カラスとスズメ
一白
カラスとスズメ
秋のことです。
山は赤や黄色に色づき、きのこや野菜など、美味しい食べものがあちらこちらで実っています。
田んぼでは、カラスとスズメが仲良く並んで、お米を啄んでいました。
「沢山あるから、半分こしようね」
二羽はお互いにそう約束して、地面に散らばるお米を啄んでいきます。
そのうち、スズメは体が小さいものですから、お腹がいっぱいになり、眠くなってきました。
「カラスさん、私は少し食休みするね」
「分かった。ゆっくり休んでいなよ」
そうしてスズメが寝ている間に、カラスはすっかりお米を食べ尽くしてしまいました。
「あっ、そうだ、半分こって約束してたんだ!」
カラスは食べ終わってからようやく、スズメとの約束を思い出しましたが、もう田んぼにはお米は一粒も残っていません。
困ったカラスは、スズメにお詫びするために、他の場所でお米を探すことにしました。
山を探し、森を探し、川を探しましたが、お米は見つかりません。
「どうしよう。きっともうすぐ、あの子が起きてしまうよ」
いよいよ困り果てたカラスは、人間の家のすぐそばまで探しにいくことにしました。
そうして、道路にほんの少し、お米が零れているのに気がつきました。
「良かった。このお米をたどった先に、きっともっと沢山あるぞ」
カラスはてこてこ歩いていこうとしましたが、袋が邪魔をしています。
仕方がないので嘴でつついて、袋をどけようとしたら、家の中から人間が飛び出してきました。
「このカラスめ!ゴミ捨て場を荒らすなんて、酷い奴だ!」
カラスは人間から箒で打たれ、よろよろとその場から逃げ出すしかありませんでした。
お米は見つからなかったけれど、カラスはスズメに謝らなくてはなりません。
田んぼに戻る途中で何度も転び、カラスの体は真っ黒け。
やっとこさ辿り着いた田んぼには、スズメの姿はありませんでした。
きっとスズメは、カラスが約束を破ったことに気づいて怒り、飛び去ってしまったのです。
そう思うと、カラスは悲しくて悲しくて、夕焼けの中、カアカアと声を上げてなきました。
カラスとスズメ 一白 @ninomae99
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