第六章 能力の制御

第51話 変わった仕事

「しゅんしゅん! ちょ、起きて!! 」


 また、誰かさんの大きな声で、目が覚めた。今度は何だと思っていると、どすんと音がした。


「どうしたんですか」


 扉を開けると、彩予が尻餅をついていた。追い出されたのか。


「そーちゃん、おはよ。あのね、何か政府の人が此処に来るんだって。えっと、大広間に来て! 」


 政府の人が此処に? 不思議なこともあるもんだな。急いで着替えて、大広間に行くと、瞬以外の全員がいた。今日は一静の機嫌も悪くない。


「それで、政府の役人が来るっていうのは……」

「本当だ。これを見てみろ」


 焔が1枚の紙を見せてくれる。そこには確かに、政府の役人である、一条 きょうが次の仕事内容を伝えるために、此処に来ると書いてあった。


「一条、って」


 瞬と同じ苗字だ。身内、だろうか。


「そう、だから、しゅんしゅんにこうと思ったんだけど、テレポートで追い出されてさ……」


 それは訊きたくなるな。でも、瞬を起こすのは無理だ。起きてきてから、訊くしかないな。にしても、わざわざ来るなんてな。次の仕事は何だろうか。


「あー、京兄か。僕の兄……えっとね、僕らは3兄弟なんだけど。京兄が長男、翔兄が次男だよ」


 いつもの時間に起きてきた瞬が言った。一条兄弟の長男が政府の役人で、次男が探偵でって本当に凄いな。


「京さんって、この前言っていた、電気系の能力を持っているっていう? 」

「そうそう」


 なるほど、それで此処に来るのに躊躇ためらいも無いのか。紙には、今日の昼頃に来るとある。もう、急に何かあるのにも慣れてしまった。


 次の仕事は何だとか、色々と話している間に13時になった。彩予の予知通りなら、もう来るはずだ。大広間の扉をノックする音が聞こえ、焔が扉を開けた。


「初めまして、一条 京と申します。いつも瞬が、お世話になっています」


 そう言い、頭を下げるスーツ姿の男性。彼の隣には、小さな男の子がいる。


「それで、皆さんに頼みたいこと、というのは……彼です。彼、天沢あまさわ 琉生るいは後天性の能力者なのですが、能力の制御が上手くできていないのです。そこで、皆様の力をお借りしたいと思い、こうして来させていただきました」


 また新しいタイプの依頼だな。でも、能力の制御ができないのは、辛いだろう。


「分かりました。やれることはやってみましょう」


 焔がそう言うと、京さんは「ありがとうございます」と言い、書類を渡した。仕事の期間は、琉生くんが能力を制御できるようになるか、俺らが無理だと判断するまでだ。それまで、琉生くんは俺らと生活をすることになった。


「よろしくね、琉生くん」


 しゃがんだ彩予が言う。琉生くんは控えめに頭を下げた。さて、これからどうするか、だな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る