最終章 非日常
戦闘終盤
第91話 影と重力
テレポーターと戦うのは、拓哉さんと影だ。第3チームに合流したことを伝え、拓哉さんとのテレパシーは切った。
天井から差し込む月明りで、俺らの影がくっきりと浮かび上がっている。これか、京さんが時間を稼いでいた理由は。影の能力が使えないと、戦うのは難しくなる。
「では、始めますか」
拓哉さんが影に言う。すると、テレポーターの少年が動けなくなる。影の能力、いや拓哉さんの能力か。体が重くてテレポートできないらしい。重力操作、やっぱり強いな。
影が黒い手を作り出す。ここから、どうするんだろうか。影が拓哉さんに、目配せをする。
「
その言葉と同時に、黒い手が少年の半ズボンに向かう。そのまま、黒い手はポケットを裂いて、影の元へ戻った。
「こんな危ないもの、持ってちゃ駄目っすよ」
影の手には釘がある。それも、少し長めのものだ。あんなものを忍ばせていたのか。あれを人にテレポートさせるつもりで……考えただけで、ゾッとする。
「くそっ……」
唯一の武器だったらしい。焦る少年に、拓哉さんが突っ込んでいく。ギリギリ、目で追えるくらいの速さで。自分の体の重力を小さくしたのだろう。少しだけ宙に浮いている。
モデルのような、すらっとした体からは、想像もできないような力で少年が飛ばされた。壁に激突し、少年は気を失ったようだ。壁には大きなヒビが入っている。
「こんなものですかね」
涼しい顔で言う拓哉さんに、仲間の俺でも恐怖を覚える。凄いよ、この人。
「拓哉さん、流石っすね」
「いえ、影さんが上手く武器を奪ってくれたからですよ」
これで、2人目の能力者も倒したのか。気が緩みかけた時、彩予が言った。
「次、パイロキネシスト来るよ」
間髪入れずに出してきたか。敵の影が見えた瞬間、焔が敵に向けて炎を飛ばす。しかし、あまり効果はないようだ。今までの人より、少し大人びた少年が姿を見せる。
「君が、噂の先天性の能力者か」
何も答えずに、焔は炎で矢を作り、少年に向けて放つ。だが、少年は綺麗に避けてしまう。動きが素早いのか。
「危ない危ない。ちょっと、話を聞いてもらえないかな」
少年が言う。にっこりと笑っている様子からして、大人しく従うわけではなさそうだ。
「うちのリーダーが、これ以上被害を大きくするのは、ごめんだって言っててね。そこで、君たちと和解したいんだ。条件付きで」
「条件って何だ? 」
京さんが反応した。悪い予感というか、ろくでもない条件な気がしてならない。
「お金だよ。1000万円を用意してくれたら、大人しく従うってさ」
「そんな馬鹿げた条件、受け入れるわけないだろう」
すると、少年は氷のような声で言った。
「そっか、じゃあ仕方ないね」
嫌な予感……いや、身の危険を脳が訴える。全身に警報が鳴り響く。何かする気だ。
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