戦闘開始

第86話 第1チーム突入

 テレパシーを拓哉さんと令さんにも繋ぎ、戦闘に向けての準備を始める。16時まで、残り1時間。


「もう1回言うよ。最初に戦うことになる能力者はアクアキネシスト、次にテレポーター、パイロキネシスト、プレコグニション、そして最後にテレパス」


 彩予が再確認する。勿論、変わる可能性もあるし、その為に俺がいるんだ。アクアキネシストは、誠と京さんが引きつけて戦うことになっている。大丈夫だ。


「瞬、怪我はもう大丈夫かもしれないけど、辛くなったらすぐに言えよ」

「分かってる。それに、もうあんなヘマはしない」


 瞬の黒い瞳には、固い決意が現れている。今回の戦いは、かなり長いものになるだろう。第1チームだけで、4時間は戦っていないといけないんだ。


「第1チーム、そろそろ出発するぞ。最後にこれだけは言っておく。いつもなら無理はするなと言えるが、今回は言えない。多少の無理はしてくれ。でも、無茶はするな」


 京さんの言葉に、腹の奥が引き締まるのを感じた。


「よし、第1チーム出発だ」


 俺、誠、京さんが瞬に触れ、敵のアジトの近くまでテレポートした。アジトの前に、誰かいたら迎撃されてしまうからだ。


「見張りなどは……いないか」


 こちらにとっては好都合だが、もう少し警戒すべきでは。それだけ、自分たちの力に自信があるってことなのか。


「よし、アジトの中までテレポートしてくれ。奏くんは、圭たちにテレパシーを」


 そっと頷き、圭さん、拓哉さん、令さんにテレパシーを送った。『今から突入する』と。短く息を吐きだして、瞬に触れる。あとの2人も俺に続いて、瞬に触れた。


「超能力者犯罪対策部の者だ。大人しく我々に従ってもらおう」


 京さんの大きな声が、建物内に響き渡る。強めの口調で言ったが、これで従うわけがない。俺は誠の後ろに隠れる。弟に守ってもらうなんて、かっこ悪いだろうか。


『敵のアジトに突入しました。やはり、こちらに従う気はないようです』


 俺らの目の前には、鉄か何かのパイプやバットを持った人たちがいる。敵意丸出しだ。テレパスの指示なのか、一斉に襲いかかってきた。この全員が無能力者なんだろう。


 瞬が自分のポケットに手を入れた瞬間、数名の無能力者が床に倒れた。一瞬の出来事に、他の無能力者は怯む。瞬は、お構いなしに麻酔針をテレポートさせていく。沢山いる無能力者の、4割が床に転がっている。


 続々と湧き出る人の中に、パーカーを着た圭さんがいた。


『僕も加勢しますね』


 圭さんの声が、脳内に響いた。

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