第77話 避難

 連絡が来るまで、大広間で待機することになった。ただの事故……事件でも、厄介なものじゃないといいんだけど。夕方になった頃、圭さんの携帯に電話がかかってきた。


「もしもし、京さん。え? あ、はい。えっ、いいんですか? わ、分かりました」


 電話を切った圭さんが、俺らに言った。


「京さんから伝言です。今すぐ此処を離れて、政府の施設にするようにと」


 避難? 移動ではなく? でも、京さんが言っているなら、従った方がいいだろう。圭さんが運転席に乗り、俺らも車内に乗り込む。


「少し飛ばしますよ。どこかに掴まっててくださいね」


 圭さんの言葉に、目の前にあった手すりを掴む。すると、凄いスピードで車が動き始めた。木々や建物が次々に流れていく。外を見ていたら酔いそうだ。


 どこに視線を向ければいいのか分からず、目を閉じていると、スピードが落ちていくのが分かった。外からの光も弱くなっている。目を開けると、建物……いや、駐車場に着いていた。


「着きましたよ。中に案内しますね」


 明るい声で言う圭さん。凄い運転をするんだな。酔ったのか、彩予の目に光が宿っていなかった。


 圭さんについて行き、エレベーターに乗る。ボタンは1からB2まであるが、圭さんは5のボタンを3押した。すると、エレベーターは下降し始める。疑問に思っていると、彼は言った。


「これ、暗号なんですよ。ボタンは地下2階までしかありませんが、僕らの部署は地下5階にあるんです」

「えっと、それは俺らに言っても良いんですか? 」


 俺が訊くと、圭さんが答える。


「大丈夫です。暗号は毎日変わりますから」


 そういう意味ではなかったんだが。にしても、毎日変わるのか。厳重だな。エレベーターが止まり、ドアが開く。地下5階、本当に此処が……エレベーターから降りて、目の前の扉を開けた。


「おっ、いらっしゃーい」


 適当に髪をまとめた、だるそうな声の人が出迎えてくれた。全員が中に入ると、その人が言う。


「初めまして。俺はれいって言います。色んな部署に所属している、雑用係って感じかなー。無能力者だから、あまり役には立たないけど、よろしくね」


 令さん、無能力者なのか。縁の下の力持ちって感じかな。微妙に決まってないウインクをして、言う。


「折角だし、京たちが来るまで質問タイムにする? 答えられる範囲で、だけどね。知りたいこともあるだろうし」


 確かに、政府側のことはあまり知らないしな。知ってることが多い方が、連携も取りやすいかもしれない。でも、知りたいことか……。そもそも、何から訊くべきなのやら。悩んでいると、瞬が口を開いた。

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