第248話 ティンコ・ツンツン!

 奴隷狩りをしていた男はサンドスコーピオンに局部を刺され、腫れ上がり、猛烈なかゆみに襲われた。


 黒丸とルーナは、腹を抱えて笑い転げる。


「ムフフフフ! かゆいであるか? かゆいであるか?」


「おもしろい! チンコカイカイ!」


 黒丸はオリハルコンの大剣の先で、ルーナは魔法の杖の先で、腫れ上がった局部をツンツンし始めた。


 奴隷狩り男は、かゆみがヒドイのだろう。

 ツンツンされるたびに、『ヒー!』とか『アー!』とか、悲鳴を上げている。


 あくまでも悲鳴である。

 喜んでいる訳ではない。


 ブンゴ隊長が、顔を引きつらせながら、本来の目的を叫んだ。


「二人とも笑いすぎッス! ちゃんと尋問をして欲しいッス!」


「おお! そうである!」


「うむ。仕事は、ちゃんとする。ツンツン!」


 黒丸とルーナは、すっかり本来の目的――『情報の入手』を忘れてしまっていた。

 ヒドイ話である。


 横で見ていたサーベルタイガーテイマーのイネスは、考えさせられてしまった。


 長生きとは……。

 長命種とは……。


 イネスの煩悶をよそに、黒丸とルーナは尋問を開始した。


 まだ、サンドスコーピオンに刺されていない男の方に、肉の塊を持った黒丸が近づく。


「どうであるか? 素直に話さないと、あの男のように大変な目にあうのである」


「よっ……よせ!」


「なら、話すのである。奴隷狩りの目的は、何であるか? オマエたちは、どこかの組織に属しているのであるか?」


「……」


「しゃべらないのであるな? 残念であるなあ~。では、サソリ固めの刑であるなあ~」


 黒丸は、手にした魔物肉の塊から、肉をナイフでこそぎ落とした。

 尋問される男の周りに肉が散らばる。

 男は黒丸に、大声で怒鳴った。


「よせ! やめろよ!」


「話す気になったであるか?」


「……」


「ああ。残念であるなあ。ルーナ!」


「おう! 黒丸!」


 ルーナは、サンドスコーピオンを杖の先で押しやった。

 サンドスコーピオンが押しやられた先には、黒丸がこそぎ落とした肉がある。

 サンドスコーピオンは、落ちている肉をせっせとついばみ始めた。


 そして――ブラブラするモノを見つけ、尻尾の毒針を刺した。


「ギャアーーーーーー!」


 一刺しである!

 激しい痛みと息苦しさが男を襲い、ついで猛烈なかゆみが局部を中心に広がった。


「ああ! かゆい! かゆい! 助けてくれ! かゆい!」


「気の毒であるな。サンドスコーピオンに腫れたチンチンが、かじられなければ良いのである」


 黒丸は、最初の男に戻った。


「ルーナ。この男に、キュアを頼むのである」


「キュア!」


 ルーナが解毒可能な魔法『キュア』をかけると、サンドスコーピオンの毒が解毒され、男の局部から腫れがひき、かゆみが止まった。


「どうであるか? かゆくて苦しかったであるか?


「覚えてろ!」


「それがし記憶力には、自信がないのである!」


「威張ることじゃないのだろう!」


「そうであるな。それで、話す気になったであるか? 誰の指示で奴隷狩りをしたのであるか? アジトは、どこであるか?」


「地獄へ落ちろ!」


「ルーナ! もう、一刺しいくのである!」


「おう!」


 今度はルーナがせっせと肉を削り落とし、サンドスコーピオンをけしかけた。

 こういうことには、働き者である。


 サンドスコーピオンは、同じように肉をついばみ、やがてブラブラとしている男の局部に一刺し。


「がああああああ! あっ! あーーー!」

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