第7話 高まる不安

「彩予は6人目の能力者のことを、知ってるんですか? 」


 さっきの呟きといい、何か知っているようだから聞いてみる。俺は最近まで、他にも能力者がいるということを知らなかった。


「んー、知ってるといえば知ってるし、知らないといえば知らないかな」

「どっちなんですか」


 彩予がはっきり言わないのは珍しいな。本当は実在しないとか? まぁ、ありえなくもない。


「6人目の能力者こと、一条いちじょう しゅんさんは、バイト先の先輩だったんだよね」

「なら、知ってるんじゃないですか」

「それが、瞬先輩って神出鬼没な人で、謎も多くてね。結局、何の能力者か分からないまま、バイトも辞めちゃって」


 困ったように彩予が笑う。神出鬼没で謎が多い人……一気に不安になってきたんだが。この先、本当に上手くやっていけるのか。


「一条 瞬……何処かで聞いたことがある」


 ぽつりと一静が呟いた。それと同時に、持っていたノートパソコンを軽快に操作し始める。軽い指使いにキーボードの音。見ていても聞いていても、気持ちがいい。


「ありました」


 見せてくれたのは、何かの掲示板。そこには、一条 瞬という人について色々な事が書かれていた。ほとんどは、証拠も何も無いデタラメなものだ。


「まぁ、実は裏社会にある組織のリーダーだとか、本当は存在しない人だとかですが」


 淡々と一静が言うと、彩予はケラケラと笑い始めた。


「そんなわけないでしょ。謎が多いのは事実だけど、悪い人ではないよ」


 こういうのは、面白く書いたものや、何かの話をきっかけに背びれや尾ひれが付いたものが多い。信用は出来ないな。でも、そんな話が書かれるような人と一緒に活動するのか……いや、深く考えないで来るのを待とう。


「そうだ、彩予の能力でいつ来るか、分かったりしないんですか? 」

「僕もそう思って、見てみたんだけど何故か1週間経っても来ないんだよね。最初に見た時は、1週間で全員が揃うはずだったんだけど」

「え? 」


 未来は常に変わるとは言っていたが、これはいくらなんでも、変わりすぎでは? 本当にちゃんと揃うのだろうか。

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