第94話 テレパス

「テレパスは、このグループのリーダーです。今までの事件は、彼が指示したものです。それで……」


 そう言った少年の顔が、一瞬で青ざめていく。リーダーがテレパス。だとしたら……。


「今もテレパシーで、何か言われているんですね。無視していいですよ」

「は、はい。ですが、その……」


 同じ能力を持つ人と初めて会った。だからだろうか、こんなにイライラしてしまう。柄でもない。思い切って、少年に言った。


「大丈夫ですよ。彼よりも俺の方が強いですから」


 少年は、俺が先天性のテレパスだと分かっていたんだろう。こくりと頷き、再び話し始めた。


「あいつは、身体能力が低いです。でも、能力を得たのは8歳の時で、このグループの中で1番早いんです」


 となると、誰かに協力してもらいながら戦いたいな。できるだけ、能力を使わせないようにしたい。俺と同じ使い方はできないだろうけど、似たことができるなら厄介だ。


「お願いします。あいつを倒してください。俺は何も、何もできないから」


 そう言い切った彼は、小刻みに震えていた。


「分かりました。……焔、手伝ってくれませんか? 最後の戦いを」


 長い時間、遠距離から攻撃できて、俺の無茶な要求にも応えられる人。何より、俺が1番信頼できる人。そんなの、焔しかいないだろう。


「勿論だ」


 手短に、俺の考えた作戦を伝える。能力を使わせないようにする。やること自体は、刑務所の爆破を防いだ時と同じだ。令さんに、途中でテレパシーを切ることを伝える。俺の持っている能力ちからを、全て使うんだ。


「頼みますよ、焔……いや、リーダー」

「あぁ。でも、勝敗を左右するのは、お前だからな。頼むぜ、副リーダー」


 同じ能力者と戦うのは怖い。でも、俺は1人じゃないんだ。それに、俺は副リーダーだ。やれる。やってやる。


「2人とも、来るよ」


 彩予の言葉と同時に、令さんとのテレパシーを切った。足音を立てずに、敵が姿を見せた。俺と同じ歳くらいの男性だ。


「うちの予知能力者を、そそのかしてくれたようで」


 敵にテレパシーを繋ぐ。焔の準備も整ったようだ。俺の前には、焔がいる。横には彩予、瞬、影がいる。大丈夫だ。


 21時50分、最後の戦いが始まる。

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