第95話 最終決戦

 焔が人差し指と親指を立てて、人差し指をテレパスに向ける。すると、弾丸のように火の玉が指先にできる。テレパスに向かって、火の玉が放たれる。テレパスは避けたが、少しかすったらしく、服の端が焦げていた。


「ふぅ……」


 息を吐きだし、目を閉じる。敵に繋げた糸に集中するんだ。能力を使わせないように、信号を送る。あわよくば、敵が意識を失ってくれるといいんだが。


 糸に乗せて信号を送るが、中々届けられない。同じテレパスだから、なのか? 厄介だな、本当に。


「はぁ……っ……」


 抵抗が強くて、押し返されそうだ。でも、負けてられない。何度も信号を送る。やっぱり、上手く届いた感触がない。どうしたらいいんだ。


 ふと、背中を温かいものが撫でた。誰かの手だ。1回冷静になれ、あるはずだ……抵抗が弱くなる瞬間が。


(あった。あぁ、火の玉を避けた瞬間か)


 なら、その一瞬を狙えばいい。背中がポカポカする。大丈夫、やれるはずだ。俺には仲間がいる。抵抗が弱くなった時、信号を送る。すると、するりと脳の奥に届いた感触がした。この調子だ。


「動きが鈍ってるぞ? さっきまでの威勢はどうしたんだ? 」


 焔の声だ。効いてるのか。それに、抵抗も弱くなっている。このままやれる。一気に信号を送っていく。頭が重い、体も重くなっている。信号を糸が切れるまで、連続で送ると、敵が低い声で唸った。


「ぐっ……がぁっ……」


 そのまま、ぷつりと糸が切れた。目を開けると、敵のテレパスが倒れているのが見えた。勝てた、のか。安心した途端、視界がぐらりと傾いた。やばい、倒れる……。


「よっ、と。そーちゃん、お疲れ」

「彩予、ありがと、ございます」


 すると、頭を何かが触れた。誰の手だろう。何だろう。


「彩予、代わるぞ。政府まで届けてくるよ。奏は寝てな」


 瞬の声だ。こくりと頷き、目を閉じる。もう、戦いは、終わったんだ。もう、大丈夫だ。ゆっくりと、意識が遠のいていく。


「んじゃ、届けてくるね」


 意識が途切れる直前に、瞬の声が耳に届いた。

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