第30話 能力の使い方
その後、颯太はきちんと保護され、能力の暴走による悪影響がないか検査することになった。新がこれからどうなるのか、あの事件がどうなるのかは分からない。結局、最後は政府や警察の仕事だ。俺らは犯人を捕まえて終わり。それ以上は、何もできない。
「おっ、奏もいたんだ」
あんな夢というか、記憶を見た後で寝られるはずもなく、大広間でお茶を飲んでいると、瞬が来た。
「えぇ、まぁ。寝たくなくて」
「奏は、あいつの記憶を見たんだったね。そりゃ、寝たくないわな」
寝たくないけど、朝まで起きていたくもない。我ながら面倒だな。
「瞬って……」
声を出して、ふと止める。これは聞いてもいいことなんだろうか。人と関わってこなかったせいで、どこまで踏み込んでいいのか分からない。
「ん? どうした? 」
「言いたくなかったら、言わなくてもいいんですけど」
取り敢えず、先にそう言っておく。保険、みたいなものだ。
「能力について詳しいんですか? 」
「何で? 」
「いや、新と話した時に、能力の暴走も彼が起こしたって言ってたので。俺はそこまで頭が回らなかったというか、分からなかったですし、詳しいのかなと」
まぁ、俺が無知なだけかもしれないけど。何となく、そう思った。瞬は謎が多いし。
「別に、能力について詳しいわけじゃないさ。昔の知り合いに、似た能力者がいてな。だから、精神操作系は制限や条件が多いことを知ってたんだ。暴走については、正直に言うと賭けだった」
「賭け、ですか」
「あいつは、幼い頃に能力を得た。だから、そういうこともできるんじゃないかって」
「なるほど」
精神に干渉する能力は強力な分、条件が多いのか。でも、大きく考えると、テレパシーも精神に関わる能力なんだよな。実際、今回はそういう使い方をしたわけだ。
「何で、能力者が生まれたんでしょう」
そのせいで、事件を起こす者もいるし、巻き込まれる者もいる。また、能力者を利用する者もいるわけだ。別に、悪い面しかないわけではない。でも、こんなことがあるなら、いっそ……。
「さぁね。神様のいたずらかな」
「そうとしか言えませんよね」
能力についての研究は、まだ進んでいないんだ。分かるはずもない。
「能力の使い方が分かってない奴、悪用する奴は多いよね。だからこそ、僕ら……先天性の能力者くらいは、正しく使うべきなのかなって思うよ」
瞬さんの黒い瞳が、姿を見せた。鋭くも、優しい目だ。
「そうですね」
そうすれば、少しは何か変わるんだろうか。俺がテレパスである理由も、いつか分かるんだろうか。
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