第17話 ルシファーの帰還
公孝の混乱状態は十数分で収まった。
今の彼は、神衣公孝であると同時にルシファー・ダインでもあった。
「七属性検査の必要はないぞ? シスター。 前世の記憶が蘇っているはずだ。そうだろう? ルシファー」
「ああ。得意系統魔術は水系、虚無系。それと風系。神羅舞心流は今のなまりきった肉体と霊では扱いきれまい。ファラグリフォンを呼んでくれ、シスター。状況を彼にも知らせておく。現地の協力者が必要だ。リュミエールは俺を恨んでいるらしいが、原因は、伊達成美関連なのだろうな。ラファエル」
「今の段階では伊達成美出生の可能性が固定されていない。が、未来においては伊達成美とリュミエールは既知の間柄であり、今回の『愛の天意宝冠』保護、ではなく、憎悪の原罪宝冠に転化しているだろう成美の宝輪を、奪取したほうが早い」
「天の最終騎士、真実の言葉、最も忠実なるもの、クラウディア・クリスティナ内神王の助力を頼みたい。彼女くらいにしか、憎悪の原罪宝冠に太刀打ちできるものはいないだろう。それと、フェイトも呼んでおいてくれ。俺はロシアを使う」
「その肉体の父であるスウェーデン王国も役には立つだろう」
「リュミエールの時間遡航にはなんらかの制約があるようだ。だからこそ万願印を使って行ったが、失敗した。俺を殺すより母親を俺を受胎するまえに始末したほうが確実だが、それをしなかった。万願印でもできなかったんだろう。それから推察するに、トラウマ障壁がリュミエールの過去にはある。ルシェールは来てるのか?」
「ルシェールは今から約2000年前に、イエス・キリスト暗殺作戦にペテロ・フェイゲンバウムに帯同して以降、消息不明だ。おそらくコキュートスまで落ちたと推測される」
「神殺しの罪ではな」
「オルゴン計測をやっておこう。魔力を集中させてくれ。使う魔導書はここの聖書でよいだろう」
そう言ってラファエルは手元にあったキリスト教の聖書と杖を渡す。
それを受け取ったルシファーは、魔力を右手に持った聖書から、左手の杖に循環させるイメージで、ホーリーライトを杖の上に照らした。
ラファエルは手元の腕時計に似た器具をはめた左腕を公孝に向け、彼の魔力数を計る。
「大体、一億三千万オルゴンだ」
「リュミエールの推定魔力は?」
「こちらで確認しているのはバビロンの戦いでの一億八千万オルゴンが最大だ」
「バッファを取って二億四千万は欲しいな」
「そうだな。シスター、ここの教会を通してロシア純福音教会総主教に、魔王ルシファー・ダインが信仰的亡命を申し出たと伝えてくれ」
「わかりました。ファラグリフォンと話は?」
「無論話は通す。ラファエル、フェイゲンバウムのここの抑えは?」
「ベルゼブブ軍参謀総長ロバート・ハルフォード、イヴァン・ヴォルコフことカイン、ローマ教皇、ルキフグス、つるぎのマクベル、ミヒャエル・ベリンガー」
「そうそうたる顔ぶれだな。ベルゼブブ派の重臣が投入されている」
「それはそうだろう。二つ目の愛の天意宝冠だ。これを奪取できれば、ベルゼブブの神性がヤハゥエ・ヤルダバオートに匹敵するものとなる」
「またサタンに借りを作ったな、俺は。サタネルは?」
「サタネルはルシフェルの第二皇子、ルシア暗殺に従事してる」
「そうか。敵は二段構えか」
「ほぼ総力戦だ。機禍学兵器まで開発させている。機装天使兵装も研究してるはずだ。メタトロンの亡命でこちらの技術が向こうに漏れた」
「わかった。イエスにロシアでの機禍学兵器開発の許可を取ってくれ。陣頭指揮は俺がやる」
「だからフェイトを? ドラゴンクラスの兵装を作るのか?」
「向こうがメタトロン級を投入するなら、並の幾禍学兵器じゃ太刀打ちできん」
そう言うと公孝は何もない所から火のついたタバコを出して吸い、紫煙を吐き出しながら対、米、伊作戦の戦略図を練り始めた。
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