第5話 寝れない夜

 あの紙に書いてあった通り、19時に夕食が運ばれてきた。重いのかよく分からない空気の中、食事を済ませて入浴も終わらせた。入浴というか、シャワーを浴びた。


 そんなこんなで気づけば、もう消灯時間を過ぎていた。本当に23時になると、電気が一瞬で消えるんだな。ブレーカーが落ちたのかと思った。


「それにしても……寝れないな」


 時計の針は既に12を通り越している。スマホのライトで部屋を照らす。そういや、ベランダがあったよな。少し夜風に当たるか。


 ベランダに出ると、当たるほどの風は吹いていなかったが、何となく落ち着いた。ポケットに入れておいた飴を口に入れる。棒のついたやつ。昔からよく食べてて、もう癖になっている。


「あれ、誰かいるのか? 」


 隣の部屋から声がした。それと同時に火の玉が浮かび上がる。なんだ、焔か。


「あぁ、奏か。悪い、驚かせたな」

「いいえ、すぐに焔だと分かりましたから」


 あはは、と笑い声が聞こえてきた。明かりがない今、焔の能力って結構便利だよな。


「奏も寝れないのか? 」

「えぇ。環境が変わると寝れなくなるんですよ」


 学校の修学旅行でも寝れずに苦労するタイプだった。それに、変わった環境もこんなだし。


「ま、そういう人もいるよな。俺も色々考えて寝れなくてさ」


 彩予からあんなこと聞いたばっかだしな。すると、「あぁ、そうだ」と焔が言った。


「明日、此処で言う5人目の能力者が来るぞ。さっき連絡があってな」

「お知り合いなんですか? 」

「知り合いっていうか、俺の従兄弟だ。九重 えいって言うんだけど」


 従兄弟ってことは、九重家から2人も先天性の能力者が出たってことだ。凄いな。


「可愛いやつだから、仲良くしてやってくれ」

「えぇ、まぁ……」


 「じゃ、おやすみ」とだけ残して、焔は部屋に戻っていった。可愛い従兄弟…多分、年下なんだろう。そんな人が此処に来るんだ。不安にもなるよな。


 さて、俺も歯を磨いて寝るか。明日、また能力者が増えるみたいだし。焔の従兄弟って、どんな人でどんな能力を持ってるんだろうか。

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