第43話 ニューワールド (その2 変わりゆく未来)

 有事の可能性が低くなり軍はある種の能力者にとって、好条件の就職先となっていた。

軍の厳しい規律は更生施設の役割も果たす事となった。

今や国際的な組織となった特務警察特殊部隊と一般人類警察の活躍により、犯罪組織に取り込まれる能力者が激減した事も事実としてあった。

結果として犯罪組織は弱体化し、事実上国際警察の完全監視下に置かれた。

いずれ自然消滅して行くだろう。

どの国に於いても国家が平和になると教育に注力され研究者、技術者が台頭を示し始めた。

都市開発、エネルギー問題、新技術開発が盛んとなり、全世界で共有された。

特にエネルギー問題の改善は国境を意味の無いものへと導いた。

自然回帰エネルギーの生産効率向上、蓄電器等の性能向上は全世界のエネルギー事情を解決するまでとなり、海水の真水化も順調に進んだ。

大気から水を作る装置も効率が向上した。

能力者の存在は、土地開発にも貢献していた。

地球規模の緑化も進められた。

機器や貯水器など能力者が転送する事により砂漠や荒れ地の緑化がされ、農作物の生産量の増加、畜産業の生産量増加にも貢献。

同時に様々な生活製品も開発、製造が進んだ。

容器についてはこれまでの紙の原料に改良種の海藻を混ぜる事により、樹脂ボトル並みの強度を出す事に成功していた。

金属並みの強度を持つ、自然回帰材料も開発された。

化石燃料は完全に不要となった。

生物の保護も同時進行にて進められた。

原油生産国は砂漠や荒地の緑化により、農作物、畜産への移行と製造、開発拠点の建設が進み、原油の輸出時と比較し多少の利益減少は見られたが、概ねどの国も生産物の輸出入が増え、経済は安定していた。

利益を独占しようとする者は国際能力者連盟とフェア ステイトが抑え込んだ。

その国民に利益が分配されるよう、能力者が能力の”平和目的行使”をする事もあった。

結果どの国に於いても、働く場所の増加は国民全体が豊かになった。

種族独自の文化は尊重され、保証された。

敢えて昔からの生活を望む民衆、民族も複数あったが、教育と食料は充実していた。

人類の生活問題も解決されたのだ。

通信技術の向上も顕著で、たとえ地球の裏側との通信に於いても、タイムラグはほとんど無い。

地球上のどの場所に於いて、誰もが自由に情報を共有出来ることは世界規模の平和的で公平な統治を可能にした。

その結果、国境が意味を持たなくなったのだった。


 ”人類平等法”の確立から20年が経っていた。

その法律は事実上不要なものとなっていた。

今や一般人類、能力者の区別は無く、当たり前のように共存していた。

国家という概念は無くなり、地球は一つの連邦となっていた。

豊かさは人口増加に繋がった。

人類の技術はめざましく発展していた。

地球環境を守るため宇宙に自給自足可能なコロニーを設置し、移り住むようになっていた。

やはり能力者がそれを可能にしていた。

宇宙空間までコロニーを移動するのも能力者の働きが大きかった。

住民の移動はテレポーターが担っていた。

人類は新しい時代に足を踏み入れていた。

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