最終章 お疲れ会

 青い空。

 白い雲。

 青い海。

 白い砂浜。

「あー……」

 色々と思い返して、ぐったりとする。

 隣には、少しだけ表情の動く悠里がいた。

「どうしました?」

「いや、俺達頑張ったよなーって」

「ですねー。いや、ほとんど黎明が頑張ったおかげですよ」

「そうだぞ」

 バーベキューコンロで野菜と肉を串に刺している怜治先輩もうなずく。

「お前がいなければ、確実に負けていた。胸を張れ。今日は、お前を労う会だからな」

「そ、そうなんですか」

「ああ。労われろ」

 俺をできそこないという人間は、もういない。

「はい、黎明。あーん」

「結先輩、ありがとうございます。……ん、美味しいです」

「こちらのレモンスカッシュはどうですか?」

「あ、ありがとう、瑠璃」

 差し出される食べ物と飲み物に戸惑いつつも、口をつける。

「ご主人様ー! 一緒に遊びましょー!」

「え、イオ泳げるの?」

「海を走るくらいならできまーす! およげませーん!」

「いや、海の上を走る方が凄くない!?」

「そ・れ・よ・り・も……あっしといいことしましょうよ」

「いや、風子さん。密着したら……いででで!?」

 足を踏みつけられ、右耳と左頬を引っ張られた。悠里と結先輩と瑠璃だ。

「デレデレしないの!」

「そ、そろそろ抱いてくれてもいいころだと思います!」

「同じく、待ってますよ?」

「あ、はい……」

 全員からプレッシャーを感じる。

「おー、怖いっすねぇ」

「風子さん、楽しんでるでしょ」

「あ、わかっちゃうっすか?」

「ん……?」

 遠くから誰かが泳いでくる。

「お姉ちゃん登場! 離縁してきたよ! れいちゃん!」

「いや姉さんさらっと何してるの!? 烏丸の家は!?」

「知らない。興味ない。目覚めたの、それより! 真実の愛に! やっぱり甘やかすことだなーって!」

「真実の愛の割には、前とやってることが全然違わないんだね……」

「ま、モテるヤツの定めだね」

「仙一郎、助けてくれよー……」

「嫌だよ。行こうか、怜治。ここじゃ邪魔になりそうだ」

「む、そうだな」

「いや、そうだなじゃないでしょ怜治先輩! ああ、見捨てないでぇ!?」

 先輩二人が去り、残されたのは肉食系。

「……邪魔者がいないプライベートビーチですし。思う存分、イチャイチャしましょうね?」

「「「「異議なし(っす)」」」」

「……お手柔らかに」

 とは、行きそうにないけど。

 普通の暮らし、とはいかない。いや、常識外と呼ぶべきなんだろうけど。

 でも、そんな暮らしが今……幸せに思えてくる。

 この風景を、この関係を……この幸せを、ずっと守っていきたい。

 そう、心の中で誓うのだった。

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Ready? Lady! 鼈甲飴雨 @Bekkou

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