第39話 事件の真相

 一静の言葉に、彩予以外は凍り付いた。ということは、あの3人は麻薬の売人で、愛衣さんが彼らから麻薬を買ったことになる。これは、警察を呼ぶべきなのでは。翔さんにテレパシーを繋ぐ。


『翔さん、奏です。警察、呼びますか? 』

『あぁ、これ、奏くんの能力か。いや、麻薬を所持しているという確認が取れてからだ。準備はしていてもらえるかな』

『分かりました』


 さて、どうやって確認を取るかだ。大人しく出してくれるだろうか。翔さんが、四角いかごを出して言う。


「ポケットの中身を全て、これに出してください。従わなければ、警察を呼びます」


 言われた通り、携帯で通報できるように用意をしておく。どちらにしろ、通報はするだろう。


 愛衣さんが、ポケットに手を入れる。素直に出すかと思った時だった。翔さんの脇腹を狙って、ナイフを勢いよく出してきたのは。翔さんも反応できていない。刺されると思った瞬間、パキッという音がした。折れたナイフが、翔さんの足元に落ちる。


「もう、無駄な抵抗はしない方がいいっすよ」


 黒い、かげの壁が翔さんを守っていた。影の能力か。ナイフが折れたことに衝撃を受けたのか、抵抗は無駄だと思ったのか、愛衣さんは白い粉の入った袋を出した。それを確認して、携帯を耳にあてる。


「もしもし、警察ですか。麻薬の売人と所持者を発見しました。場所は……」


 これで、もう大丈夫か。通報した後、愛衣さんは真相を話し始めた。


「その黒い髪の子が言った通りよ。私は彼らから麻薬を買った。でも、私が使うためじゃないの。私が別の人に売るためよ。湊の前でいなくなったのは、私が被害者になる為」


 あぁ、それで彼女の持ち物は、ブランド物ばかりだったのか。違法な薬物は、高い値段で買われることが多いと聞く。


 数分後、警察が来て4人は捕まった。まさか、失踪事件がこんな事件につながるとはな。思ってもなかった。


「今回は手伝っていただき、ありがとうございました。影くんには、俺の命まで守ってもらって……本当に、ありがとうございました」


 翔さんが深く頭を下げる。


「ま、僕らは報酬が貰えるんなら、割と何でもするって」

「良いんすよ。むしろ、俺の能力が役に立ってよかったっす」


 瞬と影がそう言った。休暇が休暇じゃなくなったけど、まぁいいか。解決できたんだし。

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