第38話 食い違い

 いつもなら、犯人を捕まえて終わりだが今回は違う。男性3人と女性から話を聞かないといけない。それで、警察を呼ぶかどうか決めるらしい。いつもとは違うから、新鮮な感じがする。


「では、あの日どうして愛衣さんを誘拐したのか、話してもらいましょうか」


 まずは男性3人から話を聞く。愛衣さんは、保管室で待機している。男性3人は、俺らに怯え切っているようで、すぐに口を開いた。


「誘拐じゃないです。あの日、あの女から連絡をしてきたんです」


 どうやら、一条兄弟の推測は当たっていたようだ。


「だから、いつもの場所に連れて行ったんです。あいつが、男といるなんて知らなかったし、被害者みたいにしやがって」

「つまり、貴方たちは愛衣さんを誘拐したわけではないと。本当ですね? 」


 男性らは、首を縦に振る。この状況で、彼らが嘘を吐くとは思えない。でもまぁ、愛衣さんからも話を聞いてからだな。


「分かりました。では、そこで待っていてください。逃げたら、警察を呼びますから」


 そう言い、翔さんは部屋を出る。彼について行こうとすると、彩予がどこか別の所を見ているのに気が付いた。


「彩予、どうかしましたか? 」

「いや……」


 いつもの彼らしくない。顔色も悪い。何か見たんだろうか。黙ったまま、保管室へ向かう。


「では、あの日何があったのか教えてください」


 翔さんが、愛衣さんに聞く。彩予の様子は、まだおかしいままだ。それに、一静も能力を使っているようだ。2人には、この事件の裏が見えているんだろうか。


「あの日、私が1人でいると、あの3人が話しかけてきて、あ、彼らとは友人なんです。それで、ついて行ったら車に乗せられて。それで……」

「じゃあ、貴方は誘拐されたんですね? 」


 彼女は、こくりと頷く。話が違うな。普通は被害者の方を信用するが、あの3人が嘘を吐いているようには、どうしても見えない。翔さんが、何か言おうとしたとき、彩予が言った。


「なら、どうして使わなかったんですか? そのポケットに入っているナイフを」

「何の、ことですか」


 愛衣さんが言う。しかし、彼女は青ざめていた。


「貴方は誘拐されたんじゃない。彼らから、に呼んだんですよね? 湊さんがいる時に連れ去られることで、被害者になろうと考えたんでしょう」

「何を言ってるんですか? 私があいつらから何を貰ったって言うんです? 」


 一静の言葉に、必死に反論する彼女。一静は、冷静に言う。


「ポケットに入っているんでしょう? 白い粉……麻薬が」

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