第82話 最初の情報

 今日も折り返しの時間になった。あれから、連絡は入っていない。上手く潜入できているんだろうと信じて、俺は雑用をしている。


 一静と令さんが、敵についての情報を調べてプリントアウトする。令さんは、過去に起きた事件についての資料をコピーしたりしている。で、俺はその書類を仕分ける作業をしているんだ。今は、こういう小さなことでも、しないといけない。


『奏さん、2人の能力者の能力が分かりましたよ。プレコグニションとテレポートです。でも、プレコグニションの能力者は、あまりあてにされてないようです』

『冬真さん、お疲れ様です。有力な情報を、ありがとうございます。引き続き注意しながら、頑張ってください』


 遂に、能力が分かったか。本当に、上手く溶け込んでいるんだな。


『あと、夜は予定通りに支部で過ごします』

『了解しました』


 アジトの近くに、政府の支部があるらしい。それも、雑居ビルの1室に。後をつけられたとしても、圭さんが政府の人だとは分からないようになっている。


「圭さんからの連絡です。5人の能力者のうち、2人の能力が分かりました。プレコグニションとテレポートです。しかし、プレコグニションの能力者は、あまりあてにされてないようです」


 全員に報告すると、2人の能力が分かったことに驚いているようだった。俺も驚いた。


「また、夜は予定通り、支部に過ごすそうです」

「分かった。ありがとう」


 京さんは毎回お礼を言ってくれる。だから、皆がついていくんだろうな。仕分け作業に戻って、夜の予定を思い起こす。


 圭さんが支部に到着したら、テレパシーを切る。支部の場所は把握しているから、朝になったら繋ぎなおす。よし、大丈夫だ。


「んー、こんなもんか。ネットにはあんまりないな」


 令さんが呟く。やっぱり、簡単には集まらないか。


「そうですね。取り敢えず、集まった情報を分析しますか」

「俺も手伝います。何かしてないと、落ち着かなくて……」


 そう言うと、2人も同じだと言った。あのグループが起こした事件を見る。そこまで、目立つものはなかったが、1つだけ目に留まる事件があった。裏社会のグループ同士の争いだ。幸い、死亡者は出ていないが、数十人の無能力者が怪我をしたらしい。背筋がひんやりと冷たくなる。


 分かってはいたが、危険な戦いになるんだな。でも大丈夫だ。京さんたちが、作戦を立ててくれているんだ。大丈夫、このチームなら勝てる。そう思うと、少し安心できた。


「作戦に使えそうなのは、ないか」


 令さんが苦い顔をする。圭さんに頑張ってもらうしかないのか。今は、次の連絡を待っておくかな。

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