第八章 疑い

第71話 瞬の秘密兵器

「明日で退院ですね」

「やっとだよー」


 瞬の病室で言う。今日は、焔と影が政府に呼ばれて、来ていない。彩予は売店にいる。


「入院中、それも僕らがいない時って、何をしていたんですか? 」

「大体の時間は、テレビを見ていたよ。後は、屋上に行って怒られたり、兄貴が来たりしていた」


 何やってんだ……まぁ、元気そうでよかったよ。


「動き回って、看護師さんに怒られて、兄貴に叱られる日々ともおさらばか」


 怪我人が動いてどうするんだ。此処の看護師さんの胃が痛くなってませんように。そういえば、と瞬が話題を変える。


「九重コンビ、どんな用で呼ばれたんだろう。次の仕事ってわけでもないだろうし」


 次の仕事にしては、大げさというか……いつもなら、書類や京さんたちが伝えに来るよな。まぁ、後々分かるかな。病室のドアが開いて、煩い人が入ってきた。


「やっほー。しゅんしゅん元気かい? 」

「おう。元気だよ」


 売店から帰ってきた彩予が、飲み物を渡してくれた。こういう気配りができるのはいいよな。


「焔っちと影たん、どうしたんだろね」

「さぁな。でも、政府のことだし後から僕らにも言うんじゃない? 」


 瞬も俺と同じ考えか。今、色々考えても仕方ないだろう。そう考えていると、どこかから悲鳴が聞こえてきた。他の3人にも聞こえたようだった。


「今の、下の階からだよね」


 瞬がそう言うと、彩予が頷く。


「1階だよ。1階の受付の所! 」

「瞬、俺ら様子を見てきますね」


 そう言うと、瞬がベッドから起き上がる。


「待って、僕も行く」

「でも……まだ」

「大丈夫。兄貴に頼んで、秘密兵器を用意してもらったんだ。それを試してみたい」


 瞬を信じて、ついて来てもらうことに。エレベーターで1階に下りると、人が怯えながら1つの場所を見ていた。人を避けて受付に行くと、3人の強盗犯がいた。


 2人は丸腰、もう1人は銃を持っている。その銃を持った男が、少女を人質にとっていた。


「……彩! 」


 一静が言う。状況は最悪だ。この4人で、どうするか。


「丸腰の2人は僕が、いや能力者だと厄介だな」


 ぶつぶつ言う瞬、確かにな。


「いや、丸腰の2人は僕がどうにかする。銃を持った奴は……彩予、あいつと彩ちゃんをどうにか、一瞬でも離せないか? 」

「分かった。やってみるよ」

「なら俺は、此処にいる人の安全確保と、警察への通報を」


 全員で顔を見て、頷く。今、動けるのは俺らしかいないんだ。やるしかない。

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