第98話 パーティー

 シャワーを浴びたり、軽食を取ったりして、車で別荘に行くことになった。


「それにしても、何で車なんですか。テレポートを使えば一瞬でしょうに」

「そーちゃんは分かってないな。こういうのは、車で行くから、わくわくするんだよ」


 そんなものなのか。うん、俺にはよく分からない。


「あの、僕も来ちゃってよかったんですかね? 」


 誠が控えめに笑って言う。やっぱり、犯罪を犯したことを気にしてるんだろうな。


「いいんだよ。せーちゃんも仲間でしょ」


 せーちゃん……俺がそーちゃんだからか。本当に、あだ名をつけるの好きだよな。


「彩予くんの言う通りだ。それに、誠くんを紹介してほしいっていう人がいてね」


 運転しながら、京さんが言った。誠を紹介……誰にだろうか。京さんのことだし、変な人ではないだろうけど。誠も目を丸くしている。


「僕を、ですか? 」

「そう。あ、もう着くよ」


 ハンドルを回し、駐車場に車を停める。後ろから、拓哉さんたちも来ているようだ。荷物を下ろして、海に行った時と同じように、虹彩認証で門を開ける。


 あの時と、場所は違うけど此処もかなり広い。もう、一条家が何者なのかは、考えない方がいいのかもしれない。


「おっ、やっと来たな。準備はできているから、2階に荷物を置いてきなよ」


 大きなテーブルにピザを置きながら、瞬の兄であり京さんの弟の、翔さんが言った。久しぶりに会ったな。探偵の仕事は、上手くいっているんだろうか。


 2階の部屋に荷物を置き、1階に下りる。


「飲み物とか、適当に買ってきたから、自分で選んで」


 パーティーの用意、全部翔さんがしてくれたのか。ありがたいな。


「翔、全部任せて悪いな」

「全然いいよ。はい、領収書」


 翔さんから、瞬に似たものを感じる。流石は兄弟だ。全員が席に着くと、京さんが立って言う。


「今回は本当に大変な戦いでした。しかし、誰も怪我をすることなく終えることができました。本当に、よかったです。あー、取り敢えず、お疲れ様でした! 乾杯! 」


 京さんの声と共に、コップがぶつかる。テーブルには、ピザが5枚とオードブルが並んでいる。こういうパーティーは初めてだ。


「誰か、そこのピザ取って」

「焔、タバスコ! 」

「俺はタバスコじゃない」


 何をしても、騒がしいよな。楽しいからいいけど。誠もクスクスと笑っている。


「えっと、こっちが奏くんだよね? 」


 翔さんが俺に言った。ピザを頬張っていたから、返事の代わりに首を縦に振る。


「じゃあ、君が誠くんだね。初めまして、俺は一条 翔と言います。誠くんに相談というか、聞きたいことがあるんだけど」


 京さんが言っていた、紹介してほしい人って翔さんだったのか。誠が急いで、口の中の物を飲み込んだ。


「初めまして、上月 誠です。何でしょうか? 」

「誠くん、俺の探偵事務所で働かない? 」

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