第1話 小林太一という男
僕、小林太一は、よくラノベにいるような平凡で孤独を愛するぼっちで、意外とその長い髪をセットしたらイケメンで、めちゃくちゃかわいい幼なじみがいて、学校のマドンナからもなぜか話しかけられるような結局モテてしまう非凡人ラブコメ男子高校生ではない。
また、毎朝起こしてくれる妹も、毒舌を吐いてくる妹も、僕を溺愛してくれる姉も、僕をパシリに使ってくれる姉も、再婚してお母さんになった美人な義母もいない。
スポーツ万能の兄が1人いて、美味そうなチャーハンを作りそうないわゆる「おかあちゃん」的なお母さんと勤勉な公務員のお父さんがいる、事件など起きない普通の家庭である。
もちろんスポーツ万能の兄だからといって、僕が嫉妬したり、兄を恨んでるなんてことはない。
仲はいいし、尊敬すらしている。僕はできた人間である。
1つ僕の特徴を挙げるなら、ぽっちゃりである。160cm、70Kgの小太りぽっちゃりまんまる体型である。
そして僕はこの体型になにか思うことはない。むしろ気に入っている。もちろんイケメンになってみたかったが、まんまるはまんまるなりに自由な生き方があるのだ。
さらに僕は話すのが苦手ではない。
ちゃんと喋れる。女の子と話す時は緊張するが、それを隠して喋れる。緊張はするがね!緊張しないのはイケメンかヤリチンだけよ!
確かに僕はクラスのかわいい女の子たちや他のクラスの女の子たちからも話しかけられる。
しかし、それは僕がいじられキャラであることとイケメンの友達たちがいるからである。
ここまで言うと
「お前、それだけで幸せだろうが!陽キャだ!裏切りだ!お前なんか仲間じゃない!」
とたくさんのモテない男たちにツッコまれることだろう。
もちろん、美少女たちに話しかけられるのはとてもとてもとてもとても嬉しい。
だがな聞いてくれ。イケメンでもない僕たちが、美少女に話しかけたと妄想してみろ。
ほらな、絶対一瞬で惚れるだろ?
惚れてしまったそこの君、僕たちは仲間だ。
もちろん僕も惚れた。だってさ、だってめちゃくちゃかわいいじゃん!
話しかけてくれるのは僕のことが好きだからなのでは?と考えたことは無数にある。
しかし、みんな口を揃えて言うよ。
「私、太一くんの友達が好きなの!相談乗ってくれないかな?」
って。言っとくぞ。言っとくけど、全部、両手を合わせて、上目遣いで、首を「こてんっ」って傾げながら言われたんだぞ。
めちゃくちゃかわいかった。
めちゃくちゃかわいかったけども、これをいろんな女の子から何度も続けられたらな、僕だって気づくよ。
ああ、僕ってただのいじられる友達ポジションでしかないんだな。
彼女なんてつくれないんだな。
恋愛対象になんて入らないんだな。って。
まんまるなのは人気者になれたし別によかったけど、ここだけ、彼女だけ、本当にモテないところだけ、男として最大の悩みだけが残ってしまった。
ラブコメの主人公って一体どうやって、なにがあって、どうして、どんな裏技を使って、めちゃくちゃモテてるんだろうなぁ〜ふざけんな羨ましすぎる!と考えてしまう今日この頃の僕である。
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