第五章 後悔と未来

第41話 デジャヴ

 休暇も終わり、いつもの生活に戻った頃。朝から大広間に行くと、また大きな袋が置いてあった。俺を見つけた彩予が言う。


「おはよ、そーちゃん。問題です! これは何でしょうか! 」


 袋をかさかさと振りながら、にこにこと笑う彼。


「新しい仕事ですか」

「ピンポーン! 大正解」


 正解したくなかった。また仕事かよ。先に、書類に目を通していた焔が言う。


「全員が揃ってから、話はするけどな……」

「何か厄介な事件なんですか? 」


 難しい顔をしている焔に聞いた。まぁ、いつも厄介な事件なんだが。


「いや、事件自体は厄介じゃないんだが、犯人の動機がさっぱりでな」

「いつものことでは? 」

「そうだよな。考えすぎか」


 その後、朝食時間ギリギリに全員が揃い、焔が説明を始めた。今回の事件を簡単に言うと、こうだ。


 花火大会の会場で、花火が爆発する事件が連続して起きた。目撃者がいないことから、テレポーター。また、発火原因が分かっていないことから、パイロキネシストが絡んでいる可能性あり。それを調べてほしい、と。


「なるほどね。確かに、動機が分からないな」


 仕事の話で目覚めた瞬が言った。


「何か、別の事件を起こそうとしている、もしくは起こした、とかっすかね」

「あー、影の言うことも一理あるね。騒ぎを大きくして、を隠しているとか」


 いつも複雑な事件を追っているからか、色々と裏を探る癖がついたみたいだ。その方が、何かあった時に動きやすいから良いが。


「その、が分かれば……」


 そう言いかけた焔が、彩予に視線を送る。確かに、その手があるな。


「え、僕? えっと、取り敢えず、僕らが犯人らと遭遇したという前提でやってみるね」


 彩予のプレコグニションは、ただ予知するだけじゃなくて、こう動いたら、どう未来が変わるかという予知もできるらしい。最近、できるようになったとか。


 この前は、そのおかげで翔さんが刺されずに済んだ。でも、普通の使い方より疲れるとか。まぁ、だろうな。


「見えた。犯人らの目的は、僕らだよ。僕らのうち、誰か1人を誘拐しようとしてる」

「それで、俺らを弱体化させようってことっすね」

「そういうこと」


なるほど、それで派手な事件を起こしてた、と。初仕事の時と似てるな。え、じゃあ、その誘拐される1人って……。


「あの、誰を狙ってくるかとか、分かりますか? 」


 もの凄く嫌な予感がして、彩予に聞く。


「これは、そーちゃんだね」


 嫌な予感が当たってしまった。これが、デジャヴというやつか。もう狙われるのは、嫌なんだが。でも、どうにかするしかないよな。

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