第44話 フレンズ フォーエバー(繋げゆく想い)

 50歳台となった八神達が久しぶりの会合をしている。

しかしそこには井上とマリーの姿は無い。

「出会った頃は皆、10代から20代前半のように見えたが、この年になるとそれなりだな」

後藤が口を開く。

「いや、50代には見えんよ、皆」

八神の言葉に嬉しそうに微笑む女性陣。

「上か下かが問題だがな」

相変わらずの後藤だ。

政治の世界から身を引いた八神は、私財の殆どを使い礼子と共に財団を設立した。

世界は確かに良くはなった。

しかしいつの時代にも富める者とそうで無い者がいる事は否めない。

子供達が平等に教育を受けられるよう、補助をする事に最も重きを置いた。

それにより学費は殆どかからない。

他界した父、源の残した児童養護施設と、卒園者の後見人を引き継いだ安井の援助も財団がしている。

公益になると思われる起業をする者たちに、支援金を提供したりもしていた。

基本、返済は不要なのだが収入が得られるようになってから、財団に寄付をする者は少なくなかった。

「本題に入るぞ、財団の運営は順調だ。…連邦のトップにはならないのか?八神。俺たちは協力を惜しまないぞ」

海老名が言う。

「ああ、政治家としてやる事は終えたつもりだ。連邦が正しく機能していればそれでいい」

「そうで無い時は?」

後藤の問いに対し

「時代は新しいものになっている。そうなった時に正す新しい集団が育っているようだ。後は皆の子供達に任せるさ。今はそれよりもやらなくてはいけない事がある」

八神の目指す所は障害者に細胞再生技術とDNAの修正による特定能力の融合により、健常者と同等の生活を可能にする事だった。

それは能力者の存在が普通に受け入れられていてこそ可能だった。

能力者では無いものに能力を与える事に繋がるからだ。

今では抵抗なく、治療の手法として受け入れられるだろう。

一時的に能力者になる薬物を、一カ所に集めて消し去ったのは八神の計画だった。

薬の影響か、使う人間の心の問題か、依存性があった事は事実だ。

八神はそれを嫌ったのだろう。

構想実現の障害になると言う理由も当然あったが。

財団は殆どの能力者のDNAを保管していた。

共通の能力を持つ能力者のDNAを調べ、かなりの精度で解明、分類出来るようになった。

それを元に障害者に最適な能力を再生細胞融合技術を併用し、DNAレベルでの治療を実現させる為だ。

「財団は新しい医療研究施設の建設を計画している。その研究施設の所長は海老名にお願いしたい」

「医学はずいぶんと進化している。俺の古い知識が役立つかな」

「お前は政治能力も管理能力も高い。それに後継者も育っているじゃ無いか。運営を順調に運ぶため、信頼出来る人材が必要なのだ。清美さんにも手伝ってもらう」

「海老名夫婦なら適任だろう」

後藤が太鼓判を押す。

今でも災害等があると、医療現場を手伝う海老名だ。

海老名親子の能力、今では能力とは言わず”GIFT”と言われているがその一つ、”ストックルーム”は異次元かどこかは本人にも判らないが、ある場所に物資を大量に保管出来る。

必要な物を必要なだけ海老名の意志で出し入れ出来る。

多種、大量の医薬品や医療機器を運搬する事無く現場で用意出来る。

災害時に限らず医療現場での貢献度は高い。

そんな海老名だ、後藤の意見に異を唱える者はいないだろう。

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