第二五話 九人目
「よし」
『楠瞬也』――現一七歳。高校三年生。木、枝、葉、幹等樹木に関するものを生成し操作する事が出来る生成系能力者。二代目神戸特区能力所所長。
『
『
『
「才華さんと城ケ崎って研究員だったのか」
風成は引き続き本能力所の所属員について調べ続けた。
『
『
『レイ・ヴィスタンス』――現一三歳。中学一年生。生体電流を増幅させ、電撃を操作できる変異系能力者。所属員。
『
「うん、俺を除いて八人だ……次、九人目のページがある」
瞬也が風成の言葉に反応する。
「見れば答えが分かる」
「これ俺ってオチはないですよね」
「あるわけないだろ」
風成は緊張しながら九人目の能力者の詳細について触れた。
『
風成は驚きの余り立ち上がる。
「なっ! 妹が居たのか……同い年っぽいな。しかも行方不明……」
「……半年前の『
と女性の声がした。風成が後ろを振り向くと瞬也の横に瑠那が居た。
「瑠那さん、
「いや無事だ。むしろ指一本触れていない」
「くっ……辛さのあまり現実逃避か」
「アホか」
「くそ! きっとあんな事やこんな事をやられてるに違いない!」
「こ、こいつ殺す」
瑠那が風成に殴りかかろうとすると瞬也が後ろから腕を掴んで制止する。
「いや、瑠那待て待て、落ち着いてくれ」
瑠那は風成に悪気がないのは分かるが何よりも瑠那は妹に関する事になると過剰に反応しやすい。行方不明のせいでもあるが軽いシスコンでもある。
瑠那は瞬也を地面に引きずって振りほどこうとしているうちに落ち着いたようだった。
「
「結晶……? そもそもなんで連れ去る必要が……」
「結晶は、青龍が主を守ろうとした結果だと思う。連れ去られたのは単純に力だ四聖獣の力は巨大、悪用するやつらが居ても不思議ではない」
「でも半年も結晶の中で飲まず食わずか……無事ってことは青龍ってやつの不思議パワーのおかげなんだろうけど」
「そうなるな。オムライス、カレー、スパゲッティ、パスタ……」
「ん?」
風成は瑠那が急に料理名を上げたので怪訝な目で見た。
「どうしたんですか?」
「グラタン……マカロニサラダもそうだ。瑠璃が好きな物だ、必ず食べさせてやる。もう危険な外の世界に出さずにお姉ちゃんの部屋で一生かくまってやるからな」
「やべーよこいつ」
瑠那が決心して目を瞑って独り言を言ってる姿に風成は軽く引いたが妹が行方知らずならば仕方ないかもしれないと考えた。
瞬也は瑠那の瑠璃に対する様子を見慣れており、気にせず口を開く。
「俺達は定期的に全国各地を回って瑠璃君の行方を捜してたが手掛かりが一切ない状態だ。一応、全国の能力所には協力してもらってるが情けない事に八方塞がりなんだ。」
「なるほど、事情は分かりました。その瑠璃って子、本条と仲良かったんですか?」
「同い年で同じ能力者だったからな……親友だったよ」
「そうですか……」
「次は風成が連れてきた子について調べるのか?」
「はい」
風成は瑠璃の事を知るとなんとかしてやりたい気持ちになったが目の前で起こっている問題に対処しようと頭を切り替え、一先ず瞬也と瑠那に大事な事を伝えようと思った。
「あの子、本条家のゲノム情報を作って出来たホムンクルスらしいですよ」
「「なっ!」」
二人は驚き、風成に詰め寄った。
瞬也は尋ねる。
「それは本当か!」
「
「なんてことだ……」
瞬也は瑠那とゴソゴソ喋り始める。
風成は皆、何かを抱えて生きている事を実感すると、三年の記憶しかない自分は何もないと感じた。
(なんでこんな時に、記憶うんぬん考えるんだ。そんな事より今はやる事が)
そして彼はデータベースで本条家について記載してあるページを開いた。
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