第8話 初仕事の準備

 彩予が言っていた通り、あれから1週間経っても6人目……瞬さんが来ることは無かった。


「そろそろ、政府の方が何かしそうだけどな」


 焔がぼんやりと言った。ここまで来ないとはな。ただ、瞬さんも先天性の能力者の1人だ。このまま放っておくってことにはならないだろう。


「本当、何がどうなってんすかね……」


 影が呟いた時、大広間の天井からスクリーンが下りてきた。何だ何だと全員が集まってくると、スクリーンに映像が流れ始めた。


 映像では政府の役人だろう人物が、能力者を集めた理由や目的をつらつらと並べている。まぁ、全部彩予が言った事と同じだから聞き流しておこう。


「また、一条 瞬の足取りは我々も追っているが、未だ見つけられていない」


 飴を食べていると、そんな声が聞こえたので視線を向ける。その捜査は俺らがした方が早いのでは、と思ったが黙っておこう。本当に何が起きているんだ。


「君らには、5日後に初仕事をしてもらおうと思っている。それまでに準備をしていてほしい」


 そう言って映像は消え、スクリーンも天井に戻っていく。5日後って急すぎないか。


「準備って何をすればいいんすかね」

「ってか、初仕事の内容くらい教えろよ」


 ぶつぶつ言う九重コンビ。初仕事の準備か、確かに何をすればいいのか。


「準備……そうだ、それぞれの能力の実験をしてみるのは? 」

「実験? 」

「そう。例えば、そーちゃんならテレパシーで何人と話せるのか、どこまで離れても大丈夫なのかとか! 」


 確かに、それはいいかもしれない。俺自身、あまり能力を使ってこなかったしな。気味悪がられるだけだったし。


「それはいいな。こうなったら、どんな仕事でも受けてやる」


 焔が言うと、他の人も賛成する。


「じゃ、早速……と言いたいんだけどさ」


何だ? まだ何かあるのか? 彩予が、目をキラキラと輝かせて言った。


「まずは、組織のことから決めていこう! 誰をリーダーにするとかさ」

「リーダーというか、誰がまとめるか決めておいた方が良いですね」


 一静も賛同する。実験をする時、仕事での指示、実戦になった時の指示を出す人はいた方がいいな。


 でも、かなり面倒そうだ。できればやりたくない。よし、こういうのは先手必勝だ。


「俺は焔が良いと思います」

「いや何でだよ」

「焔は1番しっかりしてて、まとめる力もあると思うからですよ。あと、俺はやりたくないんで」

「後半が本音だろうが! 」


 バレたか。でもそれ以上は反論してこない焔。これは勝ったか? そう考えていると、焔がにやりと笑った。


「奏が副リーダーをするってんなら、やってもいいぜ」

「いや、副リーダーとか言ってませんでしたよね」

「でもこういうのは、補佐役がいるもんだろ? それに奏の能力は指示を出すのに不可欠だ」


 言い返せずに黙っていると、彩予が言った。


「じゃあ、リーダーは焔っち、副リーダーがそーちゃんってことで」


 他にやりたい人もいないようで、あっさりと決まってしまった。くそっ。面倒だが、やるしかないな。

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