第10話 遅れた理由

 彩予の声に全員が反応した。瞬、一条 瞬か。視線を向けられた彩予は言った。


「あ、瞬さん、スピーカーにして皆にも聞かせますね」


 机にスマホを置くと、俺を含む4人が集まって耳を傾ける。


『皆……そっか、僕以外は集まってるんだね。初めまして、一条いちじょう しゅんです』


 疲れきった声で言う瞬さん。一体何があったんだ。


『遅くなってしまい、申し訳ありません。僕自身、今何処にいるのか分かりません。でも、遅くなったのにはちゃんと理由があって。詳しくは、そっちに着いてから話すけど、何かの組織に襲撃されてね』


組織に襲撃……そんなことが。


『そいつらを、くたばらせてたら時間がかかりすぎてしまいました。政府に連絡したら、迎えをよこしてくれるみたいだから、今からそっちに行きます。血や埃で汚れてるから、シャワーを浴びてからになるかな。もう少し待っててください』


 敬語とタメ口が混ざっている。相当疲れているようだ。そのまま、ぷつりと電話が切れた。直前に車の音がしていたから、本当に今から来るのだろう。


「名前が知られるって、かなり危険なことなんだな」


 焔が言った。でも、俺らはそういう世界に飛び込もうとしているんだよな。1人で組織を潰したから、こんなに時間がかかったのか。どのくらいの時間、戦い続けていたんだろう。


「瞬さん、昔は荒れてたらしいからね。その時の敵か仲間が名前を広めたのかも」

「でも、無事で良かったっす」


 影の言う通りだな。これで6人揃うんだ、安心しても良いだろう。


 瞬さんが到着したのは、電話があってから5時間後だった。


 シャワーを浴びてきたらしく、髪がしっとりとしていた。目を開けているのかどうか分からない、糸目と呼ばれる瞳に、茶髪。それも毛先が橙色だ。まぁ、目立つな。


「改めまして、一条 瞬です。遅くなってしまい、申し訳ありませんでした」


 そう言い、深く頭を下げる。


「僕の家はここよりも遠くて、呼び出しの手紙が届くのも1日遅い程でした。2日で荷物をまとめ、取り敢えず駅の方まで出ようと、能力を使いました。僕の能力は、テレポートなので」


「しかし、駅で昔の荒れていた頃の知り合いに会い、その人の率いていた組織と戦う羽目になってしまいました」


 1度お茶を飲み、続けて言った。


「敵の数は20人程と、さほど多くなかったのですが、その中に後天性の能力者が2名いて、手こずってしまいました。確か、3日程は彼らのアジトで戦っていたと思います。さすがに体力が持たず、連絡する前に寝落ちてしまい、今に至ります」


 後天性の能力者……本当にいるんだな。どのくらいの強さなのかとか、色々と聞きたいけど今日はゆっくりしてもらおう。


「無事でいてくださっただけで、嬉しいです。俺はここのリーダー、九重 焔です。これから、よろしくお願いします」


 焔の言葉に安心したのか、瞬さんは口元を綻ばせた。

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