ユラの薬草と女神の怒り(改)
キャサリンは出て行ったメイドを見て娘達に話す。
「まだ野菜はあるころ、明日調理してもらいましょう。
これであの子が、この国にとってどういう存在なのか十分わかったし、これからあの子をどうやって保護するかね」
ソアラは、頷きギルドでの事を伝える
「キャサリン様、私も重要とは思ってなかったのですが、パーラと言うギルドの素材解体や鑑定する者が言ってた重要な事をお伝えします。
ユラ様の一番凄いのは、野菜ではないと…
いえ正確には、野菜も凄いが私にはこっちの方がとんでもないと、おっしゃってました」
ソアラの発言にキャサリンが驚く
「え?あの子まだ何かしてるの?」
「はい!」
キャサリンが珍しくソアラに説明を急がせる
「いったい何!焦らさないで教えなさい!」
ソアラも微笑みながらこたえる
「わかりました。ユラ様は薬草を栽培されギルドに持ち込まれました。」
キャサリンは念のために思ってることを聞く
「森から採取した物を株分けでもしたのかしら?」
ソアラはギルドで聞いた事を伝える
「保管してた種からです。ヒルシル草の栽培に成功したそうです。」
キャサリンの驚きは凄くソアラに捲し立てるように詰め寄る
「なんですって!ヒルシル草を種から栽培したですってー!
嘘でしょ?あの子まだ5、6歳でしよ?
あり得ないわよ!えーーーー!」
普段あまり見ることのない母の驚きぶりにエレン達も慌て、説明を求める
「お母様!落ちついてください!」
「お母様薬草の栽培ってそんなにすごいことなのですか?グレープにもわかるように説明してください!」
ソアラは、薬草の事を理解していたキャサリンを見て納得して話す。
「やはりキャサリン様は、わかってたのですね。ギルドのパーラも同じ反応でした。」
キャサリンも当然のように薬草の方が凄いと答える
「確かに野菜より、こっちの方がとんでもないことね。ほんとにとんでもない子が現れたわね。」
エレン達は、意味がわからず尋ねる
「お母様そんなに凄いことなんですか?」
「そうです。ただの薬草ですよね?」
キャサリンは、娘達に教えるように答える
「種からの薬草を栽培する事は、私達王国全体の夢だったのよ!
数十年も前から、多くの薬師や作農師が試み失敗を繰り返し、まだ誰も成功してないのよ…
それが小さな子供が成功させた。」
エレン達は、そんなに凄い事だとは、全く知らず、ユラの凄さに驚く
「えー!そんなに大変な事なのですか?」
「知らなかった… それをあの子が成功させたと?」
キャサリンは薬草について説明する
「薬草類の植物は、非常に繊細でちょっとした土壌の違いや環境ですぐ枯れたりします。
それに芽が出ても成長せず枯れたりして非常に難しいらしいのよ」
エレンは、単純に答える
「お母様薬草は、森に行けば採取できますが」
キャサリンは、今の薬草事情を説明する
「ポーション作りは成功率がかなり低く、町から近い森では、薬草を採取しすぎて今ではほとんど採取できないのよ。」
エレンは、納得したように答えるも疑問も感じる。
「それで栽培できないか多くの方が試みたと…でもそれってポーション職人が少ないからでは…」
「確かに職人が少ないのもあるかもだけど、それには根本的な問題があるのよ。
もし薬草が栽培できれば、問題も解決して、職人が増え、ポーション作成の成功率が上がる。
そうなればどうなるかしら」
エレンが答える
「はい!ポーションが大量にできれば値段も下がり多くの町や村にもポーションが行き届くようになります」
グレープも答える
「そうなると死亡率が減り人口が増えます。」
キャサリンが頷く
「正解よ!現状の我が国は死亡率が上がり人族の平均寿命は40年子供に至っては、生まれた子供の50%は8歳までに死んでしまうのよ」
ソアラも考えを述べる
「そうなれば人口も減少するし、若い人間も減るつまり人口の減少、働き手の減少で税収の減少国力の低下します。
するとそれを防ぐために増税…
それは国民に肉体的精神的負担の増加を与え、寿命の低下労働力の低下とまさに悪循環と言う事ですね。キャサリン様」
キャサリンは頷き感心したようにソアラを見る
「さすがね。よく学んでるわね。国の軍事馬鹿どもに聞かせてやりたいわ!」
エレンは、二人の説明に驚き尋ねる
「え?お父様は、ほんとうに対策とられてるのですか?」
キャサリンは残念そうに答える
「してたら、こんな事にはなってないわよ!ほんとに国の上層部は、馬鹿ばかり…
はぁ…」
ソアラも頷き残念そうに答える
「陛下は、軍に力をいれられてますから…」
キャサリンが呆れるように答える
「全くあの軍オタ達は!だいたい広大な大陸の8割を占める大国にどこの国が戦争を仕掛けるのよ!
このまま行くとブリンカー国は衰退し崩壊するわ」
ニースも軍の遠征で行った先の事を王女達に話す
「遠征先の町では、多くの子供達が痩せこけていました。
食べ物が十分に行き渡ってないと思います。しかし私達遠征の軍には、十分な量の食事が与えられました。
中には食事を残す者もいます。
当然残された物は廃棄されます。その後は…子供達がそれを漁ります。」
エレン達は、それを聞いてショックなのか暫く黙り込む
「………な」
「………かった」
そんな二人を見てキャサリンが話しかける
「エレンもグレープもわかったかしら、これが我が国における現状です。
多くの町で食糧不足が起き、お金のない者や子供がその犠牲になっています。」
エレン達は、よほどショックなのか下を向いて呟やいている。
そんな二人を見つめキャサリンは、話を続ける。
「それに最近では、いろいろな病気が各地で蔓延し働く者が減少しています。
この問題は早急に何とかしないと行けません。」
二人の王女は、何かを決意したかのようにキャサリンを見つめ頷く
あら二人共いいわねフフフ
「その事については、食糧問題と一緒に陛下にも宰相にも何度も報告して早急に対処をと言ってるのですよ…
それがまるで取り合わずこの状態です。」
キャサリンは、二人を見つめ問いかける
「二人共わかりましたか?」
二人は、頷きハッキリと答える
「はい!私エレンもこれからもっと勉強して私にできる事をしていきます。」
「はい!私も一人でも多くの国民を助けたいです。」
ソアラも護衛騎士のニース、ターニヤが立ち上がり二人の王女に話しかける
「エレン様、グレープ様!私達多くの姫騎士が、キャサリン様の声を聞き賛同し動いています。
彼女達に調べてもらった結果、ほとんどの地域の国民がひどい状態にあるとわかりました。
だからあの方の野菜や薬草は、これから王国を救う事になると思います。」
キャサリンも補足する
「あの子の薬草があれば、ポーション職人が作るポーションの成功率が上がるかも知れませんね。
そうなれば救える命が増え状況が少し改善するかもしれないわね。」
王女達二人は頷く
ソアラが王女が少し落ち着いたのを見て、ユラの薬草について話をする。
鑑定されたユラの薬草の評価を話す
「キャサリン様は薬草の事はご存知ですか?」
キャサリンは、頷き問題ないと答える
「問題ないわ、私も情報を得るために教えてもらったから」
ソアラは二人の王女に聞いて欲しい旨を告げ話し出す。
「なら問題ないですね。王女様お二人も貴重な話なので是非耳を傾けて下さい。」
王女二人は頷く
「まず皆さんポーション職人ができない理由ご存知ですか?」
全員首を振る
「ではお話しさせて頂きます。
私も知らなかったのですが、フェアールのギルドマスターがエルフだったので、教えて頂きました。
私はその話を聞いて、ポーション職人が増えず、向上しない理由がわかった気がします。
その前にポーション職人ができない理由を知る方がいいですね」
キャサリンが尋ねる
「理由ってそれは作る過程が難しいからでしょ?」
ソアラは頷くも理由を説明する
「キャサリン様の思ってるように作る工程が難しい…
確かにそうですが、もっと根本的理由、薬草が原因なんです。」
皆以外な答えに驚く
キャサリンも説明を求める
「え?薬草… どういう事なのかしら?」
ソアラは、頷き説明を始める
「現在薬草は採取できる場所がありますが、かなり辺境の山間部の森や、大森林と呼ばれている奥地で、現在採取されています。
ちなみに皆さん薬草採取して日数が経過するとどうなるかご存知ですか?」
エレンもグレープもがばかにするなって目で見てくる
「干からびて枯れるわ」
「しおれます」
ソアラは頷く
「そうです。薬草は採取したとたん魔力が抜けていきます。日数が経過すればするほど成分も抜けていくらしいです」
キャサリンも王女も今いちわかっていないような仕草をする。
ソアラは、キャサリン様や王女様達に重要性が伝わるように説明を始めた。
「皆様今から話すことは凄く重要な事なのでよく聞いてください」
皆が頷く
「ポーション作りで一番重要なのは、薬草に含まれる成分をいかに抽出するからしいです。
薬草は採取する前は、微量ですが魔力が含まれてます。
魔力が含まれている事で、成分を維持し増えるらしいです。
そして薬草は採取した瞬間魔力が抜けはじめます。
後は日数が立てば、成分もどんどんなくなって行くみたいです。」
皆頷く
エレンが質問する
「という事は、日数が経過した薬草は成分がほとんどないんですか?」
ソアラは頷く
「その通りです!だから薬草の成分がほとんど抜けてる状態で作るから、ポーション作成が成功しにくく、できても品質も低いのです。」
エレンもグレープも納得する。
「なるほど、よくわかったわ」
「皆さんこれを見てください」
私はギルドでの薬草の鑑定結果を書いた紙を見せる
【ギルド経由ヒルシル草… 成分含有量中 魔力含有なし 品質低 総合評価数値 1】
【ユラ栽培ヒルシル草… 成分含有量小 魔力含有あり 品質低 総合評価数値 3】
「皆様これは、ほぼ同じ日数が経過したふたつの薬草の鑑定結果です」
キャサリンはユラ栽培薬草の鑑定結果に驚いていた
「ユラ栽培薬草凄いわね!ほんとうに驚かせるわねユラちゃんには」
「お母様先程のお話だと、ユラ栽培の薬草なら成功するポーションも増えるのではないですか?」
キャサリンは、頷く
「間違いなく増えるでしょうね」
「お母様ユラちゃんが男の子ならよかったのに、そしたら私と結… 」
「グレープ何を言ってるの?あなたは私より年下何だから私が先よ!でも女の子じゃ… 」
キャサリンは、笑いながら二人のやり取りを見ている
「でもほんとうにユラちゃん一人で食糧問題、ポーション不足による病気の蔓延全て解決するわね、絶対死なせてはならない最重要保護対象者ね」
ソアラは皆を見て話し始める
「皆さん今起きてる食糧問題、病気の蔓延による人口の減少は全てたまたまだと思ってますか?」
キャサリンは納得したように話す
「なるほどこれらの問題には原因があるという事ね、ポーション職人が増えないのもその一つだと」
「さすがキャサリン様、私もギルドでの話し合いで気づかされた事なのですが、今から話すことはエルフのユリスリーデ様から聞いた事です、ユリスリーデ様が言うには
【今から200年くらい前に聖女様と呼ばれる方がいて、身体の治癒のヒールから全ての状態異常を治すリカバリーまで使える方だったそうです。
でもある国王が利益のため聖女様を独占しようと監禁し、自分の利益のために聖女様にひどい扱いを続け、それに聖女様は耐えれなくなり自ら命を絶った。
それ以来、女神様の怒りで聖属性を使える者を、この世界から封印してると言う噂が広まった。
魔法書に聖魔法の文献があった為、実際にあらゆる魔法が使える高名な魔導師が、何人も文献通りにやったが全く発動しなかった。】
との事です、それを聞いた別の者が、今問題が起こってる食糧問題、病気、ポーション職人が増えないのは、全て女神様の怒りのせいではとおっしゃってました」
皆が話を聞き考えている
「皆さんよく考えてください、ギルドでも言われました。
今抱えてる全ての問題を解決できるかもしれないユラちゃんは、ほんとうにたまたま現れたのでしょうか?
私は考えました。
もしかしたら別の女神様がユラちゃんを使わされたのではないかと…
それでもしこの世界の人々を減らそうとしてる女神様が、ユラちゃんの事を知ればどうされるのでしょうかと… 」
キャサリンが納得し話しだす
「なるほどそう考えれば全て納得できるわね!
偶然かも知れないけど、私はユラちゃんを全力で保護したい!
でないとほんとうにこの世界の女神様が、人々を減らそうとしてたら、ユラちゃんの事知れば、怒り何をしてくれるかわからないわね」
コンコン
「諜報部ライザです!至急ソアラ様にお伝えしたいことがあります」
「わかったそこで待て!キャサリン様失礼します」
ガチャ
バタン
「何だとぉーーーー!」
キャサリン達はソアラの叫ぶ声に驚く
何があったのソアラ
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