第二章 初仕事
第11話 作戦会議
初仕事まで残り2日。だというのに、まだ仕事内容は明かされていない。このままだと、俺らもボイコットするぞ。
「初仕事の内容って、いつになったら分かるんだろう」
オレンジジュースを飲みつつ、瞬が言った。ここでは、年齢などに関係なく自由に名前を呼んだり、タメ口で話してもいいというルールになった。勿論、これを決めたのは彩予だ。敬称を付けなくていいのは有難い。
なんて考えていると、天井からスクリーンが下りてきた。またこれかよ。仕事内容についての説明と書かれたスクリーンに、全員が集まる。前回と同様、お偉いさんが、映像に出てきて言った。
「今回任せる仕事は、そこからバスで20分程行ったところにある、国立美術館の警備だ。数日前から、不審者が閉館後に侵入する事件が起きている。幸い、被害は出てないが、被害が出る前に犯人を捕まえてほしい」
それって、警察の仕事では? と言いたいのを飲み込んで、聞く。
「詳しい事情は、玄関のポストに入っている冊子を読んでもらいたい」
と言い残し、スクリーンが天井に戻っていった。どれだけ俺らと接触したくないんだよ。
「冊子って、もしかしなくてもこれ? 」
彩予がひらひらと冊子を振って言う。仕事が早いな。数十枚の紙に書かれていることを、纏めるとこうだ。
3日前から閉館後に、黒い服を着た男性2名が館内に侵入している。しかし、何かが持ち出されたり……なんてことは無く、絵の位置が変えられたりしているだけだと。大きな被害が出る前に、犯人も確保してほしいというのが、今回の仕事。
「2日も仕事の期間があるんだな」
「一応、猶予を与えてくれているのかもね」
大きなお世話だっての。
「侵入方法は不明……か」
瞬が呟いた。1度侵入された次の日に、防犯カメラを作動させたままにしたら、2人の姿が映っていたらしい。
「片方が能力者の可能性もあるな」
焔が瞬の呟きに反応した。確かに、鍵がかかっていても瞬のような、瞬間移動の能力を持っていたら侵入可能だ。
「防犯カメラが使えるなら、管理室に居てもいいですか? 奏さんと一緒に」
「一静は機械系に強いですし、それなら俺も指示が出しやすいですね」
「良いぞ。他は、東西南北に分かれて見張るか」
6人もいたら、話がとんとんと決まっていくな。
「もし、犯人と遭遇したらどうするっすか? 」
「まず奏に伝えて、瞬に来てもらう、がベストだな」
「もしも、状況が不利で確保出来そうになかったら、犯人の身につけている物を盗って、一静に見てもらうのもありですよ」
一静の能力はサイコメトリー。犯人の顔、名前、住んでいる場所が分かるだろう。
「取り敢えず、残りの2日で訓練をしておこうか」
色々なパターンを出し合って訓練をしておくことで、仕事を早く終わらせることが出来る。瞬の言葉に賛同し、話し合いはどんどんと進んでいった。
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