第47話 刑務所にて

 能力者専用に作られた刑務所、此処には大人も子供もいる。後々分けるらしいが、よく分からない。また、此処に入った人は、3つのグループに分けられる。危険度で分けているようで、A、B、Cと呼ばれている。僕は、1番危険度が低いとされている、Cグループだ。


 けじめをつけて、また兄さんに会うためだと自分に言い聞かせて、毎日労働をしている。たまにAやBグループの人とすれ違うんだけど、地味に怖い。同じ刑務所にいる以上、どうしてもすれ違うんだよね。


 話を戻そう。今日の労働は農作業だった。あと少し、いや明日には此処を出所するんだと、心の中で呟きながら作業を終わらせた。美術館で兄さんと出会えたから、こうして頑張れていて、生きる希望を持つことができているんだ。


 作業の後は、早めに自分の部屋に戻ることにしている。今日もそうしようと思ったが、ある言葉が耳に入り、足を止めた。


「あの……俺ら……に……くれると」


 この部屋は、この前の花火大会事件の犯人の部屋だ。上手く会話が聞こえなくて、壁に耳を当てる。


「計画が……から、変更するらしいぜ。……で、するんだと」


 此処を爆破する? それが本当なら、とんでもないことになる。ただ、此処の警備は厳重だ。爆破なんてできないだろう。


「あぁ、此処の警備……機械やが……それを、で……」


 此処の警備は、人よりも機械や電気を使ったものが多い。それを能力で…。此処を爆破しようとしている、と呼ばれている人が、を持っている、ということだろうか。それなら、爆破も可能だ。


 どうにかして止めたいが、僕にできることなんて。そう考えていると、また声が聞こえた。


「決行日は、の夜……だ」


 明後日……どう頑張っても、止めることはできない。いや待て、僕にはできなくても、できる人たちがいる。それに、僕は明日の昼には出所する。施設に着いたら、電話をかけよう。そう決めた僕は、聞いていたのがバレないように、その場から去った。


 次の日、僕は予定通りに出所することができた。待ってくれていた、施設の人に挨拶をして、車に乗る。僕が行く施設は、犯罪を犯した行き場のない子供がいる場所だ。20歳になるまでは、そこのお世話になる。ポケットに入れた紙を握りしめた。


「じゃあ、部屋まで案内するわね」

「あの、その前に電話をお借りしても良いですか? その、兄に連絡したくて……」


 施設の女性は快諾かいだくしてくれた。ポケットに入れていた紙を取り出し、番号を打ち込む。出てくれ、と願っていると、兄さんの声が聞こえた。急いで「伝えなきゃいけないことがある」と言うと、兄さんはスピーカーにした。


「上月 誠です。あの、それで……昨日、刑務所で花火大会事件の2人の会話を聞いて。明日の夜に、あの刑務所を爆破するそうなんです」


 電話の向こうから、ざわめきが聞こえた。息を整えて、続ける。


「爆破するのは、会話に何度も出てきたって人で、その人は電気系の能力を持っているみたいです。あそこは電気での警備が多いです。それを利用するのかと。どうにか止めてください。お願いします」


「初めまして、焔です。教えてくれてありがとな。助かった」

「誠、俺らに任せてください。連絡してくれて、ありがとう」


 兄さんの声を聞いて、安心した。そのまま電話を切って、新しい部屋に向かう。兄さんたちなら、止めてくれる。大丈夫だ。

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