第52話 テレキネシス
6人全員で話しかけても、怯えさせてしまうかと思い、彩予と影が琉生くんと話している。
「何の能力か分からないが、今は制御できてる気がすんだけどな」
今までのことは、あの書類に書かれてるみたいだが、まずは本人の口から聞きたい。
「ま、一静や彩予みたいな能力なら、使ってても分からないけどね」
「あの、能力云々もですが、夜はどうやって寝ます? 琉生くんを、1人にするわけにもいきませんし」
一緒に生活するんだもんな。政府から支給された物は色々あるけど、どうやって寝るか……。
「じゃあ、全員で寝ようよ。ベッドから、マットレスと毛布をテレポートさせて、3階で」
「それがいいな。あの3人にも、そう伝えるか」
まずは環境を整えないとな。それで、話も聞けたらいいんだが。
俺と彩予、一静、琉生くんが3階で待機する。何か話しかけたいが、苦手なんだよな、話題を作るのは。すると突然、布団が現れた。
「わっ……すごい」
目を輝かせる琉生くん。まぁ、あんな化け物級なテレポーターは、そうそういないからな。
「これが、しゅんしゅんのテレポートだよ」
「しゅんしゅん? 」
彩予が付けたあだ名に、首を傾げる。
「一条 瞬、茶色の髪の人ですよ。それで、俺は香月 奏です」
「奏さんも、能力者なんですか? 」
「えぇ。俺の能力はテレパシーです。此処にいる人は皆、能力者ですよ」
俺の言葉に安心したのか、口元を綻ばせる。能力者ってだけで、差別されることもあるからな。というか、政府は何と言って、彼を連れてきたんだろうか。まぁ、何でもいいけど。
そうしている間に、7人分の布団が敷かれ、瞬たちが戻ってきた。
「じゃあ、教えてくれますか? 琉生くんの能力のことを」
彼は、こくりと頷く。
「僕の能力は、テレキネシスです。えっと、2年前……4歳の時に使えるようになりました」
4歳か、かなり若いな。じゃあ、今は6歳なのか。これから能力も強くなっていくだろう。
「それで、能力を使うと、動かしたい物だけじゃなくて、別の物まで動いたり、寝ている時や、気持ちによっても能力が勝手に……」
なるほど。テレキネシスは、触れずに物を動かす能力。このまま、制御できずにいると、危険だ。気持ち、感情が高ぶった時も、というのが厄介だな。
「そうなんだね。じゃ、この中で能力を制御できてなかった時期があった人は? 」
不安そうな顔の琉生くんに、彩予が言った。彩予の言葉に、彩予、一静、そして焔が手を挙げた。
「結構いるんだねって、僕が言えないけど。だから、心配しなくても大丈夫だよ。上手く使えなかった人なんて、沢山いるんだからさ」
「彩予の言う通りだ。俺の能力はパイロキネシス、発火能力だ。だから昔は、騒ぎばっかり起こしてたんだ。でも、練習したらそれもなくなった。だからさ、気を楽にして一緒に練習しようぜ」
焔が笑って言うと、琉生くんも笑った。
「こればかりは、練習するしかないよ。一緒に頑張ろうな」
「はい! 」
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