第29話 新との会話

 携帯を机に置き、電話に出る。電話越しとはいえ、今回の黒幕と話すんだ。颯太と俺、瞬、彩予、影が机に集まる。一静は何か情報が出た時の為に、会話を録音してくれている。


「もしもし」

『もしもし、今日は帰ってくるのが遅いね。何かあったの? 』


 声から察するに、年齢は俺らと変わらないのか? まぁ、声だけでは分からないが。優しい口調が、今は余計に怖い。


「ううん、何もないよ。大丈夫」

『もう分かってるよ。バレたんだな。どうせ、他の人も聞いてるんだろ』


 颯太が怖がっているのが伝わってきて、肩に手を置く。テレパシーで『大丈夫ですよ』と伝える。正直、俺も結構怖い。影が焔に呼ばれた。どうやら政府の方も動いているらしい。


『そこに、俺の記憶を勝手に見た奴がいるんだろ? 』

「勝手に見たのではなく、颯太くんの中にあった、貴方の記憶が見えただけですが」


 俺だって、見たくて見たわけじゃないんだよ。バーカ。


『じゃ、お前が? この前まで、金がかけられてたっていう』

「さぁな。で、お前の復讐は終わったのか? 」


 瞬が返事をした。できれば、あまり煽らないでほしいんだが。少し心配になっている中、炎が上がった。「時間を稼いでくれ」という文字になっている。器用なことをするな……。


『まだだ。あの事件に関わった奴が、まだいるんだよ』

「じゃあ、ちゃんと人を選んで、襲っていたんだな。でも、お前の能力なら、こんな面倒なことをしなくても、よかったんじゃないか? 」


 どうやら、煽らないでくれという願いは届いていないらしい。瞬のメンタルはどうなってんだか。でも、聞き方は上手いな。情報が聞き出せるかもしれない。


「でも、お前は他人を利用した。それは何故か。お前の能力には制限があるからだ。精神操作系の能力は、制限が多いんだよな」


 新は黙ったまま、何も答えない。瞬は、更に新を追い込んでいく。


「黙ってるってことは、図星か? でもまぁ、能力者ののは、すごいと思うぜ。あれもお前の仕業だろ? 」

『もう、全部知ってるんだな』


 瞬はそこまで分かっていたのか。謎が多い人だとは思っていたが、想像以上だ。颯太の能力が暴走したのも、新の仕業だったとは。だから、颯太は俺に助けを求めたのか。焔の炎が形を変えた。「突入準備完了」


「俺は、お前みたいな奴が大嫌いなんだよ。だから、とっととくたばれ」


 その言葉と同時に、電話の向こうから、凄い音がした。政府が突入したんだな。俺らは上手く時間を稼げたってわけか。主に瞬がだけど。


 最近、能力者専用の刑務所が作られたらしい。あとは、あっちの仕事だ。そこに、誠もいるんだろうか。


「はぁ、これでようやく終わりか……」


 今回は本当に疲れた。大変だった。そろそろ、休みがほしいんだが。

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