第90話 天井から

 月明り? 何で入らないと困るんだ? 疑問に思っていると、拓哉さんから連絡が入った。


『もうすぐ、テレポーターが来ます。テレポーターの姿を確認でき次第、突入します』

『了解しました』


 他の人にも同じことを伝える。休んでいる暇なんてないんだよな。それにしても、敵は何故1人ずつ来るんだろうか。一斉に来た方が……どうなんだろうか。


 1人ずつ来る理由として考えられるのは、リーダーが戦闘向きの能力を持っていないから? あの5人の中で、戦闘に不向きな能力を持っているのは、プレコグニションとテレパス。ただ、プレコグニションはあてにされていない。


 そう考えると、リーダーは……ぞくりと背筋が冷たくなる。そういうこと、なのか?


「奏、大丈夫? 」

「え、あ、大丈夫です。少し考え事をしてただけで」


 そういうことだとしても、1人ずつ来る理由にはならないだろう。俺たちの力を試している、もしくは少しずつ体力を削いでいく為か。


 前者だとすれば、次は途中で別の能力者が来る可能性がある。後者だとすれば、俺がテレパスだと分かっていることになる。……両方かもしれないな。


「何を考えてたの? 」


 俺の考えが纏まったのを察したのか、瞬が訊いてきた。


「敵が1人ずつ能力者を出してくる理由ですよ」

「確かにね。ま、僕らの体力を削ぎたいとか、あっちの被害を少なくしたいとか、そんな感じじゃない? 」

「まぁ、そうですよね」


 こういうのは、深く考えない方が良いのかもしれない。それよりも、次の戦闘について考えよう。天井から、小さな物音がした。


「瞬、次の能力者はテレポーターです。どこから現れると思いますか? 」


 口角をわずかに上げて、瞬が言った。


「んー、背後とか? 」


 振り返ると、半袖に半ズボンの少年が立っていた。


「チッ」


 作戦がバレて、イラついているらしい。それに追い打ちをかけるように、瞬が言う。


「ま、背後に回るなんて浅はかなこと、僕はしないけどね。僕なら、天井から攻撃を仕掛けるかな」


 その言葉と同時に、天井に大きな穴が開き4人の人が下りてきた。第2チームである、拓哉さん、焔、影、彩予だ。彩予は自分で着地できないから、拓哉さんにお姫様抱っこされている。かっこいいのに、どこか台無しだ。


「第2チーム、突入完了しました」


 拓哉さんが言った。天井から、月明りが差し込んでいる。今日は満月だったのか。

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