様子の無いシンシアは、を掴んでゆっくりと、だが躊躇い無く剥がした。

 細い布で隠されていたシンシアの乳房は、前触れ無くその全容を現してしまう。

 ペリっと剥がれた瞬間の、ぷるんっ、と弾んだ光景は何周でも再生したい。


「どう? あーしの。ま、あんまり大きくは無いケド……それなりのモンっしょ?」


「――――」


 それなり……それなりだと? 馬鹿を言うな。それなりどころか、素晴らしいおっぱいじゃないか。


 張りのある若い果実はツンと上向きの円錐型をしていた。その先端は、ほんの少し外側を向いている。初日にホイップクリームのようなバストだと感想を抱いたが、想像よりずっと甘そうだった。

 先にあるは、あまおうのような色ではなく淡雪という品種に近い。4.2センチはぷっくりと白磁から膨れ、クリームのような乳房を誇らしくデコレーションしている。

 中央にある小さめの蕾は俺を挑発するかのようにツンと尖っていた。

 雪で化粧したかのようなシンシアのそれは、今はより赤く色付いてすっかり食べ頃なのだろう。俺は人知れず、あるいは我知らず、麦酒味の生唾を呑んだ。


 ウサ耳ドレスをウエスト付近まで剥くと、シンシアは肩をすぼめる様にして腕を寄せ、そのホイップバストを強調する。


「ねーぇ、じっと見てるだけじゃなくてさ……何か感想とかないわけー?」


 そのまま胸の下で腕を組み、不平に顔を尖らせる。赤くなった顔で拗ねたように言われても、どこか遠かった。

 言葉も出ない、一人の女性が持つおっぱいという至高の芸術に、目も思考も奪われていたからだ。


「綺麗だとか、エッチだとか、可愛いとか、そーいうの言えし。おっぱい見せても無言のままってさ、結構恥ずか――……ぁっ♡」


「――ハッ」


 ピクンと何かに気付いたらしい彼女が震え、それに伴ってプルンと彼女の乳房も揺れる。

 シンシアが何に気付いたか、俺も気付いた。何というかナニだった。彼女の太腿辺りを押しやっている不可思議物体X。

 コンクリートをぶち破る雑草かな? と現実逃避したい。


「あハッ♡ なぁんだ、ちゃんとデキるんじゃん。すっごい事になってるよ? ほれほれぇ」


「~~~~っ!」


 は、恥かしい! 全身をおっぱいで固められた上になんて羞恥プレイだ! 童貞なのに変な性癖が付いたらどうするんだ!

 オイコラ馬鹿ムスコ! スタメンに出ようとするんじゃねえ! お前はベンチだベンチ! 監督命令だぞ!


「ちょ、あ、ばっ、シンシア!? グリグリってすんな! あ、やめ、止め!」


 下敷きになれた俺の一部が、絶妙な力加減で上から抑えられた。シンシアは小悪魔的な笑みを浮かべたまま、下半身を滑らかにグラインドしてくる。

 これが痛気持ちいってヤツかー!?


「ぅわぁ、イイじゃんイイじゃん♡ あーし、カラダごと持ち上がって行きそうなんだけど」


 息子よベンチだって言ってんだろ! シンシアのケツでベンチプレスするんじゃねえー!


「ありがと。ちゃんオリってば口にしなくても、良いって思ってくれたんだね。もしやコレが黙はってヤツ? 今あーし上手いこと言わなかった!? やっべー、あーしの賢さキレッキレだし!」


 シンシアは顔中に笑みを浮かべ、更に深く俺に座ってきた。身体全体がより密着し、下腹部が俺のヘソ辺りへ押し付けられる。

 ミニスカートに隠れて見えないが、シンシアのソコも凄く熱い。ちなみに俺の愚息は臀部の下敷きだ。

 や、っわらか……!? 女の子のお尻って、こんなに柔らかいのかよ!?


「はい、ちゃんオリ。あーん」


 お尻に気を取られた隙(俺とした事が!)に、シンシアが俺の口へおっぱいを差し出してきた。両手で下から形の良い美乳を持ち上げ、先端をちょうど咥え易い位置へもってきている。

 逃れようにも、四肢も頭もおっぱいで固められ動かせない。車のチャイルドシートに収まる赤ちゃんって、こんな気分なんでしょうか。

 なるほど、チャイルドシートのお世話になる乳幼児ならおっぱいのお世話になっても良いよね。


「いや待て! 待てったら! ちょっとカメラ、じゃねえ、おっぱいを止めろ!」


「だーめ。せっかく2アウトなんだし、このままイかせてよ。ちゃんオリだって、ホントはこうしたかったんでしょ? あーしのおっぱいゼッタイ美味しいから、ねえ、早く?」


「つーあうとって、何のことだよ!?」


「ちゃんオリって女の子のおっぱいを見て、触って、吸っちゃったら、そのコの事を一生面倒みるんしょ?」


 そんな事までバレてるだとー!? 嘘だろなんで!? あの『非乳三原則』は余りにも下らないから、我が親友ともたるリリミカにも言ってないのに!


「バッカみたいな誓訳だけど、それがホントがどうか試させてよ。つーか、あーしのでビビってちゃ先が思いやられるし? あと80人も残ってるんだから。諦めて吸っちゃえ♡ 吸っちゃえ♡」


 全員!?


「でぃ、ディミトラーシャ! これは一体どういうことだ!? まさか最初からこのつもりでパーティを開いたってのか!」


 俺は部屋の中央付近で佇んだままのディミトラーシャに声を投げた。


「そうでありんすよ?」


「!?」


 あっさりと、彼女は答えた。


「……ぬしが悪いんでありんす。ぬしが、わっちらを馬鹿にするから」


「馬鹿に……!? ちょっと待ってくれ、俺は皆を馬鹿になんて――」


「聞く耳は最早ありんせん。どうか、お覚悟を。遊びの席でいつまでも駄々を捏ねるのは、殿方としては下の下でありんすよ?」


 本当に聞く耳持たない様子で、ディミトラーシャは顔を振った。それ以上何も言うことがないのか、黙ったまま視線だけを投げ続ける。


「ちゃんオリがいけないんだし? オンナノコに恥をかかせ続けるから……」


 シンシアは、もう一度俺の顔に胸を押し付けてきた。中央に寄せられていた尖塔が両の頬に優しく突き刺さり、鼻柱は狭くなった谷間に深く刺さる。

 そのまま自分の敏感な所を俺に擦り合わせるようにしながら、乳房と臀部を連動させた。

 女肉のコンビネーションは圧倒的だった。男をどうすれば、また自分の身体をどう使えば、を知り尽くしている。


「は、はぁ……はぁっ……! んん、……ぅふ……んっ」


 頬をくすぐるシンシアの一部は更に硬度を増し、頭に優しく吹き下ろされる吐息も甘く擦れてきた。気のせいか、俺の四肢に巻き付く冒険嬢おっぱい達も切なげに身体を揺らして、湿っぽい呼吸を繰り返している。


「ま、待て……ホントにこれ以上はヤバ……ぁくっ!?」


「あ!? ぁ、ちゃ、んオリぃ……ソコはぁ……!」


 押し付けれていた俺の一部がシンシアの臀部の不自然な、だが窪みに収まった。ムチっと張りのある臀部に比べてフワフワなソコは、布越しでも湿った熱を感じさせた。

 ズキンと痛みを感じさせるほど、血管が強く脈打つ。


「ん、もう…………あーしのが先にその気になっちゃったじゃん……」


 シンシアは俺の髪へ顔を埋め、頭蓋に直接沁み込ませるように囁く。やがて押し付けていた乳房をそっと離した。

 乳肌にはしっとりと汗が浮かび、特になだらかな谷底は彼女の匂いで一杯になっていた。珠になって流れる汗の一滴一滴が欲を潤う寒露なのだろう。


「……今度は、ボトルじゃねーから……」


「……!」


 シンシアは片手で俺の頬を撫で、反対の手をスカートの中に滑らせた。そのままゴソゴソと、何かを外そうと……いや、ずらした。

 何もかもがどうにかなりそうだった。五体五臓六腑がドロドロに溶けてしまいそうだ。

 俺を包むあらゆる体温がおっぱいだった。俺の吸う空気が全ておっぱいだった。俺の世界はおっぱいで出来ていた。

 血の行き先がおかしい。入口も出口も無いはずなのに、何をそんなに急ぐんだ。


「問答無用で気持ちよくしてあげっから、良いでしょ? みんなで、幸せになろうよ……まずは、あーしと一緒に気持ちよくなってよ……」


 蕩けるような声色で囁き、もう一度、肌まで薄い桃色に染まった乳房を俺へ差し出した。先程より赤く尖った一部が『ここへキスしなさい』とシンシアの身体は淫靡に俺を誘う。


 ――無理だ、これ。


 全身を脈打つ痛みがズキンズキンと増していく。

 苦しくて堪らない。痛くて堪らない。何かが、ずっと抑えていた膨大な量の何かが流れ込んでくる。

 止めないと大変な事になるのは分かっているのに、指一本も動かせなかった。もう1センチも離れていないシンシアの一部がまぶしい。


 ――これが堕ちるという感覚か。


 俺はやがて、意識がおっぱいに飲み込まれていくのを自覚する。

 やっぱり、結局俺はおっぱいには……。


 頭の中でブチッと、何かが切れた音がした。



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