第53話 強すぎる能力

「じゃあ、早速やってみせてくれ。そうだな……この枕を浮かせることってできるか? 」


 焔が琉生くんに、枕を渡す。不安そうな琉生くんに、焔が言う。


「取り敢えず、今の時点でどんな感じか見るだけだ。どうするか考えるためにも、な? 」

「分かりました。やってみます」


 琉生くんの言葉に、全員が少しだけ距離をとる。焔は、琉生くんの後ろにつく。


 琉生くんが、両手を枕に向けると、枕がふわっと空中に浮いた。できてるな、と思った時だった。他の枕まで浮き始めたのは。能力を使ったときに別の物まで動く、ってのはこれか。


「そのまま、集中しろ。他の物は見なくていい」

「はい」


 焔がそう言ったが、他の枕の動きは止まらない。むしろ、能力を使、高く浮き上がっている。能力ちからの向き、いや大きさの問題か? 原因が分かれば、どうにかできそうだけどな。


「よし、止めてくれ」


 琉生くんが能力を使うのを止めると、枕が全て落ちた。止めると、他の物も動かなくなるんだな。どうなってるんだろうか。原因……俺が、琉生くんの脳に干渉した状態でやれば、分かるんだろうか。


「疲れましたか? まだ、できますか? 」


 琉生くんに訊くと、不思議そうな表情をした。


「まだできますけど……」

「琉生くんが能力を使った時、能力がどうなってるのかを知りたいんです。それが分かれば、能力も制御できるようになると思うんです」


 琉生くんは首を傾げているが、他の5人は俺が何をしようとしているのか、分かったようだった。


「俺が琉生くんと、テレパシーを繋ぎます。そのまま、テレキネシスを使用してみてください。それで、何か分かるかもしれません」

「わ、分かりました」


 琉生くんに糸が繋がった。今回は脳の様子を見るだけだ、疲労もしないだろう。


「じゃあ、やってください」


 そう言い、目を閉じる。テレパシーに集中する為だ。


 琉生くんが能力を使ったとき、ずっしりと重いものが糸を圧迫してきた。抵抗されているわけではない。その重いものから、紐のようなものが出て、何処かに向かっている。多分、これが枕に向かっているんだろう。


 そう考えてる間に、重いものがすっと軽くなった。目を開けると、他の枕が浮き上がった所だった。どうなってるか、大体分かった気がする。


「止めていいですよ」


 そう言って、糸を切った。不安そうな琉生くんと、5人に言った。


「これは、制御できなくて当たり前ですよ。能力が大きすぎるんです。琉生くんが能力を使った時、余った力が漏れ出しています。それが原因でしょう」


 かなり大きな力だった。そこら辺の、後天性の能力者とは比べものにならない。俺らに匹敵するくらいの、能力者になると思う。


「ですが、使い方を変えればどうにかなると思います」


 その漏れ出る分を、どうにかすればいいんだ。色々と試すしかないけど、どうにかしたい。そう強く感じた。

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