第92話 プラズマ
少年は何かを取り出し、部屋にぶち撒いた。白い粉が部屋に充満する。何かに気が付いたのか、焔が焦ったように言う。
「影、俺らの周りを壁か何かで囲え! 」
すぐに、影が黒いドームを作り、俺らを囲む。黒いドームの中で、ぎゅうぎゅうになっていると、大きな爆発音が聞こえた。白い粉、爆発……そうか、粉塵爆発か。あの、工事現場で起きた……。それにしても、影の能力って爆発も防ぐことができるのか。
「焔くん、影くん、素早い判断だった。ありがとう」
京さんが言う。本当に判断が早かった。今頃、あの爆発に巻き込まれていたと思うと、ゾッとするどころではない。俺らを殺すつもりだったのか。
黒いドームを消すと、建物の焦げた臭いが鼻を刺激した。
「これは、酷いっすね」
影が呟く。すると、遠くから声がした。
「あの爆発を防ぐなんて、本当に凄いね」
この建物、奥にもう1つ部屋があったのか。誰も、敵に怒りを覚えなかった。すでに、通り越していたんだ。少年から、火の球が飛んでくる。しかし、黙って誠が消火した。ずっと言葉を発さなかった焔が、誠に言う。
「誠くん、あいつが出す火を全て消火できるか? 」
「できますが……あいつはどうするんですか? 」
「俺がどうにかする」
そう言い、焔は火の矢を作り出す。数は全部で10本。少年から、何度も
焔は、なかなか矢を飛ばさない。何だ? そう思った瞬間、火が青く変化し、バチッという音がした。あれは、炎……ではないよな。
「火を使って、プラズマを作り出したのか……」
京さんが目を見開いて、呟いた。プラズマって、雷とかああいうやつか。青というか、白っぽくなった矢を、少年に向けて飛ばした。2本ずつ。4本飛ばした時、少年が倒れているのが見えた。感電したんだろうな。
「これで終わりか」
ぽつりと呟き、矢を消した。いつもとは違って、焔はとても静かだった。それが余計に怖い。
「はぁ……はぁ……っ」
誠が肩で呼吸をしている。アクアキネシストとも戦ったもんな。
「誠くん、大丈夫か? 」
「大丈、夫で……」
そう言いながら、誠は倒れた。床に転がる寸前のところで、瞬が体を支えた。疲労が限界だったんだろう。瞬の腕の中で、寝息を立てている。お疲れ様、心の中でそっと呟いた。
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