第二六話 本条家
「……本条家っと」
「あれ? 二人とも、本条家ってやつを知ってるんじゃ?」
風成が尋ねると瞬也が答える。
「本条家については知っているが、ホムンクルスは初耳だ。ただ以前に本条家のクローンを作ろうとした事件があったんだ。それと関係があるはずだらか再確認をしたい」
「なるほど、その事件も調べればいいんですね」
「ああ、頼む」
風成は引き続き『東京本部
「お、これだな」
風成は『本条家の特殊性』というページを開いた。
『本条家の特殊性』――能力と言うのは
風成は一通り、書いてある事を読んで腕を組むと目を瞑った。
「なるほど……!」
「分かるのか?」
瑠那は声を掛けると風成は顎に手を当て目を見開く。
「なるほど、分からん!」
「紛らわしいわ!」
「ちなみに瑠那さんは意味分かってるんですか?」
「……雰囲気的にはな」
「……瞬也さんは?」
「ニュアンスは分かる」
「二人とも駄目駄目過ぎる」
瑠那は言い訳のような反論をし始める。
「いや、風成は、私達はアホではないんだ」
「今日はおかしな事ばっか言いますね」
「真面目に話してる! ちなみに風成お前もだ」
「え?」
「能力が発現した時点で私達の脳機能は常人より進化している」
「使いこなせないなら意味ないかと」
「……」
瑠那は言い返せず黙ってしまった。
説明すると『エピゲノム』は環境などによって後天的に変化するものである、その獲得された形質が次世代へ遺伝する事で親と同種の能力を受け継ぐというセオリーを変えて異なる能力を発現したという事になっている。
次に風成は、本題である本条家のクローンを作ろうとした事件をするが検索をかけると一ページ目で目を丸くするような文字を目の当たりにした。
「なんだこれは……」
そこには『本条家虐殺事件』と記載してあった。風成は意を決して詳細を見る。
『本条家虐殺事件』――二〇〇七年当時、東京本部能力所の能力開発部のトップである
風成は息を飲んで、納得した。
「本条家の生き残り……そういう事か」
と呟くように言った。風成は啓子と仲良くしているつもりである程度彼女の事を知っているつもりだった。しかし、家族が殺害され、親友である
(俺はあいつについて何も知らなかった……いや、同情したところで何か変わるわけでもない、今まで通り接しよう)
心のなかですら平静を装うが酷く同情してしまった。
瞬也は風成が本事件について把握した様子を確認すると問いかけ始める。
「この事件とホムンクルスの件、君はどう考える?」
「そもそも、この事件の死都って連中と六々堂輪廻はどうなったんですか」
「あの場に居た死都の連中は全員戦闘で死んだ……まぁ、もっとも死都の総裁含む相手の主戦力は居なかった。六々堂については行方知らずだ」
「単純に六々堂と死都どっちも関わっていると思いますけど」
「……だが、そいつらの目的は決定的な違いがあるんだ」
瞬也は説明した。六々堂輪廻は度を越した研究者で知的探求心の為に人道を外れるという性格だという事とクローンを製造して手元の戦力を増やし、能力者を現政府に認知させて暴力と恐怖で裏で政治を操るのが目的だという事。そして、死都は戦力を増やすという点は六々堂輪廻と同じだが戦力を持って東京本部能力所に取って代わって全国の能力者を支配するのが目的である。
風成は瞬也の話を最後まで黙って聞いてた。話が終わると瑠那が両手のひらを振り下ろしてドンッと机を叩く。
「結局の所、ホムンクルスを作った能力開発部は裏切り者で六々堂や死都とはかなり高い確率で繋がっているわけだ。許せない」
風成は調べる事は調べたのでパソコンの電源を落とした。
「大体、何が起きているか分かりました」
データ室から出ようとすると先程、啓子を傷つけて怒らしたことを思い出して更に後悔する。
(やっちまったな。明日会ったらすぐに謝ろう)
風成がデータ室から出ると瞬也と瑠那も後ろから付いてきて部屋を出るが二人は自室ではなく集会所に向かっていたのを見て風成は疑問に思った。
「あれ?二人とも寝ないんですか?」
瞬也が振り向いて風成を見る。
「事態が思ったより深刻だ。間違いなく抗争が起きるから本部の所長と連絡を取る事にしたよ」
「集会所ってそんな事出来ましたっけ?」
「大きいモニターがあるだろ、各能力所とのテレビ電話用に設置してあるんだ」
「え、ご飯食う時にバラエティー番組が点いてるから普通にテレビ用かと思いましたよ」
「いやお前が点けてんだろ、ほら瞬也も早くいくぞ」
瑠那は喋っている二人を見かねて瞬也に行動を促し、集会所に向かった。
風成は二人の後姿を見送ってから自室に戻ろうとしたが
『わらわの……力……を欲せよ』
どこからか声が聞こえて風成は立ち止まって天井や後方を見渡したが何もいなかった。
(え? なに急に、お化け? 言ってる事が厨二病っぽいし)
風成は気にせずに歩き始めるが
『欲せよ……欲せよ……欲せよ、欲せよ欲せよ欲せよ欲せよ』
「いや、うるせぇよ! なんなんだ。今色々と知って混乱してるんだよ……もしかして俺の幻聴なのか」
『否である』
「幻聴違うんかい」
風成は歩く方向を変えて声のする方向に向かった。
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