vs.オペレーション・シスターズ・メイカー
※今回も、若干(?)頭の悪いお話で御座います。
それでも良ければ、どうぞ御高覧下さい。
シスターズ・メイカーを品の無い言葉で表現するのなら、竿姉妹を量産する竿役に強制任命すると言う事になる。
おっぱいギルド『クレセント・アルテミス』でシスターズ・メイカーは発令されたのは過去に一回のみ。
ギルド創立して役一年が経過した頃、史上稀に見る美男子がおっぱいギルドにやってきたのだ。
しかも天の悪戯が神の寵愛を受けたのか、ただ顔が良いだけの男ではなかった。
彼は帝国の国家冒険者であり、皇帝の遠縁であり、爵位を有しており、大富豪でもあり、弱気に優しく強きに屈しないという、正に御伽噺の中の存在と言える人物だった。
そんな彼が、何の因果かパーティ――今にして思えば、パーティメンバーでもあり従者達でもあったのだろう――を連れて『クレセント・アルテミス』の門を叩いた。
きっと部下のガス抜きに、当時勢いを拡大しつつあるおっぱいギルドへ足を踏み入れたのだ。彼は酒場コーナーで談話と酒は愉しんだが、誰かを指名することは決してしなかった。
他の仲間達は彼を初心だとからかったり、誰も指名しないくせに彼ばかり冒険嬢にモテることを不平混じりに囃し立てたりもしていた。
彼らは愉しい時間を過ごした。冒険嬢達の内心や、水面下での凄まじい争奪戦を一切知らずに。
件の彼はとしては一夜限りの酒宴のつもりだったのだが、仲間がゴネて王都滞在中に幾度と無く足を運ぶ事になる。
それも冒険嬢達の策であり、将と射んとするなら――とまずは彼の仲間達を篭絡したのだ。
見事彼女らに魅了された男達は、パーティリーダーの彼を引っ張って何度も『クレセント・アルテミス』へ遊興へ出掛けた。
だが肝心の彼は誰とも関係を持たなかった。のらりくらりと彼女達の誘惑をかわし続け、やがて王都を発つ日を迎える事になる。
業を煮やした彼女達は、過激な手段に出る事になる。それがオペレーション、シスターズ・メイカーだった。
何の事は無い。数で囲んで、男を色欲に溺れさせるというモノ。最後の強硬手段、自分たちという女の沼に男を叩き落す乳房の暴力だ。
送別会と称された酒宴に足を運び、そこで彼はおっぱいの地獄を味わった。ディミトラーシャ以外の在籍していた冒険嬢全てと一夜にして関係を持ってしまった。
たった一人で、総勢37名と。
欲と愛と男と女と性と精と快楽と乳房と、一晩中彼女達は踊り狂った。全ての冒険嬢は姉妹になった。
――結果、彼は同性愛者になった。
そして二度と『クレセント・アルテミス』へ来なかった。
つい最近まで音沙汰なかったが、風の便りによると男爵令嬢と婚約したという。
これも噂にしか過ぎないが、その令嬢は彼の気を引くために長い髪をばっさり切り、胸を小さく見せるブラをして彼に近づいたらしい。
当時から在籍していた冒険嬢は「男装っ娘萌えだったのか!」と
そのような経緯もあり、男を壊しかねない大饗宴シスターズ・メイカーは、封印事項になった。
だが今回、ムネヒトはディミトラーシャを本気で怒らせてしまった。女と遊びの道理を弁えない男として、彼女達はムネヒトに鉄槌を下す事になる。
今は冒険嬢も81名に増え、男を虜にする経験値も増している。男装萌えの彼の時とはレベルが違うのだ。
そして今回もムネヒトを必殺の陣へ叩き落とす事が出来た。あとは煮るなり焼くなり抱くなり好きに出来る。
――筈だった。
・
「――――ッ!!」
シンシアは強烈な寒気を感じてムネヒトの上から飛び退いた。ヒラリと宙を一回転し、テーブルの上にふわりと着地する。
欲情により燃える様な熱さになっていた筈の身体からは、冷たい脂汗が滲んでいた。そんなシンシアの挙動を見咎める者はいない。誰もがムネヒトに視線を集中していたからだ。
「……え――?」
彼を挟んでいた冒険嬢達が、前触れ無く全て地に伏してしまった。糸の切れた人形のように崩れ落ち、もう動かない。
一人ソファーに残っていた男がゆっくりと立ち上がった。やや焦点を失ったかのような黒い瞳は、先ほどまでの雰囲気とは違い何処か無気味さを感じさせる。
「――あ、アンタ……何したの……?」
「…………」
「ッ、何したのって訊いてるでしょ!?」
「おっぱい」
「……へぁ?」
「おっぱいを寄越せ」
ムネヒトの答えは簡潔で他意を含んでいる様子も無い。その返答に、冒険嬢達の緊張が弛緩していく。
「なぁんだ、オリオンもヤる気なんじゃない♡ でも、女の子に乱暴は良くないわよ? 私がちゃんと教えてあげるから……」
一人がドレスを脱ぎながら彼に歩み寄った。やがて布に覆われていた双子の果実はユサっ、と姿を現した。自慢のFカップ、下着など元より付けていない。
しかしそれは悪手だった。乳首の神に乳首を晒すという危険を、彼女は一切知らなかったのだ。
服を捨て妖艶な笑みで歩み寄った冒険嬢は、ムネヒトに近づいた瞬間に倒れていた。
「――!? ちょ、っと! みんな、どうしたのよ!」
次の一人は倒れた者達の下へ走り寄った。ぐったりした仲間を抱きかかえるとき、一瞬だが最悪の予想をしてしまう。
「そ、そんな、まさか……死ん――――あっ」
「――――♡」
冒険嬢はイっていた。
半開きの口から涎を溢しヒクヒクと痙攣している。周りを見ると、他の者達も同じよう腰肉を振るわせながら気絶してた。
「え? え? なんで、え? あれ?」
「――ッ! バカ、後ろだし!」
「へ……?」
混乱していた彼女に向かってシンシアが叫ぶが、遅かった。
「おっぱい」
「ひあわっ!?」
しゃがんでいた彼女が振り向くより早く、ムネヒトは目にも止まらぬ速さでドレスに上から手を突っ込んだ。胸元が大胆に開かれ、谷間を強調するドレスは彼の侵入を拒む力を持っていなかった。
そのままムネヒトは彼女の生乳房を確かに揉んだ。四本の指を巧みに使い一瞬で性感を高めさせ、最後の人差し指の腹で先端を優しく引っ掻いた。
「ひィぐぅッ♡」
それで終わった。彼女もまた気絶し、先の犠牲者達と折り重なる。
「た、たった……
ここまで来ると流石に尋常じゃない事は皆にも分かった。いったい何が起きているというんだ。欲情に昂ぶっていた五体は恐怖に震え、寒いような気さえする。
そして、それを見逃すほど今のムネヒトは甘くなかった。豹のように跳躍し、近くの冒険嬢に襲い掛かる。
「おっぱい」
「ぃやぁん!」
一人がおっぱいを揉まれた。冒険嬢は気絶した。
「おっぱい!」
「きゃぁん!」
指が蛇蝎のように跳ね、服の上から乳首を噛まれた。冒険嬢は気絶した。
「おっぱい!!」
「あ、あ、あぁっ♡」
谷間に顔を埋め、そのままパフパフぐりぐりと弾力を愉しまれた。冒険嬢は気絶した。
「これは……いったいどういう事でありんすか!?」
彼の急変にディミトラーシャですら状況を把握できないでいた。彼女の予想では、今頃シンシアが一番
そして行く行くは、王国にすら歴史として残るであろう肉欲の宴へと変貌するはずだった。
退廃を尊び、道徳を嘲笑う性の濁流。この場には堕落と快楽のみが有れば良い。なのに――。
「た、助け……ぃイんっ!」
「ちょ、オリオンくん落ち着いて! リラックスしはぁん!?」
「まずはキスから! キスからだよ!? 最初からおはゃぃヤぁん!」
次から次へと仲間達は乱暴に、しかし優しく蹂躙されていく。ムネヒトは風のような速さで冒険嬢達に飛び掛かり、数秒で意識とおっぱいを奪う。
奪われた女達は床に転がり、余韻を味わうことのみが許された。
ムネヒトは騎士として捉えた犯罪者からモンスターから、そして常日頃から自分の性欲を経験値として貯蔵していた。後者は健全な気持ちでおっぱいに尽すためでもある。
後はそれを必要に応じて運用している。治療の際に体力魔力に変換して補充したり、リリミカやレスティアへのおっぱいへ経験値として与えたりと幅広い。
では
仮に電子端末とクラウドだとして、もし何らかの影響で端末にクラウド全ての情報が流れ込んできたらどうなるだろうか。
膨大なデータを受け止めるだけの容量が、一端末にあるだろうか?
――否だ。
貯めに貯めたエネルギーは逆流し体力魔力精力へ再還元される。つまり今のムネヒトは、おっぱいを貪る悪魔だ。
「冗談じゃないわよ!
一人の冒険嬢が暴勇を奮い起こし、ムネヒトへ吶喊した。
「ッ!? 駄目、戻って! 一人じゃ無理よ!」
「アイツは私が止めてみせるわ!
「あー!? 言わんこっちゃねー!」
「一度体勢を立て直しましょう! マスター!」
「! よし、〈
「「了解!」」
ディミトラーシャの指示を受け、冒険嬢達の中でも背丈と乳房に恵まれた四名が仲間を庇うように前に出た。
彼女達は夜の女でありながら、ダンジョンなどにも赴く本来の意味での冒険者でもあった。
その四人は近接戦闘職である〈
ダンジョンでは常に最前線に立ち、モンスターの攻撃から仲間を護る頼もしい冒険嬢達である。
「さあ! こっちを見なさいオリオン!」
そんな彼女達が一斉にドレスを脱ぎ捨てた。
ショーツは残し、それぞれガーターベルト、タイツ、ソックスなど身に付けているが、上半身は完全に裸だ。
EFGHと、奇しくもカップ順に並んだ八つ四組のバストがムネヒトの前に展開される。ディミトラーシャの言った
彼女達は高い防御力を活かした戦い方を得意としており、この場合の防御力とは乳首の感度になる。
チャフの中心に鎮座する部位の感度が平均より低い事を、この〈盾役者〉達は自覚していた。
ムネヒトが数値として観測すると、せいぜい10有るか無いかだろう。彼の意味不明な瞬間乳愛撫にも耐えられる筈だ。
〈盾役者〉の鈍感おっぱいに目移りし、また夢中になっている隙に後衛がムネヒトに襲い掛かる。必勝の連携だ。
一瞬で作戦を理解した皆は陣形を整え、ムネヒトが誰のおっぱいに飛び掛るのかを待った。
「『おっぱい!』」
だが黒髪の青年はその場で叫んだのみ。大口のわりに囁くような声のボリュームは、辛うじて聞き取れるほどでしかなかった。
「「はぁぁぁぁああん!?」」
それでも被害は甚大だった。〈盾役者〉の四人が一斉に嬌声を上げ、そのまま床に倒れてしまった。
崩れ落ちる瞬間、
盾は一瞬で砕けてしまったのだ。
「さ、さ、触りもせずに……? 触りもせずに、声だけでおっぱいを……!?」
誰もが絶句する。そんな馬鹿みたいな愛撫があるなんて、見た事も聞いた事もない。到底信じられるものではないが、事実は雄弁だ。
この〈盾役者〉達の感度は、ある一人を除いて全冒険嬢達でも最低の位置にいた。
そんな彼女達がヤられたということは、論理的に考えてこの場の誰もが一瞬でイかされるという事になる。
「……おっぱい」
寒気にも似た強烈な性感が両胸に走る。視線を向けられただけでこのザマだというのに、まさか私達は彼におっぱいをメチャクチャにされることを望んでいるのか。
恐怖する。あんなモノを喰らってしまえば、私達はいったいどうなってしまうのか。
「ちょっとアンタさぁ! 大人のクセにおっぱいおっぱいって、恥かしくないの!? 大人の男なら、もっと他にヤることあるっしょ!?」
抱いた恐怖を掻き消すようにシンシアが叫んだ。裸だった彼女は既にドレスを着なおしている。
自分達がおっぱいギルドという通称で通っていると承知しながらのこの問いは、もしかしたら滑稽な物かもしれない。
本来、乳房を見て触って吸ってのいずれも成人を迎えた者には不要の行為だ。
だが男達は皆コレが好きだ。例外になど、彼女達は出会った事も無い。
それでもやはりムネヒトは異常だ。こいつ、おっぱい好き過ぎるだろ。
「ああ恥かしいよ」
異常者は答える。
「……皆だって、自分の恋人でも赤ん坊でもない相手におっぱいを見せたり触らせるのは恥かしいだろ?」
「は!? あたりまえじゃん!」
当たり前だ。
このクレセント・アルテミスに在籍する女達は、ほとんど全員が自分の肉体――特に乳房に自信を持っている。
それを武器にして男の前で肌を晒すが、恥かしいという感情が無いわけではない。仕事と割り切っている者も、常に裸で生活して平気か? と問われれば答えは否だ。
また見られて恥かしいと感じる心こそが、よりよい自分のなる為の原動力になる場合もある。見られて恥かしくない肉体を作り上げようとする事が、鍛錬のモチベーションになるのだ。
それこそ露出狂にしたって、むしろ羞恥心を強く喚起させ快感に昇華させるからこそ肌を晒すという話もある。
無論、男と女の貞操観念も羞恥基準も同一のはずが無い。ムネヒトもそれは弁えている。
「だから、俺も一緒に恥をかく。皆にだけ恥かしい思いをさせたりはしない」
ムネヒトは女性の気持ちを完全には理解できないという事を理解しつつ、恥じる心と感謝を忘れないのだ。
「(きゅん)」
「(きゅん)」
「(きゅん)」
「いや、だから(きゅん)じゃねーわ! お前らしっかりするし! 別に良いこと言ってるワケじゃないじゃん!? ――あっ!?」
ムネヒトが両腕を鷹のように羽ばたかせると、それだけで(きゅん)とした三人は崩れ落ちた。今は別の(きゅん)に肉体を支配されてしまった。
「……しまった……なんで、思い至らなかったでありんすか……!」
倒れゆく娘達を目の当たりし、ディミトラーシャは自分が大きな思い違いをしている事を悟った。
自分は、ハイヤ・ムネヒトという男を図り損ねたのだ。
彼がその凄まじい能力故に祖国で権力争いに巻き込まれたのではないかという考察は、今でも正しいと思っている。
――だとしても、何故未だに童貞のままなのだろうか?
まずはソレを疑問に思うべきだった。
ムネヒト程の男ならば、女など選び放題だっただろう。むしろ女の方から寄って来たに違いない。
金や権力に嫌気が差すにしても、一般的にそれは酒池肉林に飽きた頃に抱く感情だ。
女を知らないクセに、女を避ける理由が分からない。
心に決めた女が居るとは言っていたが、それはどうやら王国に来てから出来た存在らしい。
彼女に操を立てていたとしても、この国に来るまでは事情が違う。
つまりムネヒトには、女と関係を持てない明確な理由があったのだ。
「ぁ、ぁひぃ……ぃ♡」
「ふっ……ぅふぇ……♡」
床に突っ伏して絶頂に震える家族たちが答えだ。
ムネヒトが本気になれば女は壊れてしまう。乳房に触れただけでこうなのだから、最後まで至ってしまったら女の身体はどうなってしまうのだろうか。
恐らく魔術の代償なのだろう。考えてみれば、あらゆる怪我を癒せる奇跡の如き力が対価を必要としない訳が無い。
ムネヒトは自分で把握していたのだ。酒池肉林の限りを尽せる環境にありながら、彼が女を知らない理由はソコにある。
全てディミトラーシャの推察に過ぎないが、ほぼ間違いなく真実なのだと彼女は思う。
――そして、オリオンは異端だったでありんす……!
男はおっぱいが好きだ。特にこの『クレセント・アルテミス』に足を運ぶ者達は、おっぱい王国民率100%と言っていい。
稀に「友人の付き添いで」とか「ギルドでの罰ゲームで」とか多種多様な言い訳を掲げてやって来る男も居るが、勿論問題ではない。
そんな彼らにも、愉しく可笑しく国籍を提供するのが彼女の腕の魅せどころだ。
もう一度言おう。全ての男はおっぱいが好きだ。
とはいえ、おっぱいが最終目標で無い。おっぱいとはいわば女と男が
生殖行為を生命の生産行為だとするのなら、愛撫は大地を耕す作業といえる。丹念に雑草を抜き、小石を払い、肥料を混ぜ、そして種を蒔いて命を実らせる。
最後の種を蒔き受け取るという事が性行為の最終目標であり、あらゆる生物種の本懐である命の保存に繋がる。
そう考えるのならば、おっぱいを触ることなど
昨日のディミトラーシャもそうだった。
ムネヒトに丹念に乳房を
だがムネヒトは最後の責務を放棄し彼女をベッドに残して去った。
棄てられたと思ったディミトラーシャは、凄まじい憤怒と屈辱に震えたがそうでは無かった。
ムネヒトはおっぱいだけで満足して去ったのだ。
――このディミトラーシャが、見誤ったというんでありんすか……!?
百戦錬磨のギルドマスターは戦慄する。
彼は自分達を馬鹿にしていたのではない。色商売に関わる女を、汚らわしいと拒絶していたのでもない。
全くの逆だ。ムネヒトは『クレセント・アルテミス』の女を、そしておっぱいを心から大切だと思っている。
きっと彼は嬉しかったのだ。借金を課せられたとはいえ、彼女達のおっぱいの為に働けるという事が。
そして大切だから、彼は自分達に触れる事はない。ムネヒトの強すぎる力は女を狂わせてしまうと知っていたから、最後の一線を越えようとしなかった。
彼がもし自分本位の男であったのなら、いくら女が壊れようが知らぬ顔をして自分達を貪っていただろう。
そうなってしまえば、この『クレセント・アルテミス』は彼の性欲の捌け口にされ、身体はともかく心はズタズタになっていたに違いない。
しかしそうはならなかった。ムネヒトがおっぱいを愛していたからだ。
絶大な力故に女と深い関係になれない哀れな男。しかしその境遇を嘆かず、おっぱいを愛しおっぱいに愛される男。
それが、ハイヤ・ムネヒトという男の本質なのだ。
今更ながらに気が付いた。真のおっぱい好きとは、真のおっぱい王国民とは、真の異端者なのだ。
誰が気付けるだろうか、種付けより
「バチが当たったんだ……! 私達を助けてくれた男の子を軽んじて、恩を仇で返して、だから、だからぁ……」
「今更なに言ってんのさ! 恩知らずは覚悟の上……クソ女って罵られて、国中から後ろ指さされる事は覚悟してたんでしょ!?」
「そうよ!? でも、責められる覚悟してたけど、おっぱいを責められる覚悟なんてしてなかったもの!」
もう遅い。そのムネヒトを覆っていた善意という防御を剥がしてしまった。
恩だけではなく、彼の矜持をも踏みにじってしまった事に今更気付く。報いを受けるときが来てしまったのだ。
ムネヒトが護っていたのは自分の純潔などではない、自分に寄って来る女達の安全だったのだ。
「ぬしら距離を取れ! 倒れた仲間を助けようとするんじゃありんせん! 自分の乳首は、自分で守りなんし!」
字面だけ見ると馬鹿みたいなディミトラーシャの命令だが、誰も背かなかった。冒険嬢達はムネヒトの視線から腕や手で乳房を隠す。
おっぱいギルドと羨望を集める自分達が胸を隠すなんてと、誰もが歯噛みする。でも怖い。せめてブラジャーだけでも付けておけばよかった。
「……おっぱい」
ムネヒトが一歩近づくと、皆も一歩下がる。押し合いながら部屋の端へ端へと追いやられた。
「ちょ、お、押さないで……きゃあ!?」
一人が新品の絨毯(ムネヒトのお陰で買えた最高級の絨毯)に足を躓かせ転んでしまうが、倒れてしまう前に誰かが支えてくれた。
「あ、ありがと……ヒィ――!?」
彼女を抱えたのはムネヒトだった。彼は目を細め、彼女のバスト(Cカップ)を一瞥する。薄く開いた口から涎に塗れた舌が覗き、ペロリと唇を舐めた。
そしてゆっくり彼女の母性の象徴へ手を伸ばしていく。
「待って、お願い、許して……! わ、わたしっ、まだやりたい事が沢山あるの! 来週公開される歌劇にだって行きたいし、新発売のスィーツだって食べたいし、可愛い男の子とデートとかして、こ、恋だってしてみたいの! だか、だからっ♡ お願い、やめて♡ 助けて、いや♡ いやぁッ! 許して、許してぇ……♡」
「……おっぱい」
「乳首だけは許してぇぇぇぇぇーー!」
キュッ。
「はァァああアアアアアアアアアアアアアアアッァァァン♡♡」
また一人の乳首が奪われた。
「どうなってんすか、やべぇッスよ! チクビ触るだけで即アヘとか、冗談じゃねえッス! アイツ化け物ッスよ、乳首の化け物! いやもうきっと乳首の神かなんかっスよ!」
「このボケタン! テンパってトチ狂ったこと言ってんなし! そんなん居るわきゃねーっしょ!? 実は勇者の後継者だったってのがまだ有り得るわ!」
皆浮き足立ち冒険嬢達の団結はバラバラになった。勝勢敗勢の立場は完全に逆転していた。
もはや、ムネヒトを喰おうとしている冒険嬢は一人もいない。自分達こそが餌だなのだ。胸に美味しい果実を二つもぶら下げた、脆弱な被捕食者。
その半数も既に彼に喰われ、尺取虫みたいな姿で痙攣している。
「駄目……! このままじゃ全滅しちゃう!」
おっぱいギルド『クレセント・アルテミス』がおっぱいで壊滅する。あってはならないことなのに、誰も彼を止める事が出来ない。黒い眼光に貫かれ、皆は恐怖と期待に全身を強張らせた。
万事休す。せめて優しく触って……と目を閉じた彼女達の背後で、ドアが勢い良く開け放たれた。弾かれた様に皆一斉に振り返る。
「あ、ああ――!」
「貴女達は……!」
希望という後光を浴びる、三人の影があった。
「――へへへっ、みんなおっせーんだし。あーし一人を働かせ過ぎじゃね?」
「……――申し訳ない無いデス。ダフネが駆け出し冒険者のパーティを発見してしまい、とめきれませんデシタ。」
「仕方ないじゃなぁい? ノコノコ童貞をぶら下げて歩いていた彼らが悪いものぉ。ついつい食べたくなるのがサガってもんでしょう?」
「お陰で……睡眠時間が減った……ふわぁ……」
シンシアは軽口を叩くと、三人の冒険嬢も軽く返答する。10代後半から30代前後の、見目麗しい美女達だ。
「くくく……久しぶりに顔を出してみれば、面白そうな男がいるじゃないデスか。実験のしがいがありそうデスねぇ」
【
Eカップ25歳。備考、王立統合アカデミー大学院錬金学部主席卒業者。キメセクマニア。
「ああ、たまンないわぁ……二十二年物の童貞の薫りがするのぉ……」
【
Lカップ(クレセント・アルテミス最大)31歳。備考、元子爵家当主。趣味、童貞喰い。
「……何処の誰か知らないけど、どうせ、その他と同じ……早く片付けて寝る……ふわぁ……」
【
Bカップ15歳(年齢詐称)。備考、ハーフエルフ。処女。
シンシアを含め、クレセント・において指名率もリピート率ともに最高の四人。通常の酒場業務に顔を出すことも稀で、個別指名依頼もその最終クエスト成功の難易度もギルド最高峰。
「『
与えられし称号は『四天乳』。三日月の女神達の最高戦力が到着した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます