第54話 練習方法

能力ちからが大きい、んですか……」


 目を丸くして、琉生くんが言った。まぁ、自覚はないよな。


「はい。琉生くんが、全力で能力を使えば、この建物を持ち上げることもできると思いますよ」

「そんなに、ですか……」


 ごくりと唾を飲み込む彼。自分の能力ちからの強さを、少しでも分かってくれただろうか。


「で、どうするかだよな。奏が言うには、琉生くんが使っている能力ちからよりも、漏れ出ている能力ちからの方が大きいってことだろ」

「んー。あのさ、琉生くんって能力を使うとき、想像してる? こう、物が動くっていう」


 瞬が琉生くんに訊いた。この6人の中じゃ、瞬の能力に1番近いか。琉生くんは、首を縦に振る。


「じゃ、気持ち的なものもあるのかもね。能力を使うとき、失敗したときの事も考えちゃうんじゃない? 」

「はい……。失敗したときの事を、思い出しちゃいます」


 なるほどな。前にした失敗のせいで、辛い思いをしたこともあるだろうし。気持ち、意識を少しでも変えることができれば、使い方も変えられるかもしれないな。瞬が、にっと笑って言う。


「でも、失敗したときのことを思い出すな、って言っても難しいでしょ。じゃあ、何回か能力を上手く使えた、っていう記憶を作ればいいんじゃない? 」

「……どうやって、ですか? 」


 瞬の視線が、俺に向けられる。まぁ、そうなるだろうな。


「奏が琉生くんの脳に干渉して、漏れ出る能力ちからを漏れないように、止めてもらえばいい。要するに、奏にストッパーになってもらえばいいんだよ。それで、その時の感覚を覚えて練習する。これしかないでしょ」


 そう言うと思った。結局、俺もその方法しかないと思う。琉生くんが、不安そうに俺を見る。


「それじゃ、奏さんが……奏さんの迷惑になっちゃうんじゃ……」


 ため息を吐いて、琉生くんの額にデコピンをする。


「迷惑なんて、思うわけないでしょう。それに、これはじゃなくて、んです。今のうちに、人の力を借りることを覚えないと、人を頼ることができなくなりますよ。……俺がそうでしたから」


 琉生くんの頭を撫でて、全員に向けて言う。


「瞬が言った方法で、練習しましょう。でも、俺がストッパーになれるのは、1日に1回だけです。これで、良いですか? 」


 5人全員が賛成してくれた。取り敢えず、これでやってみるしかないだろう。俺も、体力をつけないとな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る