第12話 不審者

 そして、初仕事1日目。初めて外への入口が開いた日でもある。外に出られる代わりに、GPS機能の付いたバッジを1人1つ付けることに。別に逃げやしないってのに。


 警備の開始時間は、閉館時間の1時間前である17時。俺と一静は管理室にいる。勿論、一静以外の4人とはテレパシーを繋いでいる。


「何時に犯人が来るか分からないのが、辛いですね」


 防犯カメラの映像を眺めつつ、一静が言った。返事をしようとした時、テレパシーが送られてきた。


『そーちゃん、犯人が来るのは20時30分だよ』

『了解です。ありがとうございます』


 流石は彩予だ。こういう時の予知は有難い。


『彩予から連絡です。犯人が来る時間は20時30分。一応、見回りは続けてください』


「どうしましたか? 」


 一静が黙り込んだ俺に尋ねる。彩予の予知を伝えると、「分かりました」と答えた。今回、一静とは一緒に行動するから、テレパシーは繋いでいない。お互いの負担を減らすためだ。


「あ、奏さん。この人……」


 右から4つ目の映像を指差して言った。白い服の男性が、入口をきょろきょろと見たり、出入りを繰り返している。


「西口にいるみたいですね」


 此処は無駄に広いんだよ。


『西口にて不審な人物発見。近くの人は行ってください』

『近くはないけど、僕が行くよ』

『瞬が行くそうです』


 そう送った直後、左から2つ目の映像に映っていた瞬が消え、西口に移動したのが見えた。


 瞬の能力、テレポートは見える範囲の場所は勿論、距離に関係なく、瞬が見た事のある場所、行ったことのある場所に移動できるらしい。逆に言うと、見たこと行ったことのない場所には移動できない。


 瞬が白い服の男に声をかけると、男は慌てて逃げ出した。やっぱり怪しいな。


「逃がしましたか」


 一静が呟いた瞬間、どこからか服のボタンが飛んできて俺の頭に当たった。なんだこれは。


『奏、そっちに不審者の服に付いていたボタンを送った』


 なるほど、ボタンだけテレポートさせたのか。


『俺の頭に当たったんですけど。一静に見てもらいますね』


 そんな器用な事が出来るなら、もっと丁寧に送ってくれ。失くすところだったぞ。


「一静。これ、さっきの男の物らしいです。見てください」

「分かりました」


 ボタンを手渡すと、それを凝視し始める一静。彼には何が見えているのだろうか。防犯カメラの映像を見ていると、彼が言った。


「こいつ……後天性の能力者ですよ」

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