第44話 実戦

 部屋での配置は、1番前に焔と影、その後ろに俺と一静、1番後ろに彩予と瞬だ。練習の通りに、焔と影が能力で戦い、その間に一静がサイコメトリーで犯人の記憶を見る。


 外は屋台や月の光で、夜だけど明るい。通り過ぎる人の影がくっきりと出ている。


「あと5分だよ! 」


 彩予の声に、空気が張る。今までとは違う戦い方……でも、きっと上手くいく。影が息を吐きだす。


「来る」


 今回も彩予の予知は正確だ。遠くから2人の人が歩いてくる。2人の男性らしき人が、明かりの下に来た瞬間、影が呟いた。


固定フィックス


 2人の影がぴたりと止まった。突然、動けなくなったことに、動揺する犯人。そりゃ、俺らの姿は向こうから見えないんだから、驚くよな。遠隔で能力を使える者なんて、ほとんどいないし。


 焔の炎が2人を囲む。


解除レリース


 急に動けるようになった2人は、地面に倒れこむ。その隙に、大きな黒い手が2人を押さえ込む。瞬の時よりも、シャドウキネシスの威力が増している気がする。


固定フィックス


 敵に能力を使わせる暇も与えずに、捕まえる。俺から見ても、凄い迫力だ。


「これで、取り敢えず終わりか」


 焔が言うと、瞬が携帯を取り出す。影はまだ集中している。黙ったままだった一静が、口を開いた。


「彩予さんの言った通り、2人には後ろにがついています。よく連絡を取っていました。ですが、そのの正体は分かりませんでした。多分、会ったことがないんだと思います」

「なるほど。後ろに誰かがついているのは、確かってことだな」


 焔の言葉に、一静は首を縦に振る。やっぱり、これだけで終わりってわけじゃないんだな。また、面倒なことになりそうだ。心の中で、ため息を吐いていると、遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。


 警察が2人を囲んだとき、黒い手がすっと消えた。


「はぁ……疲れたっす」

「お疲れさん。お手柄だったぞ」


 20分は能力を使いっぱなしだったもんな。くたばっている影が、にっこりと笑う。可愛い。


「これからどうなるか、なんてさっぱりだけどさ。今日は、もう休もうよ」


 瞬が言った。確かに、今は休んだほうがいいかもな。急いでも良いことないし。


「どうしたんですか? 」


 また暗い顔をしている彩予に聞いた。海での事件の時と、同じ表情をしている。


「え、いや、何でもないよ」


 ぎこちなく笑顔を作る彩予。何かおかしい。


「彩予、何か隠してますよね。もし何かあるなら、話してください」

「う、うん。そうだね」


 そう言った彼は、どこか遠く……多分、過去を見ながら口を開いた。


「……能力のせいで、辛い思いをしたこと、後悔したことってある? 」

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