第二四話 能力者達の専門用語
「一人で寝れるか?」
「どこか行っちゃうの?」
風成の部屋も他の人と同様の部屋の造りだが奇妙な点があった。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ」
「なんで、この部屋、二段ベッドが二つもあるの?」
少女は八畳ワンルームの部屋の左右に置かれた二段ベッドが気になった。
「最初からこうなってたぞ、多分、物置に使ってた感じかな」
「なんか、かわいそう……」
「俺もそう思う」
「ふふっ」
少女はすこし笑うと風成は最近同じ様なやり取りをした事を思い出す、
「笑いのツボは一緒なんだな」
「ん?」
少女は首をかしげる。
「本条と話している時に同じ事言ったら、あいつもお前と同じ所で笑ってたんだ」
「そうなんだ」
「じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい」
二人は互いに手を振る。そして、風成は自室から出た。夜中の一時を回ってる上に夕刻時の戦闘で怪我を負っているのにも関わらず風成には、どうしても今調べたい事があった。
(
風成は能力所に初めて来た日に本条啓子の言った単語を思い出してた。
(専門用語というか能力者が作った言葉なんだろうけど、『東京
更に風成にはずっと引っ掛かる事があった。
(ここに来る前の日、能力所の資料を貰ったけど、資料には所属員が九人って書いてたけど……どう考えても一人足らない。軽くホラーなんだが)
思いつく限りの謎を考えているうちに風成はデータ室の前に立っていた。
データ室のドアノブをガチャガチャと回すが開かなかった。
「さすがに簡単に開かないか」
そうこうしているうちに風成は人の気配を感じた。
「⁉」
風成は扉から離れて感じた気配と距離を取って構える。
「ははっ、用心深いのは良いことだ。この世界においてはな」
笑った後に風成に喋りかけたのは所長の
「瞬也さん」
「すまないな、びっくりさせてしまった」
「いや、いいんですけど」
「入りたいんだろ、データ室に」
瞬也はデータ室の扉に近づいてドアノブにある鍵穴に指をくっつける。
「【
彼はドアノブに触れた指を回すとカギが開く。
風成は何故開いたのか分からず訝しげな顔をしていると瞬也はドアノブに触れた指を見せる。
「これで開いたんだよ」
「あ、なるほど!」
瞬也の指の先にはドアノブの鍵の形をした幹が生えてた。彼は鍵穴に幹を生成させて鍵の代わりとなる物を作ったのだ。
「瞬也さん、空き巣し放題ですね」
「するわけないだろ」
「その鍵ください」
「……時間が経ったら枯れて使えなくなるぞ」
などと言いながら瞬也は幹の鍵を風成に譲渡してデータ室に入っていった。
風成は扉から一番近い席に座ってパソコンを起動させた。一方、所長は彼の背後で壁を背にして立っていた。
「気になる事があるんだろ」
「まぁ色々とですね」
「君が連れてきた女の子についてだろ」
「ああ‼」
「急に声のボリュームを上げるな……あの子について何か知っているのか」
「やっぱり、まだ何も聞いてないみたいですね」
「君が倒れてしばらく泣いてたしな、
風成は少女が泣いてた事を聞いて少し申し訳ない気持ちになった。気を取り直して、起動させたパソコンを『東京本部
「あの子について調べる前にちょっと気になる事があるんですよ」
「?」
風成は知りたい単語について調べた。
『東京十長』――東京に所在する特に優秀な十人の能力者の総称である。基本的には東京本部能力所の
『最高能力者』――日本国内で最も強大な戦闘能力を誇る五人の能力者の総称である。中には東京十長を兼ねている者もいる。
『四聖獣』――青龍、白虎、玄武、朱雀らの
風成は最後の単語の説明に関して疑義的になった。
「四聖獣なんて実在してたのかよ」
「そういえば、何も説明してなかったな」
「瞬也さん、少し抜けてますね」
「……瑠那にも良く言われるよ」
今度は風成自身が所属する能力所について調べた。居ないはずの九人目の所属員が気になったのである。
瞬也は彼が『神戸特区能力所』について調べようとしている事に気付き、調べている理由を察する。
「気付いたか……」
「ええ……まぁ、というか最初から」
「別隠しているわけではないからな」
最後に瞬也が「手掛かりさえあれば……」と呟いたのを風成は聞き逃さなかった。
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