第23話 逆十字の騎士団編 旋風のベアトリスク
ローマ公国でのツアーライブ直前。
公孝は堂々と、ローマ公国フェイゲンバウム教の総本山、バチカン教公の住まうバチカン大聖堂に堂々と観光客として闖入し、そこを任されていた枢機卿でもあるミヒャエル・ベリンガーの開くミサに出た。
ベリンガーは一目でルシファー・ダインの侵入に気が付いたが、フェイゲンバウムの総本山であるここを公孝の魔力で汚染されてはたまらずと、平然と彼に対してもミサを執り行った。
「堂々と乗り込んでくるとはな。気に入ったよ、キミタカ・カムイ。わたしがミヒャエル・ベリンガーだ」
堂々とそう名乗り、あまつさえ握手をベリンガーは公孝に求めた。
公孝も受けて立つ。
「神衣公孝だ。さて、堂々とミサに来たのには二つの理由がある」
「伺おうか。一つ目は?」
「ライブまで休戦協定だ。お前たちとしても、民間人の流血は見たくあるまい」
「それもそうだ。ではライブ終了一時間後に、ローマコンサートホールにベアトリクスを派兵する。二つ目は?」
「討伐命令の経緯がしりたい。それはどこからでた?」
「ローマ教公、ヨハネからだ。ということは、その上であるやんごとなきお方からの勅命だ」
「ペテロ・フェイゲンバウム・ハハルビコフか?」
「そのような質問に答えることはできん。これが回答だ」
「ミヒャエル・ベリンガー、キリスト教に興味は?」
「ないな。そもそもわれわれ魔導士は、悪魔は信じても神など信じぬ。愚問だな」
「それもそうか。邪魔をしたな」
去り際の公孝をベリンガーは質問で制する。
「待て、フェイゲンバウムに忠誠を誓うことは? それで討伐例も回避できる」
「偽りの平和など、真実の戦争に勝るところはなにもない」
「ますます気に入ったよ。キミタカ。いつかワインを片手に飲みたいものだ」
「神と悪魔がそれを赦せば、な。だがまた来る」
「枢機卿の席を一つ開けておこう」
それだけのやりとりを交わすと、両名は別れた。
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