ユラの状態を知るキャサリン王妃(改)

「大変なことになりました」


叫び声をあげたソアラが再びキャサリン達の部屋に入って来る


先程フェアルー冒険者ギルドから緊急用の通信が王都ギルドに届き連絡してくれたのです


「何があったの?」


「ユラ様が公爵家からいなくなりました」


「え?どういう事?」


キャサリンが驚き迫ってくる


「ちょっと待ってください!通信魔道具は、会話ができませんあくまで短文信号なのです。

それに連続での使用はできません。今わかってるのは第二報で、もうすぐ第三報が届くと思います。

そもそも王都とフェアルーは600km以上離れてるので、発信する魔道具にかなりの魔力が必要になります」


「わかったわ、それで次が入ったらここに来て頂戴、私は陛下の所に行って来るから」



「わかりました、では後程」


バタン


「エレン、グレープそしてニース、ターニャあなた達も後でここに来なさい大切な話があります」


4人とも今までと雰囲気が変わった私を見て何か感じたのか、おしゃべりも止まり静かに頷く


「「はい!」」

「「わかりました」」


「じゃ行って来るわ」


ガチャ

バタン


さて今日私にとって、運命が決まると言っていいくらい大切な日…

フェアルーからソアラが持ち帰った野菜の話で楽しくお茶会をして終わるはずだったのに、まさかユラちゃんがいなくなるなんてね運命のいたずらかしら・・・ 


部屋でゆっくり報告が来るまで待ってられないのよね。

約束の5年、その結果が報告され協議決定される。

少し早いけどゆっくり会議室に向かいましょう。

協議のきっかけになった私にとって忘れることのできない思い出・・・  


確かあれは7年前の弥生私がグレープの出産で実家に帰り、無事出産その後の体調もよくなり、王都へ戻る途中の村での光景を見た時のショックは、今も忘れられない。


幼い子供がやせ細り、うつろな目をし雑草らしきものを握ってる姿…

ある子どもはやせ細った身体で、生まれて数日くらいの赤ん坊を、抱えたままうずくまるように動かない姿…

他にも同じ光景を目にし、飢えで死にゆく姿は、子供を産んだ私にとって耐えられない者だった。


後で同行してた者に聞いたら1年前はここまでひどくなかったと、この年に起こった干ばつの影響で、王都優先に食糧が供給され地方は後回しにされたから、こうなったのではと説明を受けた。


王都で暮らしてた私には、地方で食糧が不足してるなんて知る由もなく、この時初めて辺境の村の状況を知った。


その帰り王都にほど遠い場所で、戦闘訓練が行われ、攻撃魔法を多発させ付近の土地は荒れ、その範囲はその町の農地も含まれていた。

私はそれを見て怒り、王都に戻り陛下に問いただした。


帰って来た答えは訓練は必要だ!農地はまた別の場所を開拓すればいい土地はあるのだからと…

私はその話を聞き、夫である陛下に厳しく問いただした。


この事がきっかけで、私は見て来た事を私に心を許す者達に話した。

それからは地方の情勢を調べるために、姫百合部隊が生まれ、諜報活動、地方の治安維持と、活動を広げ、その情報をもとに、私も国策に口を出すようにしたが、全く改善されなかった。



私は執務を終えて部屋にいるときも陛下に怒りを向けて問いただした。

その後国策の会議にも立ち会い、軍事の事を激しく非難し、もっと国内の情勢に目を向け改革をしないと、国の経済は立ち行かなくなると意見を述べた。


陛下や宰相達には、軍事より経済、食糧問題などを対策を話し合うべきだと会議のたびに発言をし続けた。


あまりにも私がうるさく口を出すから、陛下は5年の約束を突き付けて来た。

それが4項目の内容だ、その代わり私には国策に口を出さない約束をさせられた。


その代わりに私も要求した。

国内に統治領の要求、つまり夫婦別々に領土を分け運営する案だった。


あれから5年今日が、その協議の結果を報告される日、さあ能筋二人とお金大好き財政担当菅ゴルトンは、ちゃんと認めるかしら


【5年前彼らと私で協議した内容

①物価問題…増税禁止・物流の安定・商品の安定供給

②疫病対策…疫病の減少・ポーション作成者の増加・ポーションの安定供給

③食糧問題…生産量の増加・

④人口増加…②に重なる対策もあるが、国内情勢の安定


キャサリンは国策に口を出さない


私は会議室に入るとバッカスとゴルトンが前置きの長い挨拶をしようとしてきたので途中で遮った。


二人とも怪訝表情で睨んできたが無視をし着席をし会議を始めてもらった。

モルトン陛下とバッカス宰相と財務大臣のゴルトンは、まだ資料を見て話し合っていたようだ。

恐らく報告内容を始めてみたようにブツブツ何やら言っている。

人任せにするからこうなるのよ馬鹿なのかしら、ほんとにこの男どもは


「では始さっさと始めましょうか、陛下前置きはいらないから結果だけ知りたいわ。

もちろん私の方でも調べてますから、一致するはずですよね陛下」


陛下は報告書を握り唸っている


「ぐぬぬぬ・・」



ふん!


陛下から報告された結果は以下の通り私の内容と一致予定通りの結果だった。


①物価は年々上昇

②ポーションは病気対策どころか薬草品質低下により通常ポーションも減少

③必要のない戦闘訓練で魔法の多発により農作地の被害により農作物の減少、収穫量減少

④病気の増加、食糧不足により人口減少

これら以外も

地方村落は崩壊寸前、干ばつによる耕作面積減少とひどい現状だった】





「陛下この結果内容まだ私の方で追加報告ありますがしますか?」


「いらぬ!」


キャサリンは、集まった者達を見渡し話し始める。


「では、約束通り領土を分けて二人で別々に統治する。

何かあれば協力する。これでよろしいですね」


モルトンは、頷く


「ああ、それで構わない」


モルトンも宰相も協議で決めて出た結果に反論できず、国内における私の統治が認められることになり、3年以内に統治領域を決めることが決まった。


キャサリンは、モルトンとバッカスに詳細を後日協議する事を告げる


「では、陛下、バッカス宰相詳しい取り決めについては、また後日協議しましょう」


「ああ、夫婦で国内の領土を分け、別々にそれぞれ統治する。

この方が儂も、妃に口うるさく言われることもないから、これでいいだろ。

どうだ、もう少し協議してもいいぞ」


キャサリンは、モルトンからの申し出を断る


「言え!今日は少し訪問する場所があるので、申し訳ありませんが、これで失礼します」


バタン


キャサリンを素直に帰らせた事に驚くバッカス


「兄上よろしかったのですか?」


モルトンは、頷く


「ああ、かまわん!」


「キャサリンは、頭がキレすぎる毎日毎日うるさくてかなわん!

お前にわしのこの気持ちがわかるか!

毎日だぞ!気が滅入るわ!

領土分割も、海に面した領地と広大な農地の領地収穫量の多い領地を、儂が選択領地とする。

キャサリンは山岳が多い領地、収穫の少ない領地、森の多い領地を与える」


バッカスはモルトンの考えを聞き納得する。


「なるほど、足を引っ張る領地を与えて、実いりの多い領地をこちらにですね。

さすが兄上納得です」


モルトンが選択した領地と、自分の考えを述べる


「キャサリンに渡す領地は、金のかかる領地ばかりを選択した。

もし泣きついて来たら、それなりの扱いをして調教してやる!

今度は儂に従順になるようになフフフ」


「なるほど、そう言う事ですか」


「儂を散々バカにしたからちと懲らしめてやらんとな」


バッカスは、影を動かす事を伝える


「では私は、領土分割決まるまでに強く出れないように、少し脅しておきましょうか?」


モルトンは、バッカスが影で動く事に喜ぶ


「おお!それはいい、時期は儂が指示する!」


「わかりました」


☆・☆・☆

キャサリンは部屋に戻り、今後の事を考えながらソアラを待った。


どうせあの二人の事だから、自分達が統治に楽なところばかり選ぶでしょうね。

私は今上手くいっている領地は必要ないのよね。


このタイミングで、私はユラちゃんの事を知るなんて、運命を感じるわね。

しかもこの食糧が不足し、多くの病気が蔓延してるこの国を唯一救える子、今の私にとってほんと運命の人ね。


親がいないのなら、私が親代わりになって母親の愛情を注いであげたい…

だから絶対保護したいわ、ユラちゃんと一緒に貧困や飢え、病気で苦しむ人々を救い私の統治する国を笑い溢れる国にしたいわ


私が今後のことをいろいろと考えていると、席を外していた娘たちと護衛達が戻って来る


コンコン


お母様エレンです。グレープと護衛二人も一緒です。


「入って!」


ガチャ


「お母様お話はどうだったのですか?」


「その話はソアラが戻ってからにしましょう」


「わかりました」


暫く普通に談笑しているとソアラが戻って来た


コンコン

「ソアラですただいま戻りました」


「入って」


ガチャ

バタン


キャサリンは、気になってるユラの事を尋ねる


「ご苦労さま、それで続きはどうだったの?」


ソアラは、ユラについて入って来た情報を伝える


「はい!ユラ様が公爵家を出て行かれ誰も行き先がわからず、現在行方不明とのことです。」


ユラが公爵家を出て行方不明と知り、キャサリンはショックを受ける


「ユラちゃんが行方不明…嘘でしょ」


ガクッ


王女二人もショックを受けている


ソアラは、ショックを受けてるキャサリン達に自分の感想を伝えるユラが公爵家を出た理由を話す。


「キャサリン様、エレン様、グレープ様、私は、むしろユラ様が公爵家を出てよかったと思ってます。」


キャサリンは、ソアラの発言に戸惑いを感じる


「ソアラそれはどう言う事?ユラちゃんは公爵家で、いじめられてただけではないの?」


ソアラは頷きユラの公爵家でどのように扱われてたのかを話す。


「キャサリン様、今からお話しする内容を聞けば私が言った事が、ご理解頂けると思います。

ユラ様が公爵家でどのように扱われてたのか…」


キャサリン達は頷きソアラの話に耳を傾ける


「ユラ様は、神託で農業系のユニークスキルが現れ公爵家に不要と判断され廃嫡が言い渡されます。

それ以降扱いががらりと変わり、ユラ様は公爵家の敷地内にあるぼろぼろの納屋に移るように言われます。

その原因となったのが第二婦人のサマンサです。」


キャサリンは、サマンサと聞いてパーティーでも揉め事を思い出す


『そう言えば呼んでもいないのに強引に参加しょうとして周りを困らせてたあの女ね。』


ソアラが考える仕草のキャサリンを見る


「そのサマンサが王都で強引にパーティーに参加しょうとして断られ、ユラ様が原因だと怒ります。」


キャサリンがパーティーと聞いて納得する


「あの時確か私が対応したわね。ずいぶん強引で無礼な態度だったけど…なるほどね。私が怒らせたと…」


ソアラは、首を振り少し訂正をする


キャサリン様が原因ではありません。

サマンサは、ユラ様の事をそれ以前から衰弱させ遅行性の毒で殺そうとしてた見たいです。

与えられた食事は、硬い黒パンと薄いスープのみで、それが7日に一度とか早くて3日に一度だったそうです。」


キャサリンがたまらず話を遮る


「ちょっと待って!あの子そんな大変な目に合っていたの…最上位貴族の子供なのに…」


王女二人は泣きそうになり下を向いている


ソアラは、話を続ける


「サマンサは王都の件で怒り、今度は無理やり奴隷の逃亡防止用魔道具の足枷をつけたそうです。

しかもその魔道具壊れていて作動を続けユラ様の足に針が刺さったままで血が流れ続け危険な 状態だったようです。


数日後に魔道具はギルマスの解除道具で外され、その報告と小屋の野菜の納品のため担当メイドが、小屋を離れた時に出て行ったようです。

ユラ様の状態はギルマスのポーションによって一応回復はしたようです。

しかし、魔道具によって足のアキレス腱が損傷し満足に歩ける状態ではないそうです。

以後現在行方を捜索中とのことです。」


キャサリンが怒りの声をあげる


「奴隷用魔道具ですって!完全に虐待じゃない!ゆるされることじゃないわ!」


エレン達も怒り心頭だった


「なんなのそのサマンサって!可愛いユラちゃんを虐待しかも奴隷魔道具使うなんて酷すぎるわ!」


グレープは、涙をためてユラの事を思う


「ユラちゃん酷い事されて可哀そう…すぐに行って治療してあげたい…」


キャサリンがエレン達を見つめた後立ち上がり話を始める。


「ユラちゃんの事も気になるでしょうが、今から重要な話をします、あなた達にとってそしてこの国にとって重要なお話です」


メイド達が出て行こうとすると


「あなた達も聞きなさい!」


「今のユラちゃんの話を聞いて!ほんとに女神様の怒りではないかと思いました。

今から話す事は非常に重要な事です。

ユラちゃんが絶対必要だと言う事がわかるわ…」



キャサリンは、7年前に自分が見たこと、そして今までのこの国の現状、それについて5年前にある協議をし取り決めた事、それが今日決定したことを説明した。


「結果は3年以内に領土を分割し、陛下が治める国と私が治める国に分かれ、このブリンカー国は、ブリンカー連邦国に変わります。

私の治める領土はだいたい想像がつきます。

私は以前より言ってたように、この国を豊かに皆が楽しく暮らせる国にしたいの。

そのためにあなた達の力を貸して頂戴!皆で私たちが求める国を造りましょう」


エレン達はキャサリンを見つめ決意を抱き返事をする


「「「はい!」」」


キャサリンは全員を見てお願いをする


「皆聞いた通り私が自治する国に、絶対必要な可愛い妖精さんを、皆で捜して連れて来てくれるかしら」


エレン達はお互いを見つめ嬉しそうに返事をする


「「はい!捜して来てもらうようにお願いします!」」


「「はい!説得して必ず来てもらいます」」


キャサリンは、ユラの事を思いながら呟く


『ユラちゃん私があなたに二度と辛い思いなんてさせないから、あなたのお母さんの代わりに私が愛いしてあげますからね。』







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る