ステーキとパセリ(上)
今日も一日が終わり夕食を食べ終えた頃、俺とリリミカは風呂にいた。もちろん二人とも服を着ている。
俺は湯船の縁に座り、足湯のように膝から下を浸していた。その俺の上に座っているのがリリミカだ。
彼女の臀部と俺の太ももの間には分厚いクッション(これが重要)がある。リリミカも同様に両足を湯に投げ出していた。俺に座っている分座高が高くなり、脛の半分くらいまでしか浸かっていない。
リリミカは上半身はキャミソールに薄いカーデガン、下半身はハーフパンツというラフな格好であり、剥き出しの太ももが湯気を浴び白く瑞々しい。
まるで父親に甘える娘の図だが、そこまで体格差はないし、どちらかと言えば父と娘ではなく乳とムスコである。
「じゃ、今日もお願い」
「あ、ああ……」
リリミカは華奢な背中を俺に預けてくる。俺はまるで座椅子だった。
風呂上りのリリミカの身体は服越しでもその体温を強く感じるし、シャンプーの薫りが亜麻色の髪から漂い平常心を乱してくる。
(これくらいで心を乱してどうする! 今からもっとエライ事をするんだから)
聞こえるんじゃないかというくらい大きな生唾を呑み、俺は腕を前へ、リリミカの身体の前まで伸ばす。
リリミカも心得たもので、脇を少し広げ腕の通り道を空けてくれた。
両腕は直進から角度を変え、リリミカの胸の辺りに手の平を持ってくる。
もう一度、大きく生唾を呑みこ両手をその上に着地させた。
肌の熱を吸った二枚の布が俺の手を迎え、そして主人の胸へと随伴する。風呂上りだからか下着はしていないらしい。
そのまま服ごとリリミカの乳房を優しく包みこみ、人差し指と中指の間あたりに膨らみの頂上を収めた。
「んっ…………」
小さくリリミカが震える。あわせてごく小さく揺れた髪が、俺の鎖骨辺りをくすぐった。
湯上がりの火照った乳肌が、そのやわっこい感触を服の下から伝えてくる。その約24時間ぶりの感触が神経を伝わり脳に到達したとき、
「う、ううぅう、ぐぉぉ、ひっく……!」
俺の目は感涙に歪む。
「ちょ、アンタまた泣いてんの!? もう一週間以上経つんだからいい加減に慣れなさいっての!」
「ぐすっ……無理言うなよ……」
今日でリリミカの言うとおり、彼女らがB地区に居候するようになってから一週間以上の日数が経過していた。
あれから毎日、リリミカとレスティアのおっぱいに対し10分間マッサージを行っている。
だというのに、気を抜けばこうやって涙腺の機能が発揮されてしまう。いい大人がおっぱい揉んだくらいで泣くとか噴飯ものの極みだが仕方ない。嬉し涙はいくら流してもいいものだ。
手の平サイズのあまりに柔らかい少女の感触が愛しくてたまらない。リリミカの胸を第三科の準備室で触ったときに比べ、進歩の後が質量として現れていた。
おこがましくもそれを為したのが俺だと思うと、表現できない達成感に満たされる。
並みの剣も槍も魔法も俺には効かないが、二つの乳肉は劇的なダメージを俺に与えてくる。しかも俺はそのダメージをむしろ望んでいるのだから救えない。
「まったく……ま、乱暴にされるより遥かにマシだけどね」
「この俺がおっぱい様に狼藉を働くわけ無いだろ」
この状況が既に狼藉そのものだが、それはそれだ。
(いかんいかん、時間は限られているのだから有効に使わねば……)
鼻を啜り、スキルのスイッチを入れる。発動するのは『
『潜在乳力解放』は、おっぱいの可能性を伸びしろ一杯まで引き出し、一部その上限を突破させるスキルである。少年漫画チックな能力だが、俺のは読者アンケートで投票されるような能力でもない。
また俺の体感ではおっぱいの限界が10までとするなら、このスキルはそれを11か12にする程度のものだが、例によって乳首に近いほど効果を発揮する。
レスティアのときは下着の上から、リリミカの時は生で触ったが目隠しをしていた。
ならば裸のおっぱいを見ながら、これらのスキルを使えば最大効果を発揮するだろう。もしそうした時、彼女らのおっぱいがどのような変化を起こすだろうか。10の限界を20や100にしてしまわないだろうか。
本来のおっぱいから逸脱し、成長を歪めてしまうのでは無いかと思うと俺は怖い。
「んぅ……」
腕の中の少女が艶かしい吐息を漏らしたと思うと、
「あ”あ”あ”あ”ぁぁぁーー……」
色気を根こそぎ吹き飛ばす野太いを発した。温泉に浸かった日本人みたいだ。実際足湯だし間違いでもない。
「ああぁー……一日の最後はやっぱりこれよねー……」
「オッサンの晩酌みたいだな……」
温泉とマッサージという鉄板コンビは、異世界だろうが大人気らしい。
「失礼ね、それはどっちかと言ったらアンタの方じゃん。『このおっぱいの為に生きてるんだ』みたいな」
「仕事終わりの一杯みたく言うなっての。それにまだオッサンって歳でもない」
とはいえリリミカのいう事は正しい。俺が異世界にやってきた理由を一語で言い表すなら、確かにおっぱいになるだろう。
こうやってリリミカのおっぱいの為に俺の力が役立っていると思うと生まれてきて良かったと心底感じる。
下から持ち上げるように、持ち上げるという感触はまだ少ないが、下乳あたりを内側に外側にと繰り返し撫でていく。時折手の平の角度を変え、親指の腹で脇あたりの乳腺をマッサージしていく。ミクロレベルの微細なダメージだろうが俺は許さない。
ふにふにと健気に反発するリリパイに、俺はただ誠心誠意奉仕するだけだ。
「ふ、ん、ぁ、はぁっ……く、ぅ、ふっ……」
リリミカの声が吐息まじいで艶かしい物に変わってきたが、心の耳に栓をする。心頭滅却すれば乳もまた……また、なんだ? 涼しくはないぞ。ともかくこれはエロい行為ではないのだ。しかし分厚いクッションがあって良かったとは思う。
やがて俺は乳房の頂点に向かって搾る様に指を狭める。リリミカの身体が震え、息を呑む音が聞こえた。
それを無視し、2.2センチに触れる直前で下山した。それを何度か繰り返し、バリエーションに富んだ手法で乳房全体を癒していく。しかし、その二点だけは無視した。
座り心地が悪いのか、リリミカはクッションの上でモゾモゾとポジションを確かめているみたいだった。
「……ねえ、アンタやっぱり……?」
「ああ、俺は乳首を封印したんだ」
条約に記載の無いことだが、俺の決めた規律だ。
それは俺の乳首に対する様々な攻撃力が強すぎるからに他ならない。強すぎる神の力は
完全に制御できない力ゆえに、俺はもっと自身のスキルについて理解を深める必要がある。彼を知り己を知りれば百戦危うからず、というヤツだ。彼とは主に敵と訳すらしいが何も敵に限った話ではない。
敵であれ味方であれ、自分とは別の存在を理解しようとする事が肝要だと俺は思うのだ。
何故ならおっぱいは敵ではない。乳を知り己を知れば百戦危うからず。
俺はおっぱいを知り護りたいのであって、傷つけたいワケじゃない。いつだってそれは変わらないが、強すぎる兵器は常に危険を孕んでいるように隠した方がいい事もある。
天下の権力者が一般人に紛れて生活するように。
戦場を血で染めた大剣豪が刀を封印するように。
伝説の傭兵が引退しサラリーマンになるように。
俺は俺の力封印する。つまり乳首を見ない、触らない、関わらない。でもおっぱい全体を見たり、服の上から乳首の位置を探すくらいはいいよね? ノーブラとかでポッチ浮いてたら見ちゃうのも、セーフだよね?
「ぷぷっ……顔で乳首を封印って! いったいどんな生活してたらそんな事を言うようになるのよ?」
「笑うなって! 真面目に考えた結果だ!」
「もっと変でしょ! んふふっ、やだ、もう、笑っちゃうって!」
「……まあ確かに普通は乳首なんて、そうそう口にはしないな……」
「口にするなんてヤラシー! 私にそこまで許して欲しければ、もっともっと精進しなさいよね」
「そういう事を言ってるんじゃないし、そしてそこまではしない。これはお前らのためであり、俺のためでもあるんだよ」
「ずいぶん冷静に返すわね……私に魅力がないってワケ? なんか自信なくすわ……」
「だからそういう話でもない。お前ら(のおっぱい)の為なら、俺の欲求なんてステーキの横についてるパセリみたいなもんだ」
「私パセリも食べるけど?」
「食うとか食わないとかじゃなくてだな、所詮はメインディッシュを飾るだけの脇役。残してしまっても問題ない」
「野菜作る人に申し訳ないと思わないの?」
「真面目か。いや確かにそうだ……喩えが悪かったな。つまり気にしなくて良いって言いたかったんだよ」
俺のスケベ心は邪魔だ。誠意と慈愛の心を以てリリミカのおっぱいに貢献するのであり、俺の欲求を満たすためじゃない。
様々な方法でおっぱいを揉み解すのは、彼女らの信頼に応えるためであり、そしてどうせなら気持ちよくなって貰いたいからだ。もちろんそれはリラクゼーション的な意味で。乳首への接触はそれらの前提を崩しかねない。
だが、永久的に封印するなんてのは無理だ。
先日のパルゴアやゴーレムの件のように、いつか必要なときが来るだろう。いざという時に解放するのはクライマックスでのお約束だ。
『この私の顔を見忘れたとは、言わせぬぞ』
彼は終盤に正体を明かす。弱き民を救い悪役を懲らしめる、勧善懲悪の見本――カッコいい。
『大切な人たちの笑顔を護る為、この身を修羅に落とそう』
そういって男は、かつて血に濡れた刀を引き抜く。今度は護るために――カッコいい。
『やれやれ、今日は残業だな……』
そういってネクタイを緩めると、鍛え抜かれた体が露わになり顔つきも変わる――カッコいい。
どれも超絶カッコいい。俺もそうなりたい。
「真の力ってのは、解放するタイミングが大事だろ?」
「んっ……分か、る……」
「分かってくれるかリリミカ!」
「わ、かるけどさ……ぅっ……いくらムネっちの力が強力でも、乳首を解放するじゃ、カッコ良く、はないと思うわよ……?」
「……言うなよ……」
どんな場面でも乳首を解放するっていう言葉だけで台無しになりかねない。悪を討つために乳首を解放する。戦いに勝利するために乳首を解放する。大事な物を護るため乳首を解放する。
駄目だ、どう頑張ってもかっこ悪い。台詞に乳首と加えるだけでシリアスな雰囲気が霧散してしまう。仕方ない、おっぱいだもの。
リリミカは俺にもたれ掛かり、俺はおっぱいマッサージに没頭する。彼女の堪えるような息遣いと、トポトポとお湯が流れる音だけが俺達二人を包んでいた。
ピピピピッ!
そこに人工的で異な音が響いた。
それはクノリ姉妹が持ってきたタイマーのような物だ。正確な時間を計測したり、音や振動で伝えたりする魔道具で、初代クノリが考案したものらしい。
「ん、十分だ。お疲れさん」
今日も夢のような時間だった。
細く長い息を吐き、名残惜しくおっぱいから手をどけようとする。しかしそれより早く、リリミカの手が俺のに重なった。俺はリリミカの胸と手のひらで両手をサンドイッチされた形になる。
「……」
「……おい、どうした?」
声が震えなかったのは、俺の喉が頑張ってくれたからだ。
おっぱいの熱さもだが、リリミカの手のひらの熱さが俺の手の甲に染みていく。
「……ねえムネっち……」
顔を半分だけ振り向かせ声をかけてきた。目元は髪に隠れ見えないが、半開きの艶やかな唇から目が離せない。
「ステーキも、パセリも……二人分あるのよ……?」
彼女の手が僅かに力がこもる。柔らかい乳肌に服ごと埋没し、俺の人差し指に根元あたりに、熱くてコリッとしたものが触れそうになった。
「――――! よ、夜更かしは良くないから早く寝ろよな! お休みー!」
彼女を揺らさないように腕を抜き、さらに達磨落としのようにクッションの下から脱出した俺の動きは神速と言って良い。
「え、あ、ちょっと――!」
何か言ってくるリリミカには悪いが、もうそれどころじゃない。
マグマのような血液を運動エネルギーに変換させ、温泉を後にした。
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